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第3章
◆俺の本気を見せてやる-広夢Side-(4)
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さらには、
「その問題、その公式使うんじゃなくて、教科書75ページの公式を使ったらすぐ解けるよ」
だなんて、何でもないかのように爽やかスマイルで言ってきやがる。
美姫がもしこの場に居なければ、間違いなく俺はこいつの顔面を殴ってただろうと思った。
「そうですか。そりゃありがとうございました」
ぶっきらぼうにそう言って、乱暴にその問題の解答を書きなぐる。
目の前の持田は、相変わらず美姫とあれこれ話している。
俺も二人の会話に入り込めたらいいのだけど、悲しいことにさりげなく身を乗り出して二人の間にある問題を覗き見たところ、全くもってちんぷんかんぷんだった。
さすが学年ツートップ。
持田に関しては、認めたくないけれど。
きっと持田は一緒に勉強することで、俺と二人の実力の差を見せつけるつもりだったんだ。
持田の悪意しか感じられない言葉を聞く限り、絶対そうだ。
この腹黒野郎め……っ!
こんなことになるなら、もっと真面目に勉強してれば、とこれまでの自分を呪いたくなる。
気にしないようにしても、目の前の二人を見てしまう。
美姫から持田に勉強を聞いてるときもあって、そんな二人を見せつけられるのも嫌になって、俺は席を立とうとする。
だけど丁度そのとき、俺より先に美姫が席を立った。
「わ、私、ちょっと下で調べ物してくる……!」
学年ツートップの頭でも解けないような問題にでも当たったのか、美姫は自分の参考書を持って図書室の1階に降りていく。
「うん。行ってらっしゃい」
にこやかに美姫に手を振る持田。
「……お前は行かねーのかよ」
ここまでの流れだと美姫について行きそうなものなのに、どういう風の吹きまわしだ?
「行くも何も、今、篠原さんがやってるのは日本史のレポートだからね。僕はまた別のテーマで書くし、行く意味ないでしょ?」
そういや日本史の課題でそんなん出てたっけ?
すっかり記憶から抜け落ちてたわ。
ってか、さっきまで美姫も参考書やら問題集を広げてたように見えたけど、終わったのか?
一緒に勉強してるはずの美姫が今何をしてるのかさえつかめてなくて。
目の前の持田には、美姫の目を盗んでバカにされて。
何だか自分が惨めに思えてくる……。
「ねぇ……」
持田の言葉には何も返さずいろいろ考えていると、再び持田が話しかけてくる。
「……何だよ」
「一緒に勉強してわかったんじゃない? 自分がいかに篠原さんと釣り合ってないかって」
何だよ、釣り合ってないって……。
そんなの、わざわざ言われなくたってわかってるっての。
だけど……。
「じゃあ、お前は美姫と釣り合ってるとでも思ってんのか?」
いくら事実でも、こいつの口から言われるとムカつく。
さらに言わせてもらえば、自分はさも美姫と釣り合ってると言わんばかりの態度も気に入らねぇ。
「少なくとも、夏川くんよりは?」
「……お前のような頭よくても性格悪い奴に言われたくねぇよ」
「言ってくれるじゃん。まぁ性格悪いのは僕も認めるけど」
認めんのかよ!
思わず心の中で突っ込んでしまった。
まるで見下すようにこちらを見る持田を睨み付ける。
「何、その納得いってませんって言いたげな瞳は」
「うるせぇ。ちょっと勉強ができるからって偉そうに!」
「悔しかったら、次のテストで僕を抜いてみなよ。ま、あの程度の基礎問題でつまずいてた夏川くんには、ハードルが高すぎて話にならないだろうけど」
何だそれ。ふざけんな。
いちいち上から目線で、マジでムカつく。
「……やってやろうじゃねぇか」
相手が学年二位だろうが、知ったことか!
これだけ言われっぱなしなのも、さすがに我慢の限界に達していた俺は、思わず勢いでそう言っていた。
「へぇ。随分強気じゃん。本気で言ってんの?」
「……俺は至って本気だ」
「わかった。じゃあ僕より一点でも負けたときは、篠原さんは僕がもらうから」
「は? 何だよ、それ」
「そういう意味じゃなかったの? 負けたら潔く身を引くって」
ぎりり、と歯を食い縛る。
ここでうなずいたら、俺は──。
「まさか、やっぱり無理だなんて言わないよね?」
「い、言うわけねーだろ!」
「じゃあ決まりだね。あー、今から期末テストが楽しみだよ」
そのときだった。
「あ、あれ? 二人とも怖い顔してどうしたの?」
俺らの異様な雰囲気を見て少し怯え気味にそう言いながら、美姫が戻ってきた。
完全に持田にはめられた。
悔しいけど、俺も上手い具合に挑発されて、その口車に乗ってしまったんだ。
でも、今さら引き返せるか!
こうなったら、俺は──。
死ぬ気で勉強するまでだ!!
「その問題、その公式使うんじゃなくて、教科書75ページの公式を使ったらすぐ解けるよ」
だなんて、何でもないかのように爽やかスマイルで言ってきやがる。
美姫がもしこの場に居なければ、間違いなく俺はこいつの顔面を殴ってただろうと思った。
「そうですか。そりゃありがとうございました」
ぶっきらぼうにそう言って、乱暴にその問題の解答を書きなぐる。
目の前の持田は、相変わらず美姫とあれこれ話している。
俺も二人の会話に入り込めたらいいのだけど、悲しいことにさりげなく身を乗り出して二人の間にある問題を覗き見たところ、全くもってちんぷんかんぷんだった。
さすが学年ツートップ。
持田に関しては、認めたくないけれど。
きっと持田は一緒に勉強することで、俺と二人の実力の差を見せつけるつもりだったんだ。
持田の悪意しか感じられない言葉を聞く限り、絶対そうだ。
この腹黒野郎め……っ!
こんなことになるなら、もっと真面目に勉強してれば、とこれまでの自分を呪いたくなる。
気にしないようにしても、目の前の二人を見てしまう。
美姫から持田に勉強を聞いてるときもあって、そんな二人を見せつけられるのも嫌になって、俺は席を立とうとする。
だけど丁度そのとき、俺より先に美姫が席を立った。
「わ、私、ちょっと下で調べ物してくる……!」
学年ツートップの頭でも解けないような問題にでも当たったのか、美姫は自分の参考書を持って図書室の1階に降りていく。
「うん。行ってらっしゃい」
にこやかに美姫に手を振る持田。
「……お前は行かねーのかよ」
ここまでの流れだと美姫について行きそうなものなのに、どういう風の吹きまわしだ?
「行くも何も、今、篠原さんがやってるのは日本史のレポートだからね。僕はまた別のテーマで書くし、行く意味ないでしょ?」
そういや日本史の課題でそんなん出てたっけ?
すっかり記憶から抜け落ちてたわ。
ってか、さっきまで美姫も参考書やら問題集を広げてたように見えたけど、終わったのか?
一緒に勉強してるはずの美姫が今何をしてるのかさえつかめてなくて。
目の前の持田には、美姫の目を盗んでバカにされて。
何だか自分が惨めに思えてくる……。
「ねぇ……」
持田の言葉には何も返さずいろいろ考えていると、再び持田が話しかけてくる。
「……何だよ」
「一緒に勉強してわかったんじゃない? 自分がいかに篠原さんと釣り合ってないかって」
何だよ、釣り合ってないって……。
そんなの、わざわざ言われなくたってわかってるっての。
だけど……。
「じゃあ、お前は美姫と釣り合ってるとでも思ってんのか?」
いくら事実でも、こいつの口から言われるとムカつく。
さらに言わせてもらえば、自分はさも美姫と釣り合ってると言わんばかりの態度も気に入らねぇ。
「少なくとも、夏川くんよりは?」
「……お前のような頭よくても性格悪い奴に言われたくねぇよ」
「言ってくれるじゃん。まぁ性格悪いのは僕も認めるけど」
認めんのかよ!
思わず心の中で突っ込んでしまった。
まるで見下すようにこちらを見る持田を睨み付ける。
「何、その納得いってませんって言いたげな瞳は」
「うるせぇ。ちょっと勉強ができるからって偉そうに!」
「悔しかったら、次のテストで僕を抜いてみなよ。ま、あの程度の基礎問題でつまずいてた夏川くんには、ハードルが高すぎて話にならないだろうけど」
何だそれ。ふざけんな。
いちいち上から目線で、マジでムカつく。
「……やってやろうじゃねぇか」
相手が学年二位だろうが、知ったことか!
これだけ言われっぱなしなのも、さすがに我慢の限界に達していた俺は、思わず勢いでそう言っていた。
「へぇ。随分強気じゃん。本気で言ってんの?」
「……俺は至って本気だ」
「わかった。じゃあ僕より一点でも負けたときは、篠原さんは僕がもらうから」
「は? 何だよ、それ」
「そういう意味じゃなかったの? 負けたら潔く身を引くって」
ぎりり、と歯を食い縛る。
ここでうなずいたら、俺は──。
「まさか、やっぱり無理だなんて言わないよね?」
「い、言うわけねーだろ!」
「じゃあ決まりだね。あー、今から期末テストが楽しみだよ」
そのときだった。
「あ、あれ? 二人とも怖い顔してどうしたの?」
俺らの異様な雰囲気を見て少し怯え気味にそう言いながら、美姫が戻ってきた。
完全に持田にはめられた。
悔しいけど、俺も上手い具合に挑発されて、その口車に乗ってしまったんだ。
でも、今さら引き返せるか!
こうなったら、俺は──。
死ぬ気で勉強するまでだ!!
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