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第3章
◇真夜中に、膝枕で-美姫Side-(1)
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「ほら、いくよ」
「……うん」
ぎゅっと広夢くんに握られる私の両手の拳。
今までは、男の人の手でさえ恐怖の対象でしかなかった。
だけど、広夢くんの手に触れるようになって、その印象はかなり変わった。
「……怖くない?」
「う、うん。平気……」
女の人のそれと比べると、大きくてごつごつしている男の人の手。
それでいて、あったかくて、かつ優しく感じてしまうのは、広夢くんの手だからなのかな──?
最初は恐る恐る自分から触っていた広夢くんの手だったけど、6月も半ばになる頃には、広夢くんから触れられるのにも少し耐性がついたみたい。
「……じゃあ、もうちょっと近づいてみてもいい?」
「え、や、そ、それは……っ」
今日はこれで終わりだと思っていたのに、急にそんなことを言われて、胸がドギマギする。
いくら少し耐性がついた気がするとは言っても、やっぱり全く怖くないって言ったら嘘になる。
「ハハッ冗談だよ。今日もよく頑張ったね」
広夢くんは軽く笑いながら、パッと私の両手から手を離して離れていく。
「今日の後片付けは俺が全部やっとくから、美姫は先に風呂入って好きなことしてくれていいよ」
「え、そんな……っ! わ、私もやるよ……?」
「いいって! 俺、食器をしまう位置も覚えたし、大丈夫」
「でも……」
男性恐怖症を克服するという名の特訓は、いつも夜ご飯のあとに行われている。
最近では、自然の流れでこのあと一緒に食器を片付けることが増えた。
使用済みの食器を重ねてシンクへと持っていく広夢くんを、慌てて追いかけるも、
「あぅ……っ」
シンクに食器を置いてこちらに戻ろうとした広夢くんと、正面からぶつかってしまった。
「美姫から抱きついてくるなんて、大胆~! もしかして、男性恐怖症治った?」
「だ、抱きついてません! へ、変なこと言わないで!」
瞬時に離れるけれど、恥ずかしくて広夢くんの顔を見ることができない。
さっきは男性恐怖症というより、広夢くんに対して耐性ができたように思ったけれど。
異様に心臓が早鐘を打つのは、きっと私のキャパをこえて男の人に触れてしまったからだろう。
「たまには全部俺に任せてよ。いつも美味い料理に更には弁当まで作ってもらってるし、このくらいさせて? ってか、このくらいしかできないし。あんまり意地張ってると、俺から美姫に抱きついちゃうよ?」
「それ、セクハラだから!」
「素直に俺に任せてくれれば、そんなことしないから。たまにはゆっくりしてな」
そう言いながら、すでにスポンジに洗剤を付けて食器を洗いはじめる広夢くん。
何だか、完全に言い負かされた気分……。
悪いなと思いながらも、広夢くんの厚意に甘えることにした。
「……ありがとう」
何となく決まりが悪くて小声でボソッと呟くような言い方になってしまったけれど、
「おう! ごゆっくり~!」
広夢くんは私のそんな声さえ聞き落とすことなく、そう返事をしてくれた。
お風呂に入ったあとは、テストも近づいて来たし私は自分の部屋でテストに向けて勉強をしていた。
ちょうどキリの良いところまで終わり時計を見る。すると深夜0時を回ったところだった。
いつもよりちょっと早いけど、今日はここまでにしようかな。
今から新たにはじめてたら、夜遅くなり過ぎちゃうし……。
とりあえずマグカップに入れて持ってきていた麦茶が空になっていたので、台所に追加しに行くことにした。
「あ……」
「……よぉ」
部屋からリビングに出ると、リビングのローテーブルの前に座って、参考書を片手にこちらを見る広夢くんの姿が視界に飛び込む。
「……うん」
ぎゅっと広夢くんに握られる私の両手の拳。
今までは、男の人の手でさえ恐怖の対象でしかなかった。
だけど、広夢くんの手に触れるようになって、その印象はかなり変わった。
「……怖くない?」
「う、うん。平気……」
女の人のそれと比べると、大きくてごつごつしている男の人の手。
それでいて、あったかくて、かつ優しく感じてしまうのは、広夢くんの手だからなのかな──?
最初は恐る恐る自分から触っていた広夢くんの手だったけど、6月も半ばになる頃には、広夢くんから触れられるのにも少し耐性がついたみたい。
「……じゃあ、もうちょっと近づいてみてもいい?」
「え、や、そ、それは……っ」
今日はこれで終わりだと思っていたのに、急にそんなことを言われて、胸がドギマギする。
いくら少し耐性がついた気がするとは言っても、やっぱり全く怖くないって言ったら嘘になる。
「ハハッ冗談だよ。今日もよく頑張ったね」
広夢くんは軽く笑いながら、パッと私の両手から手を離して離れていく。
「今日の後片付けは俺が全部やっとくから、美姫は先に風呂入って好きなことしてくれていいよ」
「え、そんな……っ! わ、私もやるよ……?」
「いいって! 俺、食器をしまう位置も覚えたし、大丈夫」
「でも……」
男性恐怖症を克服するという名の特訓は、いつも夜ご飯のあとに行われている。
最近では、自然の流れでこのあと一緒に食器を片付けることが増えた。
使用済みの食器を重ねてシンクへと持っていく広夢くんを、慌てて追いかけるも、
「あぅ……っ」
シンクに食器を置いてこちらに戻ろうとした広夢くんと、正面からぶつかってしまった。
「美姫から抱きついてくるなんて、大胆~! もしかして、男性恐怖症治った?」
「だ、抱きついてません! へ、変なこと言わないで!」
瞬時に離れるけれど、恥ずかしくて広夢くんの顔を見ることができない。
さっきは男性恐怖症というより、広夢くんに対して耐性ができたように思ったけれど。
異様に心臓が早鐘を打つのは、きっと私のキャパをこえて男の人に触れてしまったからだろう。
「たまには全部俺に任せてよ。いつも美味い料理に更には弁当まで作ってもらってるし、このくらいさせて? ってか、このくらいしかできないし。あんまり意地張ってると、俺から美姫に抱きついちゃうよ?」
「それ、セクハラだから!」
「素直に俺に任せてくれれば、そんなことしないから。たまにはゆっくりしてな」
そう言いながら、すでにスポンジに洗剤を付けて食器を洗いはじめる広夢くん。
何だか、完全に言い負かされた気分……。
悪いなと思いながらも、広夢くんの厚意に甘えることにした。
「……ありがとう」
何となく決まりが悪くて小声でボソッと呟くような言い方になってしまったけれど、
「おう! ごゆっくり~!」
広夢くんは私のそんな声さえ聞き落とすことなく、そう返事をしてくれた。
お風呂に入ったあとは、テストも近づいて来たし私は自分の部屋でテストに向けて勉強をしていた。
ちょうどキリの良いところまで終わり時計を見る。すると深夜0時を回ったところだった。
いつもよりちょっと早いけど、今日はここまでにしようかな。
今から新たにはじめてたら、夜遅くなり過ぎちゃうし……。
とりあえずマグカップに入れて持ってきていた麦茶が空になっていたので、台所に追加しに行くことにした。
「あ……」
「……よぉ」
部屋からリビングに出ると、リビングのローテーブルの前に座って、参考書を片手にこちらを見る広夢くんの姿が視界に飛び込む。
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