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第1章
◇一緒に住むに当たって-美姫Side-(1)
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とんでもないことになってしまった。
同居人が、まさかクラスメイトの男子だなんて……。
それに私が男の人が苦手だって気づかれちゃったし……。
「……どうしよう」
湯船に鼻の下まで浸かって、膝を抱える。
頭の中を過るのは、今日の放課後からの数時間で起きた数々の出来事。
普通に振る舞おうと思っても家の中に男の人と二人きりという事実を変に意識してしまって、それがかえって裏目に出たみたい。
なんだかこの数時間で異様に疲れてしまった。
女の子にも人気の高い夏川くん。
今朝も女の子に囲まれてたし、きっとあんなこと夏川くんにとってはどうってことないことなんだろう。
指先が触れたことも。
私の腰を引き寄せて、至近距離で見つめて来たことも。
あんなに身体が密着することも。
思い出すだけで、また身体が震えて来るようだった。
あのあと、夏川くんは美味しそうにオムライスを食べてくれた。そして私が片付けを引き受けるかわりに、先にお風呂に入ってもらったんだ。
視界の隅に男物のシャンプーやらが追加で並んでいて、なんだかいつものお風呂場じゃないみたい。
せっかく一人になれたのになんとなく落ち着かないのは、きっとそのせいなのだろう。
とはいえ、なかなかお風呂から出る気になれないのも事実。
夏川くん、もう寝たかな……?
寝てなくても、自分の部屋に戻ってくれたかな?
だけど、いつまでもここにいても仕方ない。
私は思いきって湯船から出ると、パジャマに身をくるんでリビングへと向かった。
どうしよう……。まだ居る……。
そりゃあ今日から彼はここに住むことになったんだし、居ること自体はなにも悪いことではないんだけど……。
リビングの戸を音を立てずに半分くらい開けて中を覗き見れば、テレビの近くに置いてあるローテーブルのそばに座って、何かしらのバラエティを見ている夏川くんの姿が目に入る。
私の部屋に戻るにも、リビングの中を通らないといけない。
幸いにもリビング内に並ぶドアのうち、手前側が私の部屋で奥側が夏川くんの部屋だ。
こっそり入れなくもないけれど、さすがに何かしら声はかけた方がいいよね……?
そんな風に頭の中でこのあとの自分の行動についていろいろシミュレーションしていると、
「あ、ヒメ。風呂終わったんだ」
どういうわけか夏川くんが不意にこちらを向いて、私はいとも簡単に見つかってしまった。
まぁもともと隠れていたわけではないけれど……。
「……はい」
「もしかしてさっきのこと、そんなに怒ってる? ごめんって」
さっきのこと、とは、きっと夏川くんが私の腰を引き寄せて身体を密着させてきたことについてだろう。
夏川くんは立ち上がると、こちらに来て両手を合わせて頭を下げる。
「や。そういうわけじゃ……」
夏川くんを見る限り、私に許してもらえるまで謝って来そうだったから、とりあえず否定しておいた。
同居人が、まさかクラスメイトの男子だなんて……。
それに私が男の人が苦手だって気づかれちゃったし……。
「……どうしよう」
湯船に鼻の下まで浸かって、膝を抱える。
頭の中を過るのは、今日の放課後からの数時間で起きた数々の出来事。
普通に振る舞おうと思っても家の中に男の人と二人きりという事実を変に意識してしまって、それがかえって裏目に出たみたい。
なんだかこの数時間で異様に疲れてしまった。
女の子にも人気の高い夏川くん。
今朝も女の子に囲まれてたし、きっとあんなこと夏川くんにとってはどうってことないことなんだろう。
指先が触れたことも。
私の腰を引き寄せて、至近距離で見つめて来たことも。
あんなに身体が密着することも。
思い出すだけで、また身体が震えて来るようだった。
あのあと、夏川くんは美味しそうにオムライスを食べてくれた。そして私が片付けを引き受けるかわりに、先にお風呂に入ってもらったんだ。
視界の隅に男物のシャンプーやらが追加で並んでいて、なんだかいつものお風呂場じゃないみたい。
せっかく一人になれたのになんとなく落ち着かないのは、きっとそのせいなのだろう。
とはいえ、なかなかお風呂から出る気になれないのも事実。
夏川くん、もう寝たかな……?
寝てなくても、自分の部屋に戻ってくれたかな?
だけど、いつまでもここにいても仕方ない。
私は思いきって湯船から出ると、パジャマに身をくるんでリビングへと向かった。
どうしよう……。まだ居る……。
そりゃあ今日から彼はここに住むことになったんだし、居ること自体はなにも悪いことではないんだけど……。
リビングの戸を音を立てずに半分くらい開けて中を覗き見れば、テレビの近くに置いてあるローテーブルのそばに座って、何かしらのバラエティを見ている夏川くんの姿が目に入る。
私の部屋に戻るにも、リビングの中を通らないといけない。
幸いにもリビング内に並ぶドアのうち、手前側が私の部屋で奥側が夏川くんの部屋だ。
こっそり入れなくもないけれど、さすがに何かしら声はかけた方がいいよね……?
そんな風に頭の中でこのあとの自分の行動についていろいろシミュレーションしていると、
「あ、ヒメ。風呂終わったんだ」
どういうわけか夏川くんが不意にこちらを向いて、私はいとも簡単に見つかってしまった。
まぁもともと隠れていたわけではないけれど……。
「……はい」
「もしかしてさっきのこと、そんなに怒ってる? ごめんって」
さっきのこと、とは、きっと夏川くんが私の腰を引き寄せて身体を密着させてきたことについてだろう。
夏川くんは立ち上がると、こちらに来て両手を合わせて頭を下げる。
「や。そういうわけじゃ……」
夏川くんを見る限り、私に許してもらえるまで謝って来そうだったから、とりあえず否定しておいた。
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