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第3章

予兆の連鎖(3)

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「NEVERもここで撮影だって聞いてぇ、NEVERの皆さんにTAKUは外の方へ出て行ったって聞いたからぁ、探したんですよぉ~?」

 そんな拓人の気も知らないで甘ったるい声を響かせるリナ。


「そうなんですか。奇遇ですね。では、俺はこの辺で失礼します」

 淡々と返事を返し、拓人は逃げるようにその場を後にしようとした。


「待って下さぁいっ!!」



 ──ぎゅうぅぅ。


 拓人がその場から数歩歩いたところで、リナに後ろから抱き着かれた。


「……あの、離してもらえませんか?」

 拓人は動じることなく、冷静に言い放つ。


 リナは全く動く素振りを見せず、拓人に抱き着く力を強めた。


「あの……聞こえてます?」


「……好きです」


 リナの甘い声が辺りに響く。


「リナの気持ち、気づいてるんでしょう? TAKUが好き」


 拓人は仕方なく自分の身体に巻き付けられた、華奢な白い腕を掴み、振りほどいた。


「……悪いけど、リナさんの気持ちには応えられない」


「なんでぇ……? リナより一般女性を選ぶのぉ?」


「え……っ?」


「リナ知ってるんだよぉ。TAKUに好きな子居るのぉ。いつも見てるんだもん」


「そう。だったら話は早い。とにかく、俺はリナさんの気持ちには応えられないから。本当ごめん」


「やだぁ~」


 拓人の手により振りほどかれたリナは、再び拓人の腕に絡み付き、柔らかい胸を押し付けた。


「付き合うのが無理なら、1回だけでいいからぁ~、ねっ?」


「いや……、そういうの、正直困るんだけど……」


 何となくリナの求めていることに感づいた拓人は、苛立ちさえ覚えた。


「ここならぁ~誰も来ないしぃ~」


 リナはさっきからチラチラ見えていた、白い谷間をあらわにさせる。


「お願~い……抱いて? TAKU……」


 リナの言葉にも行動にも、拓人は苛立ちが抑え切れなくなり、リナの両肩を掴み思いっ切り突き放して声を荒げた。


「それ以上やったら、いい加減、俺も怒るよ?」


「なによぉ。TAKUのバカぁ~」


 リナは潤んだ瞳で泣き出してしまった。


「……マジで勘弁してくれよ」


 拓人はそんなリナに冷たく言い放ち、その場に立ち尽くすリナから逃げ去った。


「……なによぉ。リナ、絶対あきらめないんだからぁ……」


 リナは遠ざかる拓人を寂しげに見つめた。





 コテージに戻った拓人は、NEVER5人の和室に入るなり、怒りをあらわにした。


「おまえらなぁ、俺の居場所教えてんじゃねぇよっ!!」


 一瞬4人はしーんとして、カイトが目をパチクリさせて言った。


「拓人、何かあったんか?」


「あったもクソもねぇよっ!! あのリナってアイドル歌手、ったく、どういう神経してんだよ」


 拓人がドスンと音を立てるようにその場に腰を下ろす。


「ああ、リナちゃんね~あの子分かりやすいもんな~。もしかして告白されて、身体求められた~、とかかぁ~?」

 ヒロが楽しそうな声を上げる。


 拓人の表情にハルキが納得したように言った。

「どうやらそうみたいだね」


「そうやったんや。そりゃすまんかったなぁ。何や、リナさんとこのマネージャーさんが拓人に用事あるから探しとるんや言われたから、なぁ?」


 カイトが確認するかのようにシンジを見る。


「……拓人の様子だと、大嘘だったようだな」


 怒りが収まり切らない拓人の肩に手を添え、拓人を落ち着かせるようにカイトが言った。


「ほんま悪いことしたな。俺から松本さんの方に報告しとくからな。なるべく、あの子が拓人に近づかれへんようにするわ」


「でも、んなことで仕事には響かせたくねぇよ……」

 拓人は悔しそうに唇を噛む。


「大丈夫やて。言うてもあの子はまだ新人のアイドル歌手やで? それに、変な噂とか立てられたら俺らも困るし。俺と松本さんで何とかするから任しとき?」



 下手に噂になると、大々的に報道されかねないこの世界。


 カイトがこう言ってくれる以上、大抵のことは丸く収まる。


 大丈夫だとは思いたいが、今後長い目で見て、何も面倒なことが起きないことを、そっと心の中で願う拓人だった。

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