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第1章
◆同居人は学校の……!?-広夢Side-(3)
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「あのさ、ヒメって男が苦手、とか?」
俺が近づく度、ましてや触れようなら指先でさえ過剰に反応したヒメ。
まさかヒメに限って、こんな俺のことを好きだなんてことはないだろうし……。
そのことからも、考えられることはこれくらいしかなかった。
「──え、っと。それは……」
俺の問いに応えるかのように再び小さく身体を震わせるヒメ。
だけど、彼女の弱々しい言葉からも態度からも、俺の思った通りヒメは男が苦手なんだと確信するのに充分だった。
俺が見ても明らかなくらいにヒメの色白の頬が真っ赤に染まっていくのは、自分の秘密を俺に知られてしまったからなのだろう。
何これ、可愛いんだけど……。
「だってヒメ、俺が近づく度に震えてる」
「震えてなんてない、から」
“震えてなんてない”まで勢いよく言ったわりに、語尾の“から”が異様に弱々しい。俺を怖がっているのかもしれないヒメには悪いけど、笑えてくる。
「そこは即座に否定するんだ。男が苦手なのは否定しないくせに」
「そ、それは……っ。夏川くんとの距離が近すぎるからで……」
キッと睨むように俺を見たかと思えば、再びオロオロと視線を逸らしてしまうヒメ。
学校での“ヒメ”としてのイメージと違いすぎるだろ。
俺との距離が近いって、別に俺、意図的にヒメにくっついてるわけでもないんだけど?
少なくとも今の俺らの立ち位置は、普通に人と人が話す距離だと思う。
「別に普通だと思うけど。それは男が苦手だからそう感じるんじゃね?」
不服そうに視線を逸らすヒメ。
ヒメでも、こんないじけた表情するんだ。
面白い……。
こんなに男が苦手なくせに素直に認めなくて。
そんな男に対しても、オムライスを作ってくれるヒメ。
ヒメの口から俺のオムライスかどうかは聞いてないが、目の前に並ぶそれなりの大きさの二つのオムライスを、まさか両方ともヒメが食べるわけではないだろう。
なんだかそんなヒメを見ていると、つい出来心から意地悪したくなる。
俺はあえてヒメの方へと一歩踏み込むと、細い腰を抱き寄せて、あごを俺の方へと向けた。
その瞬間、これまでにないくらいにヒメの身体が強張るのを感じる。
「それに近づき過ぎるっていうのは、例えばこんな感じにされることを言うんだよ?」
「……あ、っや……」
だけど、ヒメが今にも泣きそうな表情を浮かべたのが見えて、俺はすぐさまその手を解いた。
ちょっとからかうつもりのはずが、失敗したと思った。
「……夏川くんの、意地悪」
再びもとあった距離感に戻るなり、ヒメの口から放たれたのはそんな言葉。
今にも泣いてしまいそうだったというのに、口調といい俺を見る目付きといい、まだ強がってるのが見てとれて内心ホッとしたのも事実。
「ヒメが素直に認めないからだろ~?」
それでもまだ認めたくないのか膨れっ面を崩さないヒメ。
「もう夕飯の準備はできたから、そこに座っててもらえる?」
ヒメは何でもないかのようにそう言って、形のいいオムライスを二つダイニングテーブルの方へ持っていく。
強がりっていうか、きっと負けず嫌いなんだろうな。
そんな一面を見せられると、もっとちょっかいを出したくなる俺がいた。
俺が近づく度、ましてや触れようなら指先でさえ過剰に反応したヒメ。
まさかヒメに限って、こんな俺のことを好きだなんてことはないだろうし……。
そのことからも、考えられることはこれくらいしかなかった。
「──え、っと。それは……」
俺の問いに応えるかのように再び小さく身体を震わせるヒメ。
だけど、彼女の弱々しい言葉からも態度からも、俺の思った通りヒメは男が苦手なんだと確信するのに充分だった。
俺が見ても明らかなくらいにヒメの色白の頬が真っ赤に染まっていくのは、自分の秘密を俺に知られてしまったからなのだろう。
何これ、可愛いんだけど……。
「だってヒメ、俺が近づく度に震えてる」
「震えてなんてない、から」
“震えてなんてない”まで勢いよく言ったわりに、語尾の“から”が異様に弱々しい。俺を怖がっているのかもしれないヒメには悪いけど、笑えてくる。
「そこは即座に否定するんだ。男が苦手なのは否定しないくせに」
「そ、それは……っ。夏川くんとの距離が近すぎるからで……」
キッと睨むように俺を見たかと思えば、再びオロオロと視線を逸らしてしまうヒメ。
学校での“ヒメ”としてのイメージと違いすぎるだろ。
俺との距離が近いって、別に俺、意図的にヒメにくっついてるわけでもないんだけど?
少なくとも今の俺らの立ち位置は、普通に人と人が話す距離だと思う。
「別に普通だと思うけど。それは男が苦手だからそう感じるんじゃね?」
不服そうに視線を逸らすヒメ。
ヒメでも、こんないじけた表情するんだ。
面白い……。
こんなに男が苦手なくせに素直に認めなくて。
そんな男に対しても、オムライスを作ってくれるヒメ。
ヒメの口から俺のオムライスかどうかは聞いてないが、目の前に並ぶそれなりの大きさの二つのオムライスを、まさか両方ともヒメが食べるわけではないだろう。
なんだかそんなヒメを見ていると、つい出来心から意地悪したくなる。
俺はあえてヒメの方へと一歩踏み込むと、細い腰を抱き寄せて、あごを俺の方へと向けた。
その瞬間、これまでにないくらいにヒメの身体が強張るのを感じる。
「それに近づき過ぎるっていうのは、例えばこんな感じにされることを言うんだよ?」
「……あ、っや……」
だけど、ヒメが今にも泣きそうな表情を浮かべたのが見えて、俺はすぐさまその手を解いた。
ちょっとからかうつもりのはずが、失敗したと思った。
「……夏川くんの、意地悪」
再びもとあった距離感に戻るなり、ヒメの口から放たれたのはそんな言葉。
今にも泣いてしまいそうだったというのに、口調といい俺を見る目付きといい、まだ強がってるのが見てとれて内心ホッとしたのも事実。
「ヒメが素直に認めないからだろ~?」
それでもまだ認めたくないのか膨れっ面を崩さないヒメ。
「もう夕飯の準備はできたから、そこに座っててもらえる?」
ヒメは何でもないかのようにそう言って、形のいいオムライスを二つダイニングテーブルの方へ持っていく。
強がりっていうか、きっと負けず嫌いなんだろうな。
そんな一面を見せられると、もっとちょっかいを出したくなる俺がいた。
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