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ひとりじゃない

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 まさかティナの方から模擬戦闘を言ってくるとは思わなかった。しかも、残念王女と言ったのを根にもっているみたいだ。ささいなことも忘れない女の執念とでもいうのだろうか。

「では、拒否の返事も無いのでこちらからいきますね」ティナはその言葉と同時に力強く踏み込み一気にこちらの間合いに入ってきた。

 ティナの速さは思った以上だったがこれでも色々な戦いをくぐり抜けて来たんだ、簡単にやられるわけにいかない。
 ティナの初撃を半歩下がり躱しながら次の攻撃に備える右パンチからの勢いを殺さないように回転しながらの左手からの裏拳を受け止めると同時に真下からの右足が直角に襲ってくる。右足の蹴りは頬をかすり赤い一筋の傷を作る。

 おいおい、こんな連携いつの間に覚えたんだ?しかも、キレのあるこの攻撃は上手く防御しなければ確実に負けてしまうレベルだ。残念王女だとか言ってられない、このままじゃ負けてしまうかもしれない。

「どうですか?少しは本気になれそうですか?気を引き締めないとなにもしない内に終わりますよ?」

 ティナの言葉に頭が一気に覚める感覚を覚える、なにもしない内に終わるなんてそんな訳あるか、俺は今まで一人頑張って来たんだ。大切なみんなを守りたくて乗り越えてきたんだ。そんな俺がなにもしないで終わるわけ無いだろ

「目の色が変わりましたね。いいですよ、ほらっあなたの全てを私に見せてください。私も全力で応えますから」

 そこからは一進一退の攻防が続いた。受けては返し、回避してからのカウンターや速さの緩急をつけてのフェイントからの本気の一撃など少しも気を抜けない攻撃にヒヤヒヤする場面が何度かあり、ついには体の疲労により足がふらつき一撃を受けてしまい派手に吹っ飛んでしまった。

「は~は~どうですか?私でもナイト様に勝てることがあるんですよ。だから、ちゃんと私達全員のことちゃんと見てください。一人だけだと敵わないことも絶対にあるんです。ナイト様の力は理解しているつもりです。いずれ最強になるのも夢ではないかもしれません、ですがそれは今ではありません。今は一緒に強くなってみんなで困難を乗り越える為に協力しあってもいいんじゃないんですか?あなたが倒れた時の心配するマリアさんの顔を知っていますか?シルキーさんが無事を祈る姿を、リザさんやヴィオラさんがヤバそうなものを持って駆けつけようとするのを止める私や兵士の皆さんの苦労をしらないでしょ?」

 なんか最後のリザやヴィオラの件は愚痴じゃないのか?

「私もナイト様の為に強くなりたいと相談すると半自動の格闘ロボットを作って暇があれば私を練習台につかったり。そのお陰で格闘術を今の強さになるまで叩き込まれた日々が想像できますか?」

 完全に今のは愚痴だよな。なんか今の強さを手に入れるまで大変だったんだな、なんかごめんな

「私だってここまで強くなることが出来るんです。あなたの横で戦うことが出来るんです。私だけじゃなくみんな、あなたの横で戦う覚悟は出来てるんです。あなたが倒れて苦しんでる姿をみんな見るのは耐えれないんです。守られるだけの私達じゃありません」

 そうだよな、みんな守られるだけの弱い存在なんかじゃないよな。俺が一人で無茶をしてみんなを心配させてしまってたんだな。

「レオナルドさんに言われました。みんなでナイト様を支えてやってほしいと、ナイト様は強くなるからと。だから私達は、ナイト様の支えになります。頼ってください。私達はもう見るだけの存在じゃありません。」

 俺は、ティナの言葉に独りよがりの自分が恥ずかしくなり、みんなと強くなりたいと思った。
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