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第2章
◆弁当と嫉妬心-広夢Side-(5)
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「何だよ突然。持田のことか?」
「あいつ、持田っていうのか!?」
「おいおい、今更何言ってんだよ。隣のクラスの持田 隆司。ほら、今月から生徒会長になった」
「そうだっけ?」
確かに今月頭にあった全校集会で、生徒会長、副会長、書記の3年から2年への引き継ぎが行われていた。
それで学園のヒメが生徒会書記になったことは俺らの間でも話題に上ったし覚えてたけれど、その他のメンバーの顔と名前なんて全くもって記憶に残ってなかった。
「さすがというかなんというか。生徒会長の名前くらい覚えておいてやれよな~?」
「うるせぇよ。俺は興味のないことは覚えない主義なんだ」
今でもその持田って奴には興味はないけれど、俺はその名前をしっかりと頭に記憶してしまった。
男が苦手だからって俺には怯えたような態度のくせに、持田とは普通に話せてるじゃん……。
学校がこっち方面だということもあり、俺らの方へと二人並んで歩いてくる。
会話が弾んでいるのか美姫も持田も穏やかに笑っているように見えて、何とも言えない気持ちになる。
とりあえず気持ちを紛らわせるためにも、俺は結人に持たせていた荷物を奪い取る。
美姫に、俺が結人に荷物持ちをさせているのを見られるのも嫌だし……。
「……あ」
美姫が俺の存在に気づいたのは、すれ違うまであと数メートルといったところだった。
形のいい大きな瞳が俺を捉えた瞬間、美姫の目線は俺の手元の買い物袋の方へと注がれる。
「お疲れさま。ありがとう」
ニコッと俺に小さく笑いかけてくる美姫。
「お、おう。このくらい任せとけ」
だけどその天使のような微笑みを見た瞬間、買い物袋の重みも、心に溜まりつつあった黒いものも一気に消えるようだから不思議だ。
本当なら“頑張ってな”とか“気をつけて帰って”とか、もっと美姫を気遣うような言葉をかけることができたらよかったんだけど、どういうわけが俺としてはその言葉を言うだけで精一杯だった。
「今の、篠原さんと同じクラスの夏川くんだよね? 仲良いの?」
すれ違った直後そんな持田の声が聞こえてきて、再び苛立ったような感情がわき起こる。
思わず耳をそば立てていたが、お互いに反対方向に向かって歩いていたのもあって、美姫が持田の問いかけに何てこたえたのかは全くもって聞こえなかった。
「……広夢? おい、広夢!?」
結人が俺を呼ぶ声に、ハッと我に返る。
「あ、悪い。ちょっとぼんやりしてた」
ハハっと笑ってごまかしてみるけれど、俺と長い付き合いのこいつの目はそう簡単にごまかされてはくれなさそうだ。
「ちょっとどころじゃなくね? まさか広夢、一緒に住み出して、ヒメのこと気になってるとか?」
「ま、さか。そんなわけねぇだろ」
そんなわけ、ない。
確かに可愛いとは思うけどさ……。
それは美姫のことを知る人なら、誰もが思っているはずのことだ。
だけど結人の目はどこか怪しげで、俺のそんなこたえは全くもって信じてないって言いたげだ。
「まぁ広夢が本気で恋愛してみようって思える相手が見つかったなら俺は喜んで応援しようとは思うが、ヒメはかなり難易度高いと思うぞ?」
って、俺の苦し紛れのこたえは無視かよ!
それに美姫が難易度高い相手だっていうことは、学園内の誰よりもわかってるつもりだ。
学校では強がって平気なフリしてるけど、実は男が苦手だって。
それも俺がちょっと触れただけで震え上がってしまうくらいに。
そんな、美姫がどの男とも付き合ったことがないってウワサを裏付けるに充分過ぎるくらいの理由を知ってしまったのだから。
それをわかってて好きになるなんて、無謀もいいところだ。
でも、何でだろう。
それでも美姫にもっと近づきたいって思ってしまうのは、やっぱり俺が彼女に少なからず惹かれてるっていうことなのだろうか──。
「あいつ、持田っていうのか!?」
「おいおい、今更何言ってんだよ。隣のクラスの持田 隆司。ほら、今月から生徒会長になった」
「そうだっけ?」
確かに今月頭にあった全校集会で、生徒会長、副会長、書記の3年から2年への引き継ぎが行われていた。
それで学園のヒメが生徒会書記になったことは俺らの間でも話題に上ったし覚えてたけれど、その他のメンバーの顔と名前なんて全くもって記憶に残ってなかった。
「さすがというかなんというか。生徒会長の名前くらい覚えておいてやれよな~?」
「うるせぇよ。俺は興味のないことは覚えない主義なんだ」
今でもその持田って奴には興味はないけれど、俺はその名前をしっかりと頭に記憶してしまった。
男が苦手だからって俺には怯えたような態度のくせに、持田とは普通に話せてるじゃん……。
学校がこっち方面だということもあり、俺らの方へと二人並んで歩いてくる。
会話が弾んでいるのか美姫も持田も穏やかに笑っているように見えて、何とも言えない気持ちになる。
とりあえず気持ちを紛らわせるためにも、俺は結人に持たせていた荷物を奪い取る。
美姫に、俺が結人に荷物持ちをさせているのを見られるのも嫌だし……。
「……あ」
美姫が俺の存在に気づいたのは、すれ違うまであと数メートルといったところだった。
形のいい大きな瞳が俺を捉えた瞬間、美姫の目線は俺の手元の買い物袋の方へと注がれる。
「お疲れさま。ありがとう」
ニコッと俺に小さく笑いかけてくる美姫。
「お、おう。このくらい任せとけ」
だけどその天使のような微笑みを見た瞬間、買い物袋の重みも、心に溜まりつつあった黒いものも一気に消えるようだから不思議だ。
本当なら“頑張ってな”とか“気をつけて帰って”とか、もっと美姫を気遣うような言葉をかけることができたらよかったんだけど、どういうわけが俺としてはその言葉を言うだけで精一杯だった。
「今の、篠原さんと同じクラスの夏川くんだよね? 仲良いの?」
すれ違った直後そんな持田の声が聞こえてきて、再び苛立ったような感情がわき起こる。
思わず耳をそば立てていたが、お互いに反対方向に向かって歩いていたのもあって、美姫が持田の問いかけに何てこたえたのかは全くもって聞こえなかった。
「……広夢? おい、広夢!?」
結人が俺を呼ぶ声に、ハッと我に返る。
「あ、悪い。ちょっとぼんやりしてた」
ハハっと笑ってごまかしてみるけれど、俺と長い付き合いのこいつの目はそう簡単にごまかされてはくれなさそうだ。
「ちょっとどころじゃなくね? まさか広夢、一緒に住み出して、ヒメのこと気になってるとか?」
「ま、さか。そんなわけねぇだろ」
そんなわけ、ない。
確かに可愛いとは思うけどさ……。
それは美姫のことを知る人なら、誰もが思っているはずのことだ。
だけど結人の目はどこか怪しげで、俺のそんなこたえは全くもって信じてないって言いたげだ。
「まぁ広夢が本気で恋愛してみようって思える相手が見つかったなら俺は喜んで応援しようとは思うが、ヒメはかなり難易度高いと思うぞ?」
って、俺の苦し紛れのこたえは無視かよ!
それに美姫が難易度高い相手だっていうことは、学園内の誰よりもわかってるつもりだ。
学校では強がって平気なフリしてるけど、実は男が苦手だって。
それも俺がちょっと触れただけで震え上がってしまうくらいに。
そんな、美姫がどの男とも付き合ったことがないってウワサを裏付けるに充分過ぎるくらいの理由を知ってしまったのだから。
それをわかってて好きになるなんて、無謀もいいところだ。
でも、何でだろう。
それでも美姫にもっと近づきたいって思ってしまうのは、やっぱり俺が彼女に少なからず惹かれてるっていうことなのだろうか──。
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