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第3章
◆俺の本気を見せてやる-広夢Side-(1)
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「ほら、あと少し……」
「……っ、できた」
「やるじゃん」
俺の手のひらに重ねられた、美姫の小さな手のひら。
美姫の男性恐怖症を克服するという策略を美姫に明かしてから、ここまで5日かかった。
握る指を1日1本ずつ増やしていって、とうとう今日、俺と片方の手のひらを重ねるというところまで来たんだ。
美姫の負けず嫌いな性格も重なってなのか、俺が思っていた以上の成果を見せてくれている。
俺の手のひらにくっつく美姫の手のひらは若干震えていて、そこがまた可愛いというかなんというか……。
「ねぇ美姫。美姫さえよければ、このまま手、握ってみる?」
そんな美姫を見てると、ちょっと意地悪を言ってみたくなる。
ピクンと揺れる美姫の肩を見て、内心無理だろうなーと思いながら美姫の返事を待つけれど……。
「や、そ、それは……。また、明日ってことで……」
「明日だったら、手、握っていいの?」
「や、広夢くんからじゃなくてね、わ、私から……っ」
少し照れたように頬を赤くして、慌てたように言う美姫。
あー、もう、なんなのこいつ。
わざとやってんのか?
それともこう見えて、意外と天然なの?
可愛すぎて、俺の心臓がヤバいことになってるんですけど……。
「わかった。じゃあ、また続きは明日な」
修学旅行実行委員の最初の集まりのあったあの日。
持田が美姫に告白してるのを聞いたときは、正直焦った。
美姫が男が苦手とは聞いてたから、今すぐどうこうなることはないだろうとは思っていた。
だけど、やっぱり美姫の中に別の男の存在が入ることは嫌だ。
持田があんな風に出てくると思ってなかったから、今もまだ気は抜けない。
あれ以来、特別持田が美姫に何かしてる、といったことはないようだけれど……。
こうして美姫の男性恐怖症を克服する手伝いをする中で、少しでも俺の存在が美姫の中で“特別”になってくれれば……。
そんなことを思ってしまう俺は、何だかんだでちゃっかりしていてずるい人間なのかもしれない。
そんな6月上旬の昼休み。
もうすっかり弁当持参の姿が定着していた俺は、結人と教室で昼飯を食っていた。
「……気持ち悪ぃ」
すると、突然俺の顔を見たかと思えば、結人がそんな一言を放ってくる。
「あ? 何だよ、突然」
「や。自分の顔。鏡で見てみろ。ずっとニヤニヤニヤニヤ気持ち悪ぃ」
何だ、それは……。ニヤニヤなんてしてねーし。
失礼にも程があるだろ。
「……にしても、ずいぶん余裕なんだな」
「何がだよ」
「何って、ほら」
結人の指し示す先に視線を移すと、廊下で美姫とひとつのノートを覗いている持田の姿があった。
い、いつの間に……っ!
「おー、怒った怒った。面白しれ~。お前、マジでヒメに惚れたな」
「っうるせ。なんであいつがわざわざうちのクラスの前に来て、美姫とノートなんて見てんだよ」
「俺が知るかよ。ってか、惚れたのは否定しないんだ」
「……お前マジでうざい」
俺の視線は廊下にいる二人に注いだまま、それだけ言い放つ。
ってか、美姫も美姫だ。
男が苦手なくせに、持田とひとつのノートを覗いてんじゃねーよ。
ひとつのノートを見てるとは言っても、美姫が持田とある一定の距離を保とうとしているのは見てとれる。
だけど持田がちょっとその気になれば、触れてしまえるような距離には変わりない。
「あー、あれじゃね? そろそろ定期テスト近づいてきたし、二人で勉強してるとか!」
そこで、結人がパッとひらめいたように人さし指を立てた。
「……っ、できた」
「やるじゃん」
俺の手のひらに重ねられた、美姫の小さな手のひら。
美姫の男性恐怖症を克服するという策略を美姫に明かしてから、ここまで5日かかった。
握る指を1日1本ずつ増やしていって、とうとう今日、俺と片方の手のひらを重ねるというところまで来たんだ。
美姫の負けず嫌いな性格も重なってなのか、俺が思っていた以上の成果を見せてくれている。
俺の手のひらにくっつく美姫の手のひらは若干震えていて、そこがまた可愛いというかなんというか……。
「ねぇ美姫。美姫さえよければ、このまま手、握ってみる?」
そんな美姫を見てると、ちょっと意地悪を言ってみたくなる。
ピクンと揺れる美姫の肩を見て、内心無理だろうなーと思いながら美姫の返事を待つけれど……。
「や、そ、それは……。また、明日ってことで……」
「明日だったら、手、握っていいの?」
「や、広夢くんからじゃなくてね、わ、私から……っ」
少し照れたように頬を赤くして、慌てたように言う美姫。
あー、もう、なんなのこいつ。
わざとやってんのか?
それともこう見えて、意外と天然なの?
可愛すぎて、俺の心臓がヤバいことになってるんですけど……。
「わかった。じゃあ、また続きは明日な」
修学旅行実行委員の最初の集まりのあったあの日。
持田が美姫に告白してるのを聞いたときは、正直焦った。
美姫が男が苦手とは聞いてたから、今すぐどうこうなることはないだろうとは思っていた。
だけど、やっぱり美姫の中に別の男の存在が入ることは嫌だ。
持田があんな風に出てくると思ってなかったから、今もまだ気は抜けない。
あれ以来、特別持田が美姫に何かしてる、といったことはないようだけれど……。
こうして美姫の男性恐怖症を克服する手伝いをする中で、少しでも俺の存在が美姫の中で“特別”になってくれれば……。
そんなことを思ってしまう俺は、何だかんだでちゃっかりしていてずるい人間なのかもしれない。
そんな6月上旬の昼休み。
もうすっかり弁当持参の姿が定着していた俺は、結人と教室で昼飯を食っていた。
「……気持ち悪ぃ」
すると、突然俺の顔を見たかと思えば、結人がそんな一言を放ってくる。
「あ? 何だよ、突然」
「や。自分の顔。鏡で見てみろ。ずっとニヤニヤニヤニヤ気持ち悪ぃ」
何だ、それは……。ニヤニヤなんてしてねーし。
失礼にも程があるだろ。
「……にしても、ずいぶん余裕なんだな」
「何がだよ」
「何って、ほら」
結人の指し示す先に視線を移すと、廊下で美姫とひとつのノートを覗いている持田の姿があった。
い、いつの間に……っ!
「おー、怒った怒った。面白しれ~。お前、マジでヒメに惚れたな」
「っうるせ。なんであいつがわざわざうちのクラスの前に来て、美姫とノートなんて見てんだよ」
「俺が知るかよ。ってか、惚れたのは否定しないんだ」
「……お前マジでうざい」
俺の視線は廊下にいる二人に注いだまま、それだけ言い放つ。
ってか、美姫も美姫だ。
男が苦手なくせに、持田とひとつのノートを覗いてんじゃねーよ。
ひとつのノートを見てるとは言っても、美姫が持田とある一定の距離を保とうとしているのは見てとれる。
だけど持田がちょっとその気になれば、触れてしまえるような距離には変わりない。
「あー、あれじゃね? そろそろ定期テスト近づいてきたし、二人で勉強してるとか!」
そこで、結人がパッとひらめいたように人さし指を立てた。
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