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7.繋がる想い
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「や。今日茉友香が木下と会うって言ってたから、これまでのことを木下に謝ろうと思って……」
「はぁ? あんたと鉢合わせたら嫌だから、今日はここに来るなって言ったのに!」
顔を合わせた途端、言い合いを始めてしまった茉友香と福田くんを慌てて止めに入る。
「ちょっと、茉友香!」
「ごめんね、紗和。広治の奴、紗和に秘書は辞めた方がいいとか、彼といると傷つくとか言って、紗和のことを泣かせたんでしょ?」
茉友香はくるりとこちらを振り返って謝ってくる。
「だから、そのことを謝りに来たんだって! 木下、この前は本当にすまなかった。俺、副社長が木下の元彼だって気づいてたから。木下の記憶も戻ってなさそうなのに、何か副社長が企んでるんだと思って、本当に心配だったんだ」
私に向かって下げられる福田くんの頭を見て、やっぱりと思った。
記憶を思い出すまでは、どうして副社長の秘書を辞めろと言われたのかわからなくてすごく嫌な気持ちになった。
けれど、記憶を取り戻した今ならわかる。
福田くんのあの発言は、本当に私のことを心配してのものだったんだということが。
「大丈夫だよ、福田くん。全部思い出して、何となくそうだったのかなって思ってたから」
今まで高校三年生のときのみ同じクラスだったんだと思っていた福田くんとは、実は取り戻した記憶の中では、高校一年生のときも同じクラスだった。
記憶をなくしてしまっていたせいで、今まで思い出せなかったけど、私は高校一年生のとき、実は福田くんに告白をされていた。
当時、亮也と付き合っていた私はもちろん断っていたし、それ以後は気まずさから話さなくなっていた。記憶をなくしてからは、福田くんは全くそんな素振りを見せなかったことから、余計に高校一年生のときの福田くんの記憶は残らなかったのかもしれない。
ただ、思えば昔から福田くんは、何かと私のことを気にかけてくれていたなと思う。
私が思っていた以上に、高校時代、福田くんは良き友達として茉友香とともにそばに居てくれたのかもしれない。
「それなら、いいんだけど。無神経なこと言ってごめんな」
私の言葉を聞いて、福田くんは少し安堵したように笑う。
正直、いろいろ思い出してからどんな顔をして福田くんと会えばいいかわからなかったけど、今までと変わらない彼の様子に内心ホッとしていた。
そんな中、茉友香が私と福田くんの間に入って一喝した。
「ちょっと、紗和! 広治をかばう必要ないから! だってこいつ、紗和と二人で飲みに行く口実を作るために私をダシに使ったんでしょ?」
「え?」
茉友香を見ると、福田くんの首根っこをつかんで彼を睨み付けている。
福田くんは引きつったような顔をして、茉友香から目をそらしていた。
「二人が飲みに行ったとき、私は当日急に学会に出るための出張が入ってキャンセルしたことになってたらしいけど、普通に考えてあり得ないでしょ? 学会なんて、前もって日程が決まっているものばかりなのに」
今まで気にも留めてなかったけど、言われてみればそうなのかもしれない……。
茉友香の言ってることは間違ってないのだろう。福田くんはまたもや「すまん、木下」と言って両手を顔の前で合わせて深く頭を下げたのだから。
「紗和を騙して勝手に連れ出すし、泣かせるし、こいつは有罪のままでいいの!」
嘘をつかれたことに関しては、あのとき茉友香に会えると思って舞い上がってた気持ちを踏みにじられたわけだから、決して気持ちのいいものではない。
けれど、そうまでして、私と副社長のことが心配で、無理やりでも私に忠告しようとしてくれたんだと思うと、私には福田くんのことを責められない。
まぁ、茉友香が怒る気持ちもわからなくもないから、どうしていいかわからず、何も言えなかった。
「あんたさ、コソコソ紗和を夜連れ出して、心配してるフリして本当は下心があったんじゃないでしょうね」
「人聞きの悪いことを言うなよな? 俺は高校生のとき、木下の良い男友達になるって決めたんだ。そんなことしねーよ」
「紗和本人の前で何の宣言してんのよ」
「だああ! 逆の立場になってみろ、茉友香だって木下のこと心配しただろ?」
ムキになって話す福田くんの顔は、だんだん耳まで赤くなっていく。
そんな福田くんに反して、茉友香は至って冷静に返す。
「そりゃ心配はするけど、嘘ついたり泣かしたりはしないわよ?」
「だから、それは悪かったって!」
目の前で言い合う二人の姿は昔から全然変わってなくて、懐かしさから思わず笑みが漏れる。
私が笑ったことで、茉友香も福田くんもおかしそうに笑った。そして、福田くんは私の肩をポンと手で叩いて口を開く。
「木下、本当に今までごめんな。今度こそあいつと幸せになれよ」
「いいよ、もう。ありがとう」
「じゃあ俺、行くわ。今日は二人で楽しんで来いよ。今度は三人で飲みに行こうな!」
福田くんは明るい笑顔で言うと、足早にその場をあとにした。
小さくなる背中を見送ってから時間を確認すると、いつの間にかお店の予約時間になっていた。
「紗和、入ろっか。今日はよりが戻った彼との話、いっぱい話聞かせてね!」
「うん」
店内に足を踏み入れると、イタリアンのイメージにぴったりな、オシャレな感じの空間に迎えられる。
席に案内されて料理とお酒を頼むと、茉友香とはそのあとは、いろんな話で盛り上がった。
茉友香の話を聞いて、お兄ちゃんや亮也、園美さんだけでなくこんなにずっと近くにいてくれた友達も私のために動いてくれてたんだと知って、改めて私は幸せ者だと感じた。
「はぁ? あんたと鉢合わせたら嫌だから、今日はここに来るなって言ったのに!」
顔を合わせた途端、言い合いを始めてしまった茉友香と福田くんを慌てて止めに入る。
「ちょっと、茉友香!」
「ごめんね、紗和。広治の奴、紗和に秘書は辞めた方がいいとか、彼といると傷つくとか言って、紗和のことを泣かせたんでしょ?」
茉友香はくるりとこちらを振り返って謝ってくる。
「だから、そのことを謝りに来たんだって! 木下、この前は本当にすまなかった。俺、副社長が木下の元彼だって気づいてたから。木下の記憶も戻ってなさそうなのに、何か副社長が企んでるんだと思って、本当に心配だったんだ」
私に向かって下げられる福田くんの頭を見て、やっぱりと思った。
記憶を思い出すまでは、どうして副社長の秘書を辞めろと言われたのかわからなくてすごく嫌な気持ちになった。
けれど、記憶を取り戻した今ならわかる。
福田くんのあの発言は、本当に私のことを心配してのものだったんだということが。
「大丈夫だよ、福田くん。全部思い出して、何となくそうだったのかなって思ってたから」
今まで高校三年生のときのみ同じクラスだったんだと思っていた福田くんとは、実は取り戻した記憶の中では、高校一年生のときも同じクラスだった。
記憶をなくしてしまっていたせいで、今まで思い出せなかったけど、私は高校一年生のとき、実は福田くんに告白をされていた。
当時、亮也と付き合っていた私はもちろん断っていたし、それ以後は気まずさから話さなくなっていた。記憶をなくしてからは、福田くんは全くそんな素振りを見せなかったことから、余計に高校一年生のときの福田くんの記憶は残らなかったのかもしれない。
ただ、思えば昔から福田くんは、何かと私のことを気にかけてくれていたなと思う。
私が思っていた以上に、高校時代、福田くんは良き友達として茉友香とともにそばに居てくれたのかもしれない。
「それなら、いいんだけど。無神経なこと言ってごめんな」
私の言葉を聞いて、福田くんは少し安堵したように笑う。
正直、いろいろ思い出してからどんな顔をして福田くんと会えばいいかわからなかったけど、今までと変わらない彼の様子に内心ホッとしていた。
そんな中、茉友香が私と福田くんの間に入って一喝した。
「ちょっと、紗和! 広治をかばう必要ないから! だってこいつ、紗和と二人で飲みに行く口実を作るために私をダシに使ったんでしょ?」
「え?」
茉友香を見ると、福田くんの首根っこをつかんで彼を睨み付けている。
福田くんは引きつったような顔をして、茉友香から目をそらしていた。
「二人が飲みに行ったとき、私は当日急に学会に出るための出張が入ってキャンセルしたことになってたらしいけど、普通に考えてあり得ないでしょ? 学会なんて、前もって日程が決まっているものばかりなのに」
今まで気にも留めてなかったけど、言われてみればそうなのかもしれない……。
茉友香の言ってることは間違ってないのだろう。福田くんはまたもや「すまん、木下」と言って両手を顔の前で合わせて深く頭を下げたのだから。
「紗和を騙して勝手に連れ出すし、泣かせるし、こいつは有罪のままでいいの!」
嘘をつかれたことに関しては、あのとき茉友香に会えると思って舞い上がってた気持ちを踏みにじられたわけだから、決して気持ちのいいものではない。
けれど、そうまでして、私と副社長のことが心配で、無理やりでも私に忠告しようとしてくれたんだと思うと、私には福田くんのことを責められない。
まぁ、茉友香が怒る気持ちもわからなくもないから、どうしていいかわからず、何も言えなかった。
「あんたさ、コソコソ紗和を夜連れ出して、心配してるフリして本当は下心があったんじゃないでしょうね」
「人聞きの悪いことを言うなよな? 俺は高校生のとき、木下の良い男友達になるって決めたんだ。そんなことしねーよ」
「紗和本人の前で何の宣言してんのよ」
「だああ! 逆の立場になってみろ、茉友香だって木下のこと心配しただろ?」
ムキになって話す福田くんの顔は、だんだん耳まで赤くなっていく。
そんな福田くんに反して、茉友香は至って冷静に返す。
「そりゃ心配はするけど、嘘ついたり泣かしたりはしないわよ?」
「だから、それは悪かったって!」
目の前で言い合う二人の姿は昔から全然変わってなくて、懐かしさから思わず笑みが漏れる。
私が笑ったことで、茉友香も福田くんもおかしそうに笑った。そして、福田くんは私の肩をポンと手で叩いて口を開く。
「木下、本当に今までごめんな。今度こそあいつと幸せになれよ」
「いいよ、もう。ありがとう」
「じゃあ俺、行くわ。今日は二人で楽しんで来いよ。今度は三人で飲みに行こうな!」
福田くんは明るい笑顔で言うと、足早にその場をあとにした。
小さくなる背中を見送ってから時間を確認すると、いつの間にかお店の予約時間になっていた。
「紗和、入ろっか。今日はよりが戻った彼との話、いっぱい話聞かせてね!」
「うん」
店内に足を踏み入れると、イタリアンのイメージにぴったりな、オシャレな感じの空間に迎えられる。
席に案内されて料理とお酒を頼むと、茉友香とはそのあとは、いろんな話で盛り上がった。
茉友香の話を聞いて、お兄ちゃんや亮也、園美さんだけでなくこんなにずっと近くにいてくれた友達も私のために動いてくれてたんだと知って、改めて私は幸せ者だと感じた。
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