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第5章

そっくりさん(3)

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 すると、女性は拓人の様子に焦ったように声を上げる。


「な訳ないですよねっ!! まさかこんな所にTAKUが居るなんて!!

私すごくファンなんです。あまりにもあなたが似ていたものですから……すみません。

……そっくりさん、ですよね!?」


 女性は拓人の顔をジッと見つめる。



“そっくりさん”

 その言葉に拓人はニッと微笑んだ。


「はい。よく似てるって間違えられるんです」


「ですよねー、あはは。大変失礼しました」


 拓人は内心申し訳ない気持ちに包まれながらも、その場をやり過ごせたことに胸を撫で下ろした。



 桃華の試着室の前に行くと、白いウェディングドレスを着た桃華が姿を現す。



「もっ、桃華……っ!!」


「拓人っ!! ど、どうかな……!?」



 拓人は目の前の桃華に、いつも以上に頬を赤く染める。


「す、すげぇ綺麗……」


「えっ!? た、拓人も、すごくかっこいいよ……」


 お互いにお互いを見て真っ赤になってうつむく2人を見て、係の人がクスクス笑いながら近づいて来る。


「良かったら、お写真撮りますよ」


「えっ!? あ、お願いします」


 拓人は持って来ていたデジタルカメラを手渡す。


 記念撮影を済ませた後、その係の人は桃華に言う。


「彼氏さん、NEVERのTAKUにすごく似てるって言われません? かっこいい彼氏さんでうらやましいです」


 桃華は返事に困り、うつむく。

(似てますねって、本人なんだけど……)


 桃華と係の女性のやり取りを見て、拓人はまたかと思いつつ口を開く。


「ははは、よく間違えられて困るんです。じゃあ桃華、着替えて来いよ」


「え? あ、うん」


 拓人と桃華は係の人にお礼を言うと、逃げるように試着室へと戻った。



 各々着替えを終え、会場を後にする。


 拓人は車に乗り込むなり、安堵ではぁぁ~っと息を吐いた。



「意外とそっくりさんで通るもんなんだな」


「う、うん。ごめんね? 私が試着したいって言ったばかりに……」


 桃華は申し訳なさそうにうつむいた。


「桃華は悪くねぇから。ってか、桃華のドレス姿すごく良かった」


「ほんと!?」


「ああ、誰にも見せたくねぇくらい綺麗だった」


 車が信号待ちで停まり、拓人は真っ直ぐ桃華を見据える。


「だ、誰にもって……」


 桃華は恥ずかしくて、桃の形のビーズクッションに顔を埋める。


拓人はその様子を少しおかしそうに笑う。


「式の日程も決まったし、また一緒にいろいろ決めていこうな」


 拓人の大きな手がフワッと桃華の頭を撫でる。


 桃華はコクンと頷いた。


 こうして一歩一歩着実に、2人の結婚準備は進んでいった。
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