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3.いきなり急接近!?
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木曜日の今日は副社長は夜遅くなるらしく、夕食はいらないと言われていた。
副社長は時々こんな風に仕事絡みの飲み会や接待があるらしく、夕食が要らなくなる日があるんだそうだ。
接待なら秘書も参加しないといけないのかなと思ったけれど、副社長からは夜も遅くなるから参加しなくていいと言われている。
むしろ明日も仕事があるんだからゆっくりしてろと副社長は私を気遣うような言葉までかけて、朝出て行った。
私なんかよりも、副社長の方が絶対に疲れも溜まっているだろうというのに……。
副社長の帰りが遅い日でも、私は副社長の帰りを待ってから一緒に夜ご飯を食べていた。だから副社長と暮らし始めてからは初めての一人での夜ご飯だ。
副社長は、帰りが遅い日は先に食べてていいって言ってくれるけど、やっぱりせっかく一緒に住んでるなら一緒に食べたいって思うし……。
お兄ちゃんと住んでたときは、そこまで一緒に食べようとか思わなかったのに、そう思うようになったのは、やっぱり副社長には感謝してもしきれないくらいにお世話になっているからなのだろう。
久しぶりに一人で夜ご飯を食べるのに少し寂しいと思ってしまうのは、少なからず私がここでの生活に馴染んできてるということなのだろう。
夜ご飯を終えてお風呂も済ませたあと、副社長の帰りを待っている間は、いつも行き届かないところの掃除をして過ごした。
副社長には遅くなるから寝てていいと言われていたけれど、やっぱりここに住まわせてもらっている以上は、“おかえりなさい”と言いたいし、それが礼儀のような気がする。
いつもはなかなか出来ない排水溝まで掃除し終えたのが、二十三時を回ったところだった。
まだ副社長は帰って来ない。
先に寝てていいと言ってくれていたくらいだし、もしかしたら深夜過ぎるのかな?
明日は金曜日とはいえ、いつも通りに朝から仕事があるわけだし、あまり遅くなるようなら副社長の身体が心配だ。
やろうと思っていたところは全て掃除し尽くしてしまったので、ダイニングテーブルに座って、少しでも秘書としての仕事のスキルをあげたいと思って買った自己啓発の本を読み進めることにした。
だけど、文字の羅列を目で追ううちに、私は気づいたときにはうつらうつらとうたた寝をしてしまっていたようだ。
どのくらい経ったのだろう?
すぐそばから聞こえたガタンという小さな物音で、私の意識は自分のところに戻ってきた。
不思議と寒くなくて、むしろ暖かささえ感じる。
何となく身体が重くて、まだ頭がボーッとしているのもあって動けなかった。
そのとき、顔を伏せていたダイニングテーブルの上にコトンとグラスが置かれるような音がする。
副社長、帰ってきたのかな?
“おかえりなさい”って言いたいのに、身体が動かない……。
「待っててくれたのは嬉しいけど、こんなところで寝てたら風邪引くだろ」
ふわりと頭を撫でられる感触。
何だか、不思議と落ち着くような感覚だ。
「慣れない環境で毎日頑張ってる疲れでも出たか? 紗和は相変わらず頑張り屋なんだから……」
……えっ?
そのとき、思わず今まで抜け出せなかったまどろみからパッと目覚めた。
今、サワって私のこと呼んだ?
胸がドキドキと大きくざわつく。
今度こそ私は身体を動かそうとしたけれど、結局それは叶わなかった。
さっきみたいに、眠気に抗えずに身体が重く感じるからではない。
「……っ」
私の背中から覆い被さるように、副社長が私のことを彼の大きな両腕で包み込んでいたのだ。
副社長は時々こんな風に仕事絡みの飲み会や接待があるらしく、夕食が要らなくなる日があるんだそうだ。
接待なら秘書も参加しないといけないのかなと思ったけれど、副社長からは夜も遅くなるから参加しなくていいと言われている。
むしろ明日も仕事があるんだからゆっくりしてろと副社長は私を気遣うような言葉までかけて、朝出て行った。
私なんかよりも、副社長の方が絶対に疲れも溜まっているだろうというのに……。
副社長の帰りが遅い日でも、私は副社長の帰りを待ってから一緒に夜ご飯を食べていた。だから副社長と暮らし始めてからは初めての一人での夜ご飯だ。
副社長は、帰りが遅い日は先に食べてていいって言ってくれるけど、やっぱりせっかく一緒に住んでるなら一緒に食べたいって思うし……。
お兄ちゃんと住んでたときは、そこまで一緒に食べようとか思わなかったのに、そう思うようになったのは、やっぱり副社長には感謝してもしきれないくらいにお世話になっているからなのだろう。
久しぶりに一人で夜ご飯を食べるのに少し寂しいと思ってしまうのは、少なからず私がここでの生活に馴染んできてるということなのだろう。
夜ご飯を終えてお風呂も済ませたあと、副社長の帰りを待っている間は、いつも行き届かないところの掃除をして過ごした。
副社長には遅くなるから寝てていいと言われていたけれど、やっぱりここに住まわせてもらっている以上は、“おかえりなさい”と言いたいし、それが礼儀のような気がする。
いつもはなかなか出来ない排水溝まで掃除し終えたのが、二十三時を回ったところだった。
まだ副社長は帰って来ない。
先に寝てていいと言ってくれていたくらいだし、もしかしたら深夜過ぎるのかな?
明日は金曜日とはいえ、いつも通りに朝から仕事があるわけだし、あまり遅くなるようなら副社長の身体が心配だ。
やろうと思っていたところは全て掃除し尽くしてしまったので、ダイニングテーブルに座って、少しでも秘書としての仕事のスキルをあげたいと思って買った自己啓発の本を読み進めることにした。
だけど、文字の羅列を目で追ううちに、私は気づいたときにはうつらうつらとうたた寝をしてしまっていたようだ。
どのくらい経ったのだろう?
すぐそばから聞こえたガタンという小さな物音で、私の意識は自分のところに戻ってきた。
不思議と寒くなくて、むしろ暖かささえ感じる。
何となく身体が重くて、まだ頭がボーッとしているのもあって動けなかった。
そのとき、顔を伏せていたダイニングテーブルの上にコトンとグラスが置かれるような音がする。
副社長、帰ってきたのかな?
“おかえりなさい”って言いたいのに、身体が動かない……。
「待っててくれたのは嬉しいけど、こんなところで寝てたら風邪引くだろ」
ふわりと頭を撫でられる感触。
何だか、不思議と落ち着くような感覚だ。
「慣れない環境で毎日頑張ってる疲れでも出たか? 紗和は相変わらず頑張り屋なんだから……」
……えっ?
そのとき、思わず今まで抜け出せなかったまどろみからパッと目覚めた。
今、サワって私のこと呼んだ?
胸がドキドキと大きくざわつく。
今度こそ私は身体を動かそうとしたけれど、結局それは叶わなかった。
さっきみたいに、眠気に抗えずに身体が重く感じるからではない。
「……っ」
私の背中から覆い被さるように、副社長が私のことを彼の大きな両腕で包み込んでいたのだ。
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