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しおりを挟むダンジョン。
魔物が住み着いた洞窟。一種類の場合もあれば多種多様な魔物が共存している場合もある。
一種類の魔物の場合は、強力な個体が存在し、下位の魔物を統率している。魔物なりの秩序があり、侵入者に軍隊のように襲いかかってくる。
多種類が住んでる場合は、強力な個体がいることはまれだが、毒など魔物それぞれで対応策を講じなくてはならない。
「そっちはめんどくさいんだよなぁ。昔行ったことのあるダンジョンなんだが、毒スライムやら痺れムカデやら穴掘りネズミやら、何種類も一辺に群れでこられるとホントきつかった」
フィルは遠い目をしながらぼやいた。
「ダンジョンの入り口で火攻めと言うか煙攻めと言うか······そういうのはできなかったんですか?」
「そんときは貴族のぼっちゃんの救出作戦でな。できなかった。何度煙攻めしてえと思ったことか······。ああ、ちなみに貴族のぼっちゃんは生きてたよ。手足が結構食いちぎられてたけど。一応、作戦成功だ」
「アル、個人の傭兵はダンジョンを煙攻めにしてはいけませんよ」
ライラがスープをよそいながら言った。
「そうなんですか?」
「ええ。ダンジョンの中に人がいる可能性が高いですから、そんなことをしたら殺人罪になりかねません。罪に問われなくても傭兵としての信頼は落ちます。どうぞ、お嬢様」
「ありがとう。煙攻めは国の騎士団か、傭兵ギルドがダンジョンの危険度が高いと判断した時だけですね。生存者がいる可能性が無いときだけです」
「そうなんですね。あ、ありがとう」
アイリスはライラからスープを受け取った。肉と野菜をミルクで煮込んだ美味しそうなスープだ。
「それにしても、ダンジョンって洞窟なのにどうして明るいんでしょうか?」
洞窟と聞いていたから真っ暗だと思ってた。でも、このダンジョンは天井や壁、座っている床までほのかに光っていて明るい。
「それは······不明です」
「不明?」
「何人もの研究者がダンジョンを調べていますが、わかっていることはほんのわずかです。壁が光っている有力な説は、目に見えない小さな生き物が光っている、ですよ。他には、ダンジョン自体が生き物で獲物を誘きよるために光っている、とかでしたね」
「ええ!?」
「ライラ。食事中に気味の悪いことを言わないで」
「失礼しました。ダンジョンが生き物と言う説は否定される方が多いです」
そうライラはフォローしたが、アイリスはダンジョンに食べられてとけるイメージがなかなか消えなかった。
「ここは光ってるが光の無いダンジョンもあるな。もっとも、光ってないダンジョンはダンジョンじゃないっつー研究者もいるが」
フィルは気にした様子もなくスープを食べている。
「なんにしろ、問題は魔物の住み家ということです。魔物が増えすぎれば、人に村に街に被害がでてきます。そうならないために定期的に調査や討伐依頼が傭兵ギルドにくるのです。アル、マップの書き方は覚えましたね?」
「はい」
ダンジョンの道中でライラから教わっていた。
「では、食事が終わってからのマップ作成はアルに任せます」
「わかりました」
慣れないアイリスがマップを作っているので、ダンジョン調査の進みは遅かった。マナリア達は急かすことなく、ときおり魔物や植物について教えてくれた。
何事もなく進んでいたが、前に男性が倒れているのを発見して空気が変わった。
「俺がタグをとってきます」
「······ええ」
マナリアが行こうとするのを止めてフィルがうつ伏せの男性に近づく。
「タグをとると言うと、もしかして」
「そうです。死体を連れて帰ることが難しいときはタグと所持品だけ持って帰ります。ギルドに提出すればその傭兵の家族に渡されますし、少ないですが報奨も出ますよ」
「!」
淡々と言うライラの説明を聞いているとフィルの顔色が変わった。
「こいつ、生きてますよっ」
「怪我は!?」
「待て······ないな。気絶しているだけだ」
フィルは男性をひっくり返して調べた。そのまま頬を叩いて起こそうとする。
「おい······おい······起きろ」
「う、うぅ······。なんだ? なにが······」
起きた男性はかなり戸惑っていた。何度も頭をふっている。
「大丈夫ですか?」
「あ······。マナリアさん。はい、怪我はないです」
「いったい何があったのです?」
「それは······」
男性は言いよどみ、頭を抱えた。
「どうしました?」
「あの、その······お、覚えていません」
男性は頭を抱えたまま、かすれた声で答えた。
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