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第一章 旅立ち

雨の日に

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 それから数日間、毎日同じクエストをした。
 ノビノビ草をとり、ザコモンスターを倒し、たまにギルドの本を読む。

 クエスト初日に少ないながら宿代を渡そうとしたら、男気あふれるダンに断られた。代わりにというか、お礼にと果物や、甘い菓子を買って帰るようにしたらミーアがとても喜んでくれた。

 あくる日もノビノヒ草をとりに行こうとしたが、あいにくの雨だった。クエストは中止にしてギルドでまだ読んでいない本でも読むことにしよう。

「ミーア、傘をかしてほしいんだが」
「かさって?」

 店番をしているミーアに傘をかりようとしたらそんな返事が返ってきた。この世界に傘はないのか。

「えっと、雨具はあるかな?」
「かっぱはありますけど・・・クエストにいかれるんですか?雨だからいかないかなと思ってお弁当を作ってなくて・・・。すぐ用意しますね」

「あ、いや、クエストはいかないよ。今日はギルドで本を読もうと考えてる。何かいるものがあれば、ついでだから買ってくるけど」

「そうですね・・・。魔法石をお願いできますか?」
「魔法石?ああ、かまわない」

 ギルドの本で魔石を加工したものが魔法石だと読んだ。加工ができる者が魔法技士とよばれ、魔法技士になれるのは魔法使いだけらしい。

 自分はまだ魔法使いを見たことがない。魔法は才能がないと使えず、才能を持つものは少ない。好んで戦闘に加わろうとする魔法使いはおらず、ほとんどが魔法技士になる。この街の冒険者ギルドには魔法使いの登録は一人もいないらしい。

「では・・・これをよろしくです。地図も書いておきました」
 ミーアは紙に買い物リストと地図を書いたメモと必要なギルをわたしてくれた。

「あっそれと、忘れてましたけどこれを」

 ミーアがポケットから出した魔石を自分は受けとる。スライムの魔石は小指の先ぐらいの大きさだが、これはそれより大きく親指の先くらいあった。

「これは?」
「ユータさんが私を助けてくれたときのホーンラビットの魔石です」
「ああ、あのときの・・・。自分がもらっても?」

「もちろん。倒したのはユータさんですもの」
「それじゃ、もらっとくよ」

 かっぱをかりて外に出る。シアルは雨だから動きたくないと留守番だ。

 先にギルドではなく魔法石店に向かおう。自分は魔法石店に一度もいったことがなく、興味の強い方を優先した。本は時間があればということで。

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