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第5章
黒幕と突きつけられる真実(1)
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それ以来、本当にあの非通知の電話はパタリとかかってこなくなった。
自分の知ってる人の仕業かもと思ってただけに、学校に登校するのも少しの不安はあった。けれど、もうすでに三学期が始まって一週間が経とうとしているけれど、変わった様子は全く感じられなかった。
ただの取り越し苦労だったならいいんだけど……。
しかし、このまま何事もなく終わるのかと思っていた中、事態は突然変化した。
──カツカツ。
「……え?」
いつかも聞いた、奇妙な足音に思わずふり返る。
あのクリスマスイブの夜と同じように、誰かにつけられているような足音が後ろから聞こえたんだ。
今日は塾はないんだけど、クラス委員長の集まりで遅くなってしまった。
すっかり日の暮れてしまった帰り道を一人急いでいたところでの出来事だったから、一層気味が悪く感じてしまう。
恐る恐るふり返ってみるけど誰もいない。それだけに不安だけが先走る。
とりあえず自分を落ち着かせて歩き出すけれど──。
──カツッ、カツッ。
それと同時に、私の歩く速度と同じくらいのペースで足音が響く。
やっぱり誰かいる……!
このまま家に帰ってしまえば、この“誰か”に家について来られてしまうし、どうしよう……。
腕時計を見れば、時刻は17時45分。
この前は偶然バス道でお父さんに会ったからよかったけれど、今日は偶然お父さんに会うにはまだ時間が早すぎる。
そのとき、手に提げてたカバンの中に入っていたスマホの画面が光っていることに気づく。
着信:非通知
ゴクンと生唾を呑み込む。
直感で、この非通知の相手と足音の主は、同一人物のような気がしたから。
本当に直感だから、何の根拠もないのだけれど。
誰が何の目的でこんな嫌がらせをしてきているのかは、わからない。
「……もしもし」
一瞬無視するか迷ったけれど、何か犯人についてわかるかもしれないと思い、電話に出てみることにした。
もし同一人物だったとして、この現場を見られているのなら、無視すればそれも見られていることになるのだから。
『……』
やっぱり、無言。
しばらく様子を見ても、全く相手からはしゃべりはじめる気配を感じられず、通話を終了しようとしたとき……。
『…………逃がさない、岸本花梨』
聞こえてきたのは、以前と同じボイスチェンジャーで加工されたような機械的な低い声。
「……っ」
殺気を帯びたような声に、思わず恐怖にゾクゾクと身震いする。そのときにはすでに電話は切れていて、ツーツーと無機質な音が響いているだけだった。
逃がさない、って。どういうこと……?
なんだか怖くなって、バス道にあったコンビニまで走ることにした。
人のいるところにいれば、大丈夫だろうと踏んで。
──カッカッカッカッ。
私を追いかけるかのように早くなる足音。
足がもつれそうになりながらも走って、私はようやく見えてきたコンビニの中に駆け込んだ。
コンビニの中に入ると、一気に日常に戻って来たような錯覚にとらわれる。
穏やかに流れる時の中、レジに並ぶ人や雑誌を置いてあるコーナーで立ち読みをしている学生とか。それらの光景が、一気にさっきまでの恐怖から私を引き剥がしてくれた。
一番外の様子がよく見える雑誌売り場で立ち読みをするふりをして外を見るけれど、誰も怪しい気配を持った人がこのコンビニに近づいて来る様子はない。
もしかして、逃げ切れた……?
目の前のバス道は、いつもお父さんの乗り降りするバス停のある通りだ。
だから、お父さんが通りかかるのを待って、一緒に帰るのはどうだろう?
あのときも、お父さんと会った瞬間に足音は消えてなくなったし……。
「もしかして、花梨ちゃん……?」
そのとき、そんな女性の声とともに背後から誰かに私の肩にポンと手を乗せられた。
さっきの今だということもありびくりと肩を震わせてしまった。
自分の知ってる人の仕業かもと思ってただけに、学校に登校するのも少しの不安はあった。けれど、もうすでに三学期が始まって一週間が経とうとしているけれど、変わった様子は全く感じられなかった。
ただの取り越し苦労だったならいいんだけど……。
しかし、このまま何事もなく終わるのかと思っていた中、事態は突然変化した。
──カツカツ。
「……え?」
いつかも聞いた、奇妙な足音に思わずふり返る。
あのクリスマスイブの夜と同じように、誰かにつけられているような足音が後ろから聞こえたんだ。
今日は塾はないんだけど、クラス委員長の集まりで遅くなってしまった。
すっかり日の暮れてしまった帰り道を一人急いでいたところでの出来事だったから、一層気味が悪く感じてしまう。
恐る恐るふり返ってみるけど誰もいない。それだけに不安だけが先走る。
とりあえず自分を落ち着かせて歩き出すけれど──。
──カツッ、カツッ。
それと同時に、私の歩く速度と同じくらいのペースで足音が響く。
やっぱり誰かいる……!
このまま家に帰ってしまえば、この“誰か”に家について来られてしまうし、どうしよう……。
腕時計を見れば、時刻は17時45分。
この前は偶然バス道でお父さんに会ったからよかったけれど、今日は偶然お父さんに会うにはまだ時間が早すぎる。
そのとき、手に提げてたカバンの中に入っていたスマホの画面が光っていることに気づく。
着信:非通知
ゴクンと生唾を呑み込む。
直感で、この非通知の相手と足音の主は、同一人物のような気がしたから。
本当に直感だから、何の根拠もないのだけれど。
誰が何の目的でこんな嫌がらせをしてきているのかは、わからない。
「……もしもし」
一瞬無視するか迷ったけれど、何か犯人についてわかるかもしれないと思い、電話に出てみることにした。
もし同一人物だったとして、この現場を見られているのなら、無視すればそれも見られていることになるのだから。
『……』
やっぱり、無言。
しばらく様子を見ても、全く相手からはしゃべりはじめる気配を感じられず、通話を終了しようとしたとき……。
『…………逃がさない、岸本花梨』
聞こえてきたのは、以前と同じボイスチェンジャーで加工されたような機械的な低い声。
「……っ」
殺気を帯びたような声に、思わず恐怖にゾクゾクと身震いする。そのときにはすでに電話は切れていて、ツーツーと無機質な音が響いているだけだった。
逃がさない、って。どういうこと……?
なんだか怖くなって、バス道にあったコンビニまで走ることにした。
人のいるところにいれば、大丈夫だろうと踏んで。
──カッカッカッカッ。
私を追いかけるかのように早くなる足音。
足がもつれそうになりながらも走って、私はようやく見えてきたコンビニの中に駆け込んだ。
コンビニの中に入ると、一気に日常に戻って来たような錯覚にとらわれる。
穏やかに流れる時の中、レジに並ぶ人や雑誌を置いてあるコーナーで立ち読みをしている学生とか。それらの光景が、一気にさっきまでの恐怖から私を引き剥がしてくれた。
一番外の様子がよく見える雑誌売り場で立ち読みをするふりをして外を見るけれど、誰も怪しい気配を持った人がこのコンビニに近づいて来る様子はない。
もしかして、逃げ切れた……?
目の前のバス道は、いつもお父さんの乗り降りするバス停のある通りだ。
だから、お父さんが通りかかるのを待って、一緒に帰るのはどうだろう?
あのときも、お父さんと会った瞬間に足音は消えてなくなったし……。
「もしかして、花梨ちゃん……?」
そのとき、そんな女性の声とともに背後から誰かに私の肩にポンと手を乗せられた。
さっきの今だということもありびくりと肩を震わせてしまった。
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