イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~

美和優希

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8.エピローグ

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「ったく、変なところで紗和は鋭いんだから」


 亮也は少し決まりが悪そうに笑うと、照れ臭そうに口を開く。


「まぁ、紗和のことだから、変な誤解をされたら困るから言っとくけどさ。紗和とまた一緒に過ごせるってわかってからずっと、もし紗和の記憶が戻ったら、今日連れてったところに連れてってやりたいって考えてたんだ。婚約指輪は前々から紗和に似合いそうだと目をつけてた店があったし、もし記憶が戻ったらすぐにでもプロポーズしたいって思ってたから、ある程度の目星もつけていたんだ」

「そうなの?」


 まさか私が記憶を取り戻す前から、いつか記憶を取り戻すことを信じてそんなことを考えてくれていたなんて思わなかった。


「あ、でも勘違いするなよ。俺は紗和の記憶がたとえ戻らなかったとしても、やっぱり紗和が好きで、いつか一緒になれたらなとは思ってたんだから」

「……えぇえっ!?」


 さらに亮也が思いがけないことを言ってきて、思わずドキドキするのと同時に、浮かれたような気持ちになってしまう。

 だってそれって……。


「それって、亮也は私が何も思い出せなかったとしても、それでも私と恋人同士になって、プロポーズしてくれたってこと?」


 もし私の記憶が戻ってなかったら私の恋はどうなっていたんだろうとは、記憶が戻ってからも何度か疑問に思ったことはあった。

 もしかしたら、亮也は昔の彼との思い出を持ち合わせた私がいいと思っているのかもしれないし……。

 だけど亮也は、一瞬でも私がそう思ってしまったことを申し訳なく感じてしまうくらいに、真剣な表情でこう告げたのだ。


「当たり前だろ? どっちにしたって紗和にかわりないんだから。紗和が俺のことを思い出す前は、どうやってまた紗和を落とそうかそればかり考えてた。そのくらい再会したあとのきみも魅力的だったよ」

「本当に……?」


 まさかそんな言葉までもらえるなんて、思わなかった。

 でも本当なら、すごく嬉しい。


「ああ。もちろんだ」


 至近距離で見つめ合ったのち、自然に私たちは唇を重ねていた。

 それは瞬時に深い濃厚なキスに変わり、すぐに私の頭は蕩けてしまいそうになる。

 時折、自分のとは思えないくらいに甘い声が口から漏れて、恥ずかしくなった。


 この部屋に入ったときに緊張していたのが嘘みたいに、幾度となく貪るようなキスを繰り返しながら、ベッドの方へと二人転がり込んだ。


「あ……っ」

 そして、バスローブの中に亮也の大きな手が滑り込んできて、ビクッと大きく反応した。


「可愛い」

 そんな私を見て、クスリと笑う亮也。

 みるみるうちに私の身にまとっていたものは取られて、素肌がさらされる。

 行為が深まるにつれ、亮也が身にまとっていたバスローブを脱ぎ捨てたとき、私は思わず彼の身体のある部分に目を奪われた。


「亮也、それ……」

「……ああ」


 お互いに息は切らしているものの、一旦頭が冷静に戻る。

 亮也も、私の目線の先を追って、納得したようにうなずいた。


 亮也の胸元や、左腕に数ヵ所、過去に大きな傷を負ったような痕があったのだ。


 恐らくそれは、私が高校生のときに私を守ってくれたときに負った傷跡だ。


「ごめんなさい。私のせいで、こんなに痕になってるなんて……」


 記憶が戻ってから、純粋にあのときの彼が無事だったことに安堵していた。

 だけど、いくら日頃は服で隠れているとはいえ、今も残る痕が残っていたのだ。


 私がその傷痕に指先を触れると、亮也はその手を取り、そっと口づける。


「紗和が気にすることじゃない。この傷痕のおかげで、今、紗和とこうすることができているんだから」

「……そうだったね。でも、ごめんね」


 本当に、亮也の言う通りだ。

 もしあのとき、私が亮也に助けられていなかったら、私は今ここにいなかったかも知れないんだ。


「紗和。こういうときは、ごめんじゃなくて?」


 自分のことを犠牲にしてまで、命がけで私を守ってくれた亮也には感謝してもしきれない。


「……ありがとう」


 思わず溢れた涙を、亮也が舐め取ってくれる。

 少し落ち着いた私の胸元にあるペンダントトップを手に取ると、亮也は彼の胸元にずっとつけられていたそれとを、パズルのピースを重ねるように嵌め込んだ。


 “Love is forever.”


 そして、重ね合わせたことでひとつの文章になった言葉に、思わず止まっていた涙がまた溢れるのを感じる。

 亮也はそんな私に、まるで誓いの言葉のように言ったのだ。


「これからは何があっても離さないから。一緒に幸せになろう」

「うん」


 そして、お互いに吸い寄せられるように再び深いキスを交わした。

 今度こそ、どんどん亮也によって私の身も心も溶かされていき、私たちは夜が更けるまで夢中で抱き合っていた。

 二人の間にできてしまった十年分の空白を埋めるように、強く──。
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