5 / 5
第5話:超絶、鬼痴駕異変心、徒舟 後編
しおりを挟む「『脱ぎ置く衣を形見と見給へ。月の出でたらむ夜は、見おこせ給へ。
見捨て奉りてまかる、空よりも落ちぬべき心地する。』
(脱ぎ置く着物を形見と御覧下さい。月が出るような夜は、こちらをご覧下さい。
お見捨て申しあげて参りますのは、空からも落ちてしまいそうな気持ちがします。)
かっ、…かぐや姫、切な~~~~~っ」
戦国時代で命がけの逃避行を繰り広げたような気がするのも夢のまた夢。
現代に戻った実感を噛みしめる間もなく、非情にも次の授業が始まるチャイムが鳴り響き、マキちゃんに「職務を全うしろ」と、保健室から放り出されて、3時間目の教壇に立っている、わけだけど。
かぐや姫が切な過ぎて泣ける。
大切な人を置き去りにしなきゃならなくて、しかも、それを忘れちゃうっていう。なんてっ、…なんて悲しいお別れなんだろう、…っっ
私は戦国に穂月のことを置いてきた挙句、穂月のことを忘れてしまった。
でも、穂月は会いに来てくれた。
これって、竹取の翁が月にジャンプアップしてかぐや姫に会いに行くくらいの奇跡じゃん。
なんて、なんてアメ――――ジング!!
教卓に突っ伏して号泣している私を見る教室生徒の目は冷ややかだ。
「…ねえ、今日実践問題集解くんじゃないの?」
「なんで急に竹取物語??」「なんで号泣??」
うちの可愛いピュアボーイズ&ガールズたちもこの若さで悲しいお別れや奇跡の恋を経験したりしてるんだろうか。
「ううう、…別れって辛いよね、…みんな大人ね」
更に涙に暮れていると、
「なえちゃんセンセ―、振られたの?」
「隠し子の志田穂月に?」
「メオトっていう名の叔母と甥の関係って聞いたけど」
「ホントはこっそり攫ってきた隠し子で」
「超絶美人で可愛い恋人が奪い返しに来たんでしょ??」
生徒たちが口々に私と穂月の関係を追及し始めた。
…うん。取っ散らかってるな。
自業自得とはいえ、穂月との関係を適当に誤魔化してきたから、すっかり明後日の方向に転がってるわ。
「…振られてません。超絶美人の女の子は間違ってこの学校に来ちゃっただけで、今ちゃんと送り届けてます」
結論から言って、三宮恵奈さんは、何も覚えていなかった。
穂月のことも。なえのことも。
戦国の世で共に過ごしたと言っていたことも。
証明するために私を時切丸で刺したことも。
「こんなカッコイイ人、見たら絶対忘れないし」
三宮さんが穂月を見つめる目には、新たに強烈なロマンスの芽生えを感じさせたけど、ともかくも、どうして自分が他校の保健室にいたのかさえよく分からないようだった。
「時切丸に憑かれていたのかもしれぬな」
思いを断つために、私も三宮さんも時切丸に呼ばれたのかもしれない。
三姫の思いが浄化されたから、私たちは元に戻されたのかもしれない。
本当のところは、よく分からないけど、
「怖いんで、家まで送って欲しいな」
と、穂月に擦り寄る三宮さんを、デキる養護教諭のマキちゃんが今頃ばっちり送り届けてくれている、はず。
見捨て奉りてまかる、空よりも落ちぬべき心地する。』
(脱ぎ置く着物を形見と御覧下さい。月が出るような夜は、こちらをご覧下さい。
お見捨て申しあげて参りますのは、空からも落ちてしまいそうな気持ちがします。)
かっ、…かぐや姫、切な~~~~~っ」
戦国時代で命がけの逃避行を繰り広げたような気がするのも夢のまた夢。
現代に戻った実感を噛みしめる間もなく、非情にも次の授業が始まるチャイムが鳴り響き、マキちゃんに「職務を全うしろ」と、保健室から放り出されて、3時間目の教壇に立っている、わけだけど。
かぐや姫が切な過ぎて泣ける。
大切な人を置き去りにしなきゃならなくて、しかも、それを忘れちゃうっていう。なんてっ、…なんて悲しいお別れなんだろう、…っっ
私は戦国に穂月のことを置いてきた挙句、穂月のことを忘れてしまった。
でも、穂月は会いに来てくれた。
これって、竹取の翁が月にジャンプアップしてかぐや姫に会いに行くくらいの奇跡じゃん。
なんて、なんてアメ――――ジング!!
教卓に突っ伏して号泣している私を見る教室生徒の目は冷ややかだ。
「…ねえ、今日実践問題集解くんじゃないの?」
「なんで急に竹取物語??」「なんで号泣??」
うちの可愛いピュアボーイズ&ガールズたちもこの若さで悲しいお別れや奇跡の恋を経験したりしてるんだろうか。
「ううう、…別れって辛いよね、…みんな大人ね」
更に涙に暮れていると、
「なえちゃんセンセ―、振られたの?」
「隠し子の志田穂月に?」
「メオトっていう名の叔母と甥の関係って聞いたけど」
「ホントはこっそり攫ってきた隠し子で」
「超絶美人で可愛い恋人が奪い返しに来たんでしょ??」
生徒たちが口々に私と穂月の関係を追及し始めた。
…うん。取っ散らかってるな。
自業自得とはいえ、穂月との関係を適当に誤魔化してきたから、すっかり明後日の方向に転がってるわ。
「…振られてません。超絶美人の女の子は間違ってこの学校に来ちゃっただけで、今ちゃんと送り届けてます」
結論から言って、三宮恵奈さんは、何も覚えていなかった。
穂月のことも。なえのことも。
戦国の世で共に過ごしたと言っていたことも。
証明するために私を時切丸で刺したことも。
「こんなカッコイイ人、見たら絶対忘れないし」
三宮さんが穂月を見つめる目には、新たに強烈なロマンスの芽生えを感じさせたけど、ともかくも、どうして自分が他校の保健室にいたのかさえよく分からないようだった。
「時切丸に憑かれていたのかもしれぬな」
思いを断つために、私も三宮さんも時切丸に呼ばれたのかもしれない。
三姫の思いが浄化されたから、私たちは元に戻されたのかもしれない。
本当のところは、よく分からないけど、
「怖いんで、家まで送って欲しいな」
と、穂月に擦り寄る三宮さんを、デキる養護教諭のマキちゃんが今頃ばっちり送り届けてくれている、はず。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣の家の幼馴染は学園一の美少女だが、ぼっちの僕が好きらしい
四乃森ゆいな
ライト文芸
『この感情は、幼馴染としての感情か。それとも……親友以上の感情だろうか──。』
孤独な読書家《凪宮晴斗》には、いわゆる『幼馴染』という者が存在する。それが、クラスは愚か学校中からも注目を集める才色兼備の美少女《一之瀬渚》である。
しかし、学校での直接的な接触は無く、あってもメッセージのやり取りのみ。せいぜい、誰もいなくなった教室で一緒に勉強するか読書をするぐらいだった。
ところが今年の春休み──晴斗は渚から……、
「──私、ハル君のことが好きなの!」と、告白をされてしまう。
この告白を機に、二人の関係性に変化が起き始めることとなる。
他愛のないメッセージのやり取り、部室でのお昼、放課後の教室。そして、お泊まり。今までにも送ってきた『いつもの日常』が、少しずつ〝特別〟なものへと変わっていく。
だが幼馴染からの僅かな関係の変化に、晴斗達は戸惑うばかり……。
更には過去のトラウマが引っかかり、相手には迷惑をかけまいと中々本音を言い出せず、悩みが生まれてしまい──。
親友以上恋人未満。
これはそんな曖昧な関係性の幼馴染たちが、本当の恋人となるまでの“一年間”を描く青春ラブコメである。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
古屋さんバイト辞めるって
四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。
読んでくださりありがとうございました。
「古屋さんバイト辞めるって」
おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。
学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。
バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……
こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか?
表紙の画像はフリー素材サイトの
https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる