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新婚時代の想い出
12 甘く誘う
しおりを挟むホテルの庭園は暗くなり、人もいなかった。
僕達、二人だけだった。
ライトアップされた夜の庭園の花壇の前で、僕達はまるでプロポーズをしたばかりのような二人になって、静かにキスをした。
唇を離したが、体が離れがたい。
「離したくないな」
僕はかおりを熱く見つめてみた。かおりはいつも直ぐに目が潤んで、とろんとする。こんな外でもそんな目をするなんて……。かおりは背を伸ばして、キスの延長をおねだりした。
「かおりのそんな仕草、堪らないな」
僕はかおりの頭の後ろに手を回して、おねだりに応えた。
「車に戻ろう」
僕達はホテルの駐車場に行き、車に乗った。助手席にかおりを乗せ、僕は運転席に乗った。
「キスだけさせて」
力の抜けたかおりは柔らかくて、全てに触れたくなる。約束通りキスだけで止めた。
家に着いた。
披露宴でかおりが弾いたピアノは綺麗で美しかった。
「かおり、何でもいい。僕だけに聴かせて」
妻はにこっとした。幼なじみで、小さな頃から今も……かわいくてかわいくてたまらない。
モーツァルトの『キラキラ星変奏曲』を聴かせてくれた。歪なところの一つもない、真珠の連なるような音質。然り気無いメロディーに、どれだけ心を配って弾いているのだろうか。素晴らしい感性だ。僕が教えただけでは、こうはならない。
ヴァリエーションの終盤にある、ゆったりしたメロディーが終わったところで手を取ってこちらを向かせた。
「かおりの声が聴きたい」
元々口数の少ないかおりは、ピアノを止めさせられて、不思議そうにしている。ゆっくり口を開いた。
「あ」
苦笑……。まぁ、いい。僕は、かおりの開いた口に指を入れ、高める準備をさせた。
目が、閉じられた。
もう、わかるだろう。
僕がしたいことも。
僕が喜ぶことも。
僕にしか見せない姿を、見せてくれ。
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