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第2章
◇暗闇の中で-美姫Side-(3)
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*
スポーツ大会の準備の目処が早々についたことから、今日の生徒会はお休みになった私は、放課後スーパーのタイムセールに行った。
私がお母さんと一緒に暮らしてないことで、お母さんに金銭的負担をかけてしまってる分、やっぱり少しでも節約できるところはしておきたい。
必要な食料品を買い込んでスーパーを出るときには、予定よりも一足早く雨が降り始めていた。
雨はすでに強く、このとき一時的に降ったあとすぐに一旦止んだけど、カバンに入れていた折り畳み傘ではしのげないくらいだった。
すでに広夢くんは帰ってるようで、玄関の隅には広夢くんの学校指定の革靴が揃えて置かれている。
「ただいま」
とりあえずリビングに入るときそう一声かけてみるけれど、広夢くんからの返事は返ってこない。
珍しいな……。
広夢くんはよくリビングでテレビを見てたり、雑誌とか読んだりしていることが多いのに……。
疲れて部屋で寝てるのかな?
冷えて寒いし、とりあえずシャワー浴びて着替えようかな。
制服も、洗って乾かさないといけないし……。
傘をさしていたとはいえ、酷い横殴りの雨で私自身水浸しに近い状態になってしまったんだ。
冷蔵庫に入れるものだけを手早く入れると、着替えを持って私はお風呂場に向かった。
──ガラガラガラ。
何のためらいもなく、いつものように脱衣所の引き戸を開けたとき、私は思わず固まってしまった。
「へ?」
そこには、ちょうどお風呂上がりだと思われる広夢くんの姿。
バスタオルで髪を拭いているところだったらしい。
頭にバスタオルが当てられてはいるものの、髪の毛先からは妙に色っぽく水滴が伝い落ちているのが確認できた。
辛うじて腰には別のタオルを巻いてはいるものの、目に飛び込んだ上半身は適度に引き締まっていて、改めて男の子なんだと感じさせられる。
「……え。あ、や……」
私が男の人が苦手だって知ってから、何だかんだで広夢くんは私がなんとか怖いと感じなくて済む距離感を保ってくれていた。
だから、いつの間にか広夢くんが男の子だということを必要以上に意識しなくなってたんだと思う。
だけど、こうして男の子なんだって改めて認識したら、どうだろう?
……怖い……。
何で? 相手は、広夢くんなのに……。
でも、怖い……。
今すぐにでも逃げ出したいのに、あまりにびっくりしすぎて身体が動かない。
でも、きっとそれは広夢くんも一緒だったんだと思う。
「……あ、ごめん。俺、傘、忘れてずぶ濡れになってさ……」
ふわふわと視線をさ迷わせているのは、広夢くんも動揺していたのかもしれない。
だけど広夢くんの視線が私のある一点に止まった瞬間、彼はまるで私をバスタオルの中に隠すように、持っていたバスタオルをかけてきた。
「……きゃっ」
若干湿気たそのタオルは、さっきまで広夢くんの頭に乗せられていたもの。
思わずドキンと胸が跳ねたのは、怖かったからなのか、ただ単純にびっくりしただけなのかはわからない。
「ごめ……っ。その、見るつもりなかったんだけど、」
「……え?」
「服、透けてるから……」
恐る恐る少し震え始めていた手で、私にかけられたバスタオルを取る。
目の前の広夢くんは、耳まで赤く染めて、私から顔を反らしている。
……服?
気になって視線を自分の服へと落とすと、制服のブラウスが雨に濡れて、その下に着ていた下着がくっきりと透けて見えていた。
「い、いやああああっ!!」
服が透けてしまっていたこともだし、広夢くんの上半身を見たことで再び恐怖心がわき上がってきてるし……。
とにかく、この洗面所に流れる空気に耐えられなくて、私はバスタオルを広夢くんに投げつけると、逃げるように洗面所をあとにした。
スポーツ大会の準備の目処が早々についたことから、今日の生徒会はお休みになった私は、放課後スーパーのタイムセールに行った。
私がお母さんと一緒に暮らしてないことで、お母さんに金銭的負担をかけてしまってる分、やっぱり少しでも節約できるところはしておきたい。
必要な食料品を買い込んでスーパーを出るときには、予定よりも一足早く雨が降り始めていた。
雨はすでに強く、このとき一時的に降ったあとすぐに一旦止んだけど、カバンに入れていた折り畳み傘ではしのげないくらいだった。
すでに広夢くんは帰ってるようで、玄関の隅には広夢くんの学校指定の革靴が揃えて置かれている。
「ただいま」
とりあえずリビングに入るときそう一声かけてみるけれど、広夢くんからの返事は返ってこない。
珍しいな……。
広夢くんはよくリビングでテレビを見てたり、雑誌とか読んだりしていることが多いのに……。
疲れて部屋で寝てるのかな?
冷えて寒いし、とりあえずシャワー浴びて着替えようかな。
制服も、洗って乾かさないといけないし……。
傘をさしていたとはいえ、酷い横殴りの雨で私自身水浸しに近い状態になってしまったんだ。
冷蔵庫に入れるものだけを手早く入れると、着替えを持って私はお風呂場に向かった。
──ガラガラガラ。
何のためらいもなく、いつものように脱衣所の引き戸を開けたとき、私は思わず固まってしまった。
「へ?」
そこには、ちょうどお風呂上がりだと思われる広夢くんの姿。
バスタオルで髪を拭いているところだったらしい。
頭にバスタオルが当てられてはいるものの、髪の毛先からは妙に色っぽく水滴が伝い落ちているのが確認できた。
辛うじて腰には別のタオルを巻いてはいるものの、目に飛び込んだ上半身は適度に引き締まっていて、改めて男の子なんだと感じさせられる。
「……え。あ、や……」
私が男の人が苦手だって知ってから、何だかんだで広夢くんは私がなんとか怖いと感じなくて済む距離感を保ってくれていた。
だから、いつの間にか広夢くんが男の子だということを必要以上に意識しなくなってたんだと思う。
だけど、こうして男の子なんだって改めて認識したら、どうだろう?
……怖い……。
何で? 相手は、広夢くんなのに……。
でも、怖い……。
今すぐにでも逃げ出したいのに、あまりにびっくりしすぎて身体が動かない。
でも、きっとそれは広夢くんも一緒だったんだと思う。
「……あ、ごめん。俺、傘、忘れてずぶ濡れになってさ……」
ふわふわと視線をさ迷わせているのは、広夢くんも動揺していたのかもしれない。
だけど広夢くんの視線が私のある一点に止まった瞬間、彼はまるで私をバスタオルの中に隠すように、持っていたバスタオルをかけてきた。
「……きゃっ」
若干湿気たそのタオルは、さっきまで広夢くんの頭に乗せられていたもの。
思わずドキンと胸が跳ねたのは、怖かったからなのか、ただ単純にびっくりしただけなのかはわからない。
「ごめ……っ。その、見るつもりなかったんだけど、」
「……え?」
「服、透けてるから……」
恐る恐る少し震え始めていた手で、私にかけられたバスタオルを取る。
目の前の広夢くんは、耳まで赤く染めて、私から顔を反らしている。
……服?
気になって視線を自分の服へと落とすと、制服のブラウスが雨に濡れて、その下に着ていた下着がくっきりと透けて見えていた。
「い、いやああああっ!!」
服が透けてしまっていたこともだし、広夢くんの上半身を見たことで再び恐怖心がわき上がってきてるし……。
とにかく、この洗面所に流れる空気に耐えられなくて、私はバスタオルを広夢くんに投げつけると、逃げるように洗面所をあとにした。
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