38 / 79
第3章
◇真夜中に、膝枕で-美姫Side-(3)
しおりを挟む
それからものの5秒もしないうちに、スースーと規則正しい広夢くんの寝息が聞こえてくる。
やっぱり相当疲れてたんだろうな。
睡眠時間3時間って……。
なかなかできることじゃないよね。
静寂な空間の中、何とも言えない緊張感に包まれる。
ちらりと横目で隣を見て、すぐに視線をそらすけれど。
いくら広夢くんとはいえ、それが寝ている姿だとしても何だか落ち着かない。
15分後にまた起こしに来ればいいよね?
それまでは自分の部屋にいようかな。
そう思ってソファーから立ち上がろうとしたときだった。
コテンと私の肩に何かが乗った。
思わずビクッとしてソファーの背に自分の背中を押し付けるようにして反応すると、その弾みで私の肩に乗ったものは、私の膝の上に滑り降りてくる。
「────っ!?」
一瞬、息の根が止まるかと思った。
だって、私の膝の上には男の人の……広夢くんの頭が乗っかっていたのだから。
な、何でこんなことになったの!?
何でも何も、座ったまま寝ていた広夢くんがバランスを崩して倒れてきた、と考えるのが妥当なんだろうけれど。
ど、どうしよう……。
広夢くんと触れる部分から一気に身体が熱くなって、心臓の鼓動が速まる。
こちらに倒れてきた衝撃で、一瞬広夢くんは顔をしかめたものの、再びすぐに気持ち良さそうな寝息を立て始める。
寝てる……。
どうしよう。広夢くん、かなり疲れてたみたいだし、下手に私が動くことで起こしちゃったらいけないよね……。
広夢くん。どんな夢を見てるんだろう?
視線を下に落とすと、目を伏せた広夢くんの顔が視界に飛び込む。
今までこんなにまじまじと広夢くんの顔を見ることなんてなかったけれど、広夢くんって綺麗な顔してるんだな……。
思わず無意識に広夢くんの髪に触れそうになっていた自分の手に気づいて、ハッと引っ込める。
わ、私ったら何やってるの。
今は、男性恐怖症を治す特訓中でもないのに、自分から男の人に触れようとするなんて……。
でもそこまで考えて、私はひとつの違和感に気づいた。
私、震えてない……。
さっき噴き出しそうになっていた冷や汗も、出ていないし……。
もしかして、相手が広夢くんだから……?
男性恐怖症自体はそう簡単に克服できるものでもなくて、実際に少しくらいなら耐性はついた気はするけど、今でも許容範囲を超えて近づかれると震えてしまうし、怖いと感じてしまう。
だけど、広夢くんは……?
広夢くんがこっちに倒れてきた瞬間驚きはしたものの、以前のように怖くてたまらない、というほどではなかった。
まぁ、広夢くんが寝てるっていうのもあるのかも知れないけれど……。
でも、怖いっていう感情は今の私にはほとんどないのに、怖いと感じたとき以上に胸がドキドキして苦しいのはなんでだろう?
それでいて、その感覚が心地いい、だなんて。
とりあえず、私は広夢くんを起こす15 分後までそうしていることにした。
だけど、ちょうど広夢くんが寝てから10分くらい経ったときだった。
私の膝に頭を乗せて寝ていた広夢くんが寝返りでも打とうとしたのか、私の膝から転げ落ちそうになった。
「……あっ」
思わずガシッと広夢くんの身体を支えるように両腕を回すけれど、
「ん、」
広夢くんの身体を落ちないように引っ張った瞬間、そう小さく反応する広夢くんに、思わずビクッとしてしまった。
その反動が広夢くんにも伝わったようで、広夢くんの顔は少ししかめられる。
やっぱり相当疲れてたんだろうな。
睡眠時間3時間って……。
なかなかできることじゃないよね。
静寂な空間の中、何とも言えない緊張感に包まれる。
ちらりと横目で隣を見て、すぐに視線をそらすけれど。
いくら広夢くんとはいえ、それが寝ている姿だとしても何だか落ち着かない。
15分後にまた起こしに来ればいいよね?
それまでは自分の部屋にいようかな。
そう思ってソファーから立ち上がろうとしたときだった。
コテンと私の肩に何かが乗った。
思わずビクッとしてソファーの背に自分の背中を押し付けるようにして反応すると、その弾みで私の肩に乗ったものは、私の膝の上に滑り降りてくる。
「────っ!?」
一瞬、息の根が止まるかと思った。
だって、私の膝の上には男の人の……広夢くんの頭が乗っかっていたのだから。
な、何でこんなことになったの!?
何でも何も、座ったまま寝ていた広夢くんがバランスを崩して倒れてきた、と考えるのが妥当なんだろうけれど。
ど、どうしよう……。
広夢くんと触れる部分から一気に身体が熱くなって、心臓の鼓動が速まる。
こちらに倒れてきた衝撃で、一瞬広夢くんは顔をしかめたものの、再びすぐに気持ち良さそうな寝息を立て始める。
寝てる……。
どうしよう。広夢くん、かなり疲れてたみたいだし、下手に私が動くことで起こしちゃったらいけないよね……。
広夢くん。どんな夢を見てるんだろう?
視線を下に落とすと、目を伏せた広夢くんの顔が視界に飛び込む。
今までこんなにまじまじと広夢くんの顔を見ることなんてなかったけれど、広夢くんって綺麗な顔してるんだな……。
思わず無意識に広夢くんの髪に触れそうになっていた自分の手に気づいて、ハッと引っ込める。
わ、私ったら何やってるの。
今は、男性恐怖症を治す特訓中でもないのに、自分から男の人に触れようとするなんて……。
でもそこまで考えて、私はひとつの違和感に気づいた。
私、震えてない……。
さっき噴き出しそうになっていた冷や汗も、出ていないし……。
もしかして、相手が広夢くんだから……?
男性恐怖症自体はそう簡単に克服できるものでもなくて、実際に少しくらいなら耐性はついた気はするけど、今でも許容範囲を超えて近づかれると震えてしまうし、怖いと感じてしまう。
だけど、広夢くんは……?
広夢くんがこっちに倒れてきた瞬間驚きはしたものの、以前のように怖くてたまらない、というほどではなかった。
まぁ、広夢くんが寝てるっていうのもあるのかも知れないけれど……。
でも、怖いっていう感情は今の私にはほとんどないのに、怖いと感じたとき以上に胸がドキドキして苦しいのはなんでだろう?
それでいて、その感覚が心地いい、だなんて。
とりあえず、私は広夢くんを起こす15 分後までそうしていることにした。
だけど、ちょうど広夢くんが寝てから10分くらい経ったときだった。
私の膝に頭を乗せて寝ていた広夢くんが寝返りでも打とうとしたのか、私の膝から転げ落ちそうになった。
「……あっ」
思わずガシッと広夢くんの身体を支えるように両腕を回すけれど、
「ん、」
広夢くんの身体を落ちないように引っ張った瞬間、そう小さく反応する広夢くんに、思わずビクッとしてしまった。
その反動が広夢くんにも伝わったようで、広夢くんの顔は少ししかめられる。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説


家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【短編集2】恋のかけらたち
美和優希
恋愛
魔法のiらんどの企画で書いた恋愛小説の短編集です。
甘々から切ない恋まで
いろんなテーマで書いています。
【収録作品】
1.百年後の未来に、きみと(2020.04.24)
→誕生日に、彼女からどこにでも行ける魔法のチケットをもらって──!?
魔法のiらんど企画「#つながる魔法で続きをつくろう」 で書いたSSです。
2.優しい鈴の音と鼓動(2020.11.08)
→幼なじみの凪くんは最近機嫌が悪そうで意地悪で冷たい。嫌われてしまったのかと思っていたけれど──。
3.歌声の魔法(2020.11.15)
→地味で冴えない女子の静江は、いつも麗奈をはじめとしたクラスメイトにいいように使われていた。そんなある日、イケメンで不真面目な男子として知られる城野に静江の歌と麗奈への愚痴を聞かれてしまい、麗奈をギャフンと言わせる作戦に参加させられることになって──!?
4.もしも突然、地球最後の日が訪れたとしたら……。(2020.11.23)
→“もしも”なんて来てほしくないけれど、地球消滅の危機に直面した二人が最後に見せたものは──。
5.不器用なサプライズ(2021.01.08)
→今日は彼女と付き合い始めて一周年の記念日。それなのに肝心のサプライズの切り出し方に失敗してしまって……。
*()内は初回公開・完結日です。
*いずれも「魔法のiらんど」で公開していた作品になります。サービス終了に伴い、ページ分けは当時のままの状態で公開しています。
*現在は全てアルファポリスのみの公開です。
アルファポリスでの公開日*2025.02.11
表紙画像は、イラストAC(がらくった様)の画像に文字入れをして使わせていただいてます。


【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる