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第5章

拓人の両親(1)

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  ──眩しい朝日が2人の顔を照らす。


 拓人がそっと目を開けると、朝日を浴びようとお構いなしに拓人の腕の中で、すやすや寝息を立てる、愛しい人の寝顔があった。


 無造作に布団から投げ出された桃華の手を取り、指を絡める。


 結婚したら、いつも朝1番にこの光景が見られるのかと思ったら、拓人は幸せを感じた。


 桃華が寝返りを打ち、「んっ」と甘い声を出しながら拓人に抱き着いてきたので、拓人はそっと桃華を抱きしめた。



 幸せ……。


 拓人がそう感じ、再び目を閉じた時だった。



 ──ガチャガチャ。


 ──ドンドンドンドン。


 ──バタバタバタバタ。



(何だ!?)

 拓人は音のする方向へ耳をそばだてる。


 今、この家には拓人と桃華の2人しかいない。


 だけど、それらの騒がしい音は、拓人の家の1階から聞こえたような気がしたから──。


(まさか、泥棒!?)


 拓人は桃華をギュッと抱きしめ、聞き耳を立てる。


 そして、その音はだんだんだんだんこちらに近づいてきて──。





 ──バンッ。



「タクちゃ~んっ!! まだ寝てたの~? 探したじゃないっ!!」


 拓人の部屋のドアを勢い良く開けて飛び込んで来た女性。


 桃華はその騒がしさに目を覚ます。


「ん、拓人……?」


 桃華は目を開け、いきなり入って来た女性に息を呑み、突然上体を起こした拓人の後ろに隠れるようにしがみつく。

(やだ、誰……この人)



 拓人はその女性を睨みつけ、大声を上げた。


「いきなり入って来んじゃねぇよ!! ってか、昼頃にしかこっちに着けねぇって言ってたじゃねぇかっ!!」



(何……? 拓人の知ってる人、なの……?)
 桃華は不安そうに拓人と目の前の女性を見比べる。


 ──腰まで伸びた綺麗なウェーブの髪。綺麗な顔立ちの女性。



「何よ~早く仕事が片付いたから、朝一にタクちゃんとこに駆け付けてあげたのに~! タクちゃん冷た~い」


「うるせぇよ!! いきなり母さんが入って来るからだろ!?

早く来るなら分かった時点で連絡しろっ!! それに、その呼び方もやめろっつったじゃねぇかっ!!」



(え……母さん……!?)
 桃華はもう一度目の前の女性と拓人を見比べる。


 そう言われて見ると、綺麗な目鼻立ちは、どことなく拓人と似ているような気がした。


「拓人?」

 桃華がツンツンと拓人のパジャマの裾を引っ張った。


「あ、ごめんな桃華。朝っぱらから嫌な思いさせちゃってさ……」

 拓人はそっと桃華の頭を撫でる。


「……拓人のお母さんなの?」


「まぁ……。こんなんで本当、申し訳ない」


 桃華はその女性に向けて座り直し、口を開く。


「はっ、はじめまして。白石桃華です。あの、こんな格好ですみません……」


 ピンクのパジャマ姿の桃華を見て、拓人の母親は目を輝かせた。
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