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3.いきなり急接近!?
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驚きとドキドキと、何が起こっているのかわからなくて混乱する気持ちと、いろんな気持ちがごじゃまぜになって、わけがわからない。
でも、不思議と副社長の温もりに懐かしさに似た安心感を覚えた。
「……って、何やってんだ、俺は……」
そしてすぐ、そんな呟き声とともに、私を包み込んでいた温もりは離れていく。
心臓はバクバクとすごい音を立てているものの、一先ずホッとする。
とりあえず今、起きるのはまずいよね?
だって、これじゃあ私が寝たフリをして副社長のことを覗き見ていたみたいに思われてしまう。それに近いことをしていることには間違いないのだけど。
せめて副社長がこの部屋から出て行ってからにしないと……。
完全に起きるタイミングを逃してしまった。
副社長がリビングを出ていったら、様子を見てその隙に移動するしかないのだろう。
だけど、それは浅はかな考えに過ぎなかったようだ。
「とりあえずここに寝かせておくわけにはいかないし、連れてくか」
再び副社長の声が耳に届いた途端、グッと私の身体に力が加えられて、ふわりと宙に浮く感覚が走る。
え……!?
そっと薄目を開けると、私が副社長のことを見上げるような形で、前方を見る副社長の顔が視界に映った。
副社長に私が起きていることを気づかれたらまずいので、すぐに寝たフリを続行する。
今自分の身に何が起こっているのか、それはパニックを起こしている私の頭でも容易にわかった。
私は今、副社長にお姫様抱っこをされているんだ。
意識して呼吸しないと、思わず息を止めてしまいそうなくらいに緊張する。
息を止めても、呼吸がわざとらしくなっても、副社長に起きていることがバレてしまうかもしれないのに……。
そうしているうちにリビングを出るドアの開閉音のあとに続いて、廊下を歩く音と別の部屋のドアを開く音が聞こえた。
それから私はほどよい跳ね返りのあるふかふかのところに下ろされた。
ここ数週間のうちに覚えてしまった寝心地の良い場所は、きっと副社長が私に与えてくれたふかふかなベッドだ。
副社長は私の上に優しく掛け布団をかけると、私の頬を撫でるように数回触れた。
思わずゾクッとしてしまって、身体がビクついてしまう。
「……まさか、起きたか?」
私が反応してしまったことに、副社長自身も驚いているような声が聞こえる。
だけど、ここまで寝たフリを貫いてきたのだから、この際もう寝ていることにしてしまおう。
ここで起きたところで、副社長とどんな顔して会えばいいのかわからないのだから。
少しして、小さく息を吐く音が聞こえる。
私が寝てると思ってくれたのかな……?
「ったく、無防備なお前が悪いんだからな?」
そんな声とともに頭を撫でられて、不意に額に柔らかいものが押し当てられた。
私の顔には少し、副社長の髪の毛の先が触れている。
まさか、キス……!?
そう頭の中で認識したときには私の顔のすぐそばまで迫ってきていた温もりは私から離れていて、次の瞬間にはパチンと部屋の電気が消された。
パタンとドアが閉まる音と副社長の足音が遠ざかる音を聞いたあと、暗闇になった部屋の中で目を開けて、もうそこには何もないのに熱だけがいつまでも残る額に手を触れる。
一体、どういうこと……?
副社長に抱きしめられて、お姫様抱っこされて、額にキス……、されたんだよね。
お姫様抱っこは、うたた寝をしてしまった私をここまで運ぶためにやむを得ずしたことだとしても、他は……?
無防備な私が悪いって言ってたけれど、無防備に寝てたから襲ってやったという感じではなかった。
だって、副社長の手つきはものすごく優しかったから。
ドキドキしたけれど不思議なくらいに怖くなくて、むしろ副社長の熱は私にとってホッとする温もりだった。
でも、何で副社長は私にそんなことをしたのだろう?
副社長がまだ出会って間もない私のことを好きだなんて、到底考えられない。
課長くらいに美人なら一目惚れされたと考えることもできるのかもしれないけれど、私はどちらかといわなくても地味な部類だ。
何だか思いがけないハプニング続きで、すっかり目が覚めてしまった。
眠れないからといって、混乱する頭でいくら考えてもこたえなんて出るわけがない。ぐるぐると同じことを自問自答しているうちに、どんどんどんどん夜は更けていったのだった。
でも、不思議と副社長の温もりに懐かしさに似た安心感を覚えた。
「……って、何やってんだ、俺は……」
そしてすぐ、そんな呟き声とともに、私を包み込んでいた温もりは離れていく。
心臓はバクバクとすごい音を立てているものの、一先ずホッとする。
とりあえず今、起きるのはまずいよね?
だって、これじゃあ私が寝たフリをして副社長のことを覗き見ていたみたいに思われてしまう。それに近いことをしていることには間違いないのだけど。
せめて副社長がこの部屋から出て行ってからにしないと……。
完全に起きるタイミングを逃してしまった。
副社長がリビングを出ていったら、様子を見てその隙に移動するしかないのだろう。
だけど、それは浅はかな考えに過ぎなかったようだ。
「とりあえずここに寝かせておくわけにはいかないし、連れてくか」
再び副社長の声が耳に届いた途端、グッと私の身体に力が加えられて、ふわりと宙に浮く感覚が走る。
え……!?
そっと薄目を開けると、私が副社長のことを見上げるような形で、前方を見る副社長の顔が視界に映った。
副社長に私が起きていることを気づかれたらまずいので、すぐに寝たフリを続行する。
今自分の身に何が起こっているのか、それはパニックを起こしている私の頭でも容易にわかった。
私は今、副社長にお姫様抱っこをされているんだ。
意識して呼吸しないと、思わず息を止めてしまいそうなくらいに緊張する。
息を止めても、呼吸がわざとらしくなっても、副社長に起きていることがバレてしまうかもしれないのに……。
そうしているうちにリビングを出るドアの開閉音のあとに続いて、廊下を歩く音と別の部屋のドアを開く音が聞こえた。
それから私はほどよい跳ね返りのあるふかふかのところに下ろされた。
ここ数週間のうちに覚えてしまった寝心地の良い場所は、きっと副社長が私に与えてくれたふかふかなベッドだ。
副社長は私の上に優しく掛け布団をかけると、私の頬を撫でるように数回触れた。
思わずゾクッとしてしまって、身体がビクついてしまう。
「……まさか、起きたか?」
私が反応してしまったことに、副社長自身も驚いているような声が聞こえる。
だけど、ここまで寝たフリを貫いてきたのだから、この際もう寝ていることにしてしまおう。
ここで起きたところで、副社長とどんな顔して会えばいいのかわからないのだから。
少しして、小さく息を吐く音が聞こえる。
私が寝てると思ってくれたのかな……?
「ったく、無防備なお前が悪いんだからな?」
そんな声とともに頭を撫でられて、不意に額に柔らかいものが押し当てられた。
私の顔には少し、副社長の髪の毛の先が触れている。
まさか、キス……!?
そう頭の中で認識したときには私の顔のすぐそばまで迫ってきていた温もりは私から離れていて、次の瞬間にはパチンと部屋の電気が消された。
パタンとドアが閉まる音と副社長の足音が遠ざかる音を聞いたあと、暗闇になった部屋の中で目を開けて、もうそこには何もないのに熱だけがいつまでも残る額に手を触れる。
一体、どういうこと……?
副社長に抱きしめられて、お姫様抱っこされて、額にキス……、されたんだよね。
お姫様抱っこは、うたた寝をしてしまった私をここまで運ぶためにやむを得ずしたことだとしても、他は……?
無防備な私が悪いって言ってたけれど、無防備に寝てたから襲ってやったという感じではなかった。
だって、副社長の手つきはものすごく優しかったから。
ドキドキしたけれど不思議なくらいに怖くなくて、むしろ副社長の熱は私にとってホッとする温もりだった。
でも、何で副社長は私にそんなことをしたのだろう?
副社長がまだ出会って間もない私のことを好きだなんて、到底考えられない。
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何だか思いがけないハプニング続きで、すっかり目が覚めてしまった。
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