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第5章
黒幕と突きつけられる真実(2)
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「やっぱり。驚かせちゃっかな、ごめんごめん」
振り返った先には、ニッコリと、チャームポイントの猫目を細めて笑う新島先輩の姿がある。
「に、新島先輩……っ」
「ちょっと駿ちゃんにお使い頼まれてさ、この近くまで来てたんだけど、そしたら花梨ちゃんがこのコンビニの中に入るのが見えたから来ちゃった」
「あ、そうだったんですね……」
「花梨ちゃんは? 家がこの近くとか?」
「そうなんです。ちょっとフラりと寄っただけで……」
「そうなんだ。なんかさっきからチラチラ外の様子見てるけど、大丈夫? 顔色もあまりよくないよ?」
私があまりに挙動不審だったんだろうな。
新島先輩が心配そうに私の顔色をうかがう。
「え、そうですか?」
「もしかして、花梨ちゃん、何か悩んでる? あたしで良ければ力になるよ?」
「さすがにそれは、申し訳ないです」
「本当に遠慮深いんだから。奏ちゃんと別れたからってあたしたちとも縁を切るだなんて、寂しいな~」
本当に寂しそうに眉を下げる新島先輩。
確かに奏ちゃんと別れてから、Wild Wolfのメンバーとは疎遠になってるけれど。別にそういうつもりじゃなかったんだけどなぁ。
「で、何かあったの?」
「実は……」
私は新島先輩の厚意に甘えて、そこでようやく今、誰かにあとをつけられてるかも知れないことを打ち明けた。
「え、マジで!? ヤバくない? それ」
「はい……。少し前に無言電話もよくかかってきてて、私の予想では多分同じ人なんじゃないかなぁと思うんですけど……」
「そっかぁ。一人で心細かったね。でも大丈夫、こっから先はあたしもいるから。一緒に帰れば大丈夫だよ」
私の両手を包み込むように手に取る新島先輩。
「今日はバンドの練習はお休みだから、遠慮しないで」
「……なんだかすみません。ありがとうございます」
ここまでしてもらっていいのかな、と思いながらも、そうでもしないと本当にこのコンビニから出られないのも事実。
私は申し訳ないなと思いながら、新島先輩とコンビニをあとにした。
「変な足音とか、聞こえない?」
再び帰り道を歩く中、新島先輩に小声で聞かれる。
「はい、大丈夫だと思います」
私がコンビニに寄ったからか、それともやっぱり一人じゃなくなったからか、さっきまでの足音はパタリと消えてなくなっていた。
「それならよかった。まだまっすぐ進んだのでいいのよね?」
「はい」
不思議……。
奏ちゃんと別れてからは、新島先輩を見かけることすら胸が痛んだのに、こんな状況に置かれてるからなのか、今はものすごく安心している。
だけど、そのとき。
──カツカツカツカツッ。
どこからともなく、あの足音が聞こえた。
「せ、先輩……っ」
新島先輩もその足音に気づいたみたいで、周囲をキョロキョロと見回した。
「花梨ちゃん、今の……」
「はい、今のだと思います……」
そして、再び家の方向へと向き直ったとき。
私と新島先輩は、全身に黒い服を身にまとった覆面を被った人が、こちらを向いて立っているのを見た。
「……っ」
“逃がさない”
さっき電話越しに言われた言葉が、耳から離れない。
「花梨ちゃん、こっち……っ!」
私が完全に身動きを取れずにいると、新島先輩は私の手を取って走り出した。
「あ、ちょっと、おいっ!」
だけど、それと同時に聞こえたのは、男の人の叫び声。
覆面を被っているせいなのか、若干くぐもった声になっている。
「花梨ちゃん、次の通りを北に曲がったら、すぐに西側に曲がるからね」
「は、はいっ……」
新島先輩は足が速いみたいで、手を引かれる私はまるで宙を浮いてるみたい。
ものすごい速さで風が顔に当たる。
一向にさっきまで聞こえてた足音は聞こえない。
もうさっきの覆面の男性はいないのかな、と思って、後ろをふり返ろうとしたとき──。
「花梨ちゃん、後ろは見ちゃダメよ!」
「え、はい……っ」
新島先輩の叫ぶような声に、思わず後ろを向くのをやめた。
振り返った先には、ニッコリと、チャームポイントの猫目を細めて笑う新島先輩の姿がある。
「に、新島先輩……っ」
「ちょっと駿ちゃんにお使い頼まれてさ、この近くまで来てたんだけど、そしたら花梨ちゃんがこのコンビニの中に入るのが見えたから来ちゃった」
「あ、そうだったんですね……」
「花梨ちゃんは? 家がこの近くとか?」
「そうなんです。ちょっとフラりと寄っただけで……」
「そうなんだ。なんかさっきからチラチラ外の様子見てるけど、大丈夫? 顔色もあまりよくないよ?」
私があまりに挙動不審だったんだろうな。
新島先輩が心配そうに私の顔色をうかがう。
「え、そうですか?」
「もしかして、花梨ちゃん、何か悩んでる? あたしで良ければ力になるよ?」
「さすがにそれは、申し訳ないです」
「本当に遠慮深いんだから。奏ちゃんと別れたからってあたしたちとも縁を切るだなんて、寂しいな~」
本当に寂しそうに眉を下げる新島先輩。
確かに奏ちゃんと別れてから、Wild Wolfのメンバーとは疎遠になってるけれど。別にそういうつもりじゃなかったんだけどなぁ。
「で、何かあったの?」
「実は……」
私は新島先輩の厚意に甘えて、そこでようやく今、誰かにあとをつけられてるかも知れないことを打ち明けた。
「え、マジで!? ヤバくない? それ」
「はい……。少し前に無言電話もよくかかってきてて、私の予想では多分同じ人なんじゃないかなぁと思うんですけど……」
「そっかぁ。一人で心細かったね。でも大丈夫、こっから先はあたしもいるから。一緒に帰れば大丈夫だよ」
私の両手を包み込むように手に取る新島先輩。
「今日はバンドの練習はお休みだから、遠慮しないで」
「……なんだかすみません。ありがとうございます」
ここまでしてもらっていいのかな、と思いながらも、そうでもしないと本当にこのコンビニから出られないのも事実。
私は申し訳ないなと思いながら、新島先輩とコンビニをあとにした。
「変な足音とか、聞こえない?」
再び帰り道を歩く中、新島先輩に小声で聞かれる。
「はい、大丈夫だと思います」
私がコンビニに寄ったからか、それともやっぱり一人じゃなくなったからか、さっきまでの足音はパタリと消えてなくなっていた。
「それならよかった。まだまっすぐ進んだのでいいのよね?」
「はい」
不思議……。
奏ちゃんと別れてからは、新島先輩を見かけることすら胸が痛んだのに、こんな状況に置かれてるからなのか、今はものすごく安心している。
だけど、そのとき。
──カツカツカツカツッ。
どこからともなく、あの足音が聞こえた。
「せ、先輩……っ」
新島先輩もその足音に気づいたみたいで、周囲をキョロキョロと見回した。
「花梨ちゃん、今の……」
「はい、今のだと思います……」
そして、再び家の方向へと向き直ったとき。
私と新島先輩は、全身に黒い服を身にまとった覆面を被った人が、こちらを向いて立っているのを見た。
「……っ」
“逃がさない”
さっき電話越しに言われた言葉が、耳から離れない。
「花梨ちゃん、こっち……っ!」
私が完全に身動きを取れずにいると、新島先輩は私の手を取って走り出した。
「あ、ちょっと、おいっ!」
だけど、それと同時に聞こえたのは、男の人の叫び声。
覆面を被っているせいなのか、若干くぐもった声になっている。
「花梨ちゃん、次の通りを北に曲がったら、すぐに西側に曲がるからね」
「は、はいっ……」
新島先輩は足が速いみたいで、手を引かれる私はまるで宙を浮いてるみたい。
ものすごい速さで風が顔に当たる。
一向にさっきまで聞こえてた足音は聞こえない。
もうさっきの覆面の男性はいないのかな、と思って、後ろをふり返ろうとしたとき──。
「花梨ちゃん、後ろは見ちゃダメよ!」
「え、はい……っ」
新島先輩の叫ぶような声に、思わず後ろを向くのをやめた。
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