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30 深夜の帰宅
しおりを挟むかなり酔った状態ではあったが、かおりを家に帰すために、頭のどこかは冷静だった。
道路も混んでいて、家に着いたのは日付が変わる頃だった。
かおりの家の玄関の前で、家に入る直前、僕はかおりに謝った。
「かおり、ごめん。かおりがキスしてくれたのに、僕はかおりに優しくできなかった。悪かった。もし、許してくれるなら……。僕は今、困っていることがあって、かおりのお父さんに相談したい。お父さんに、会わせてくれる?」
かおりには、伝わったようだった。
「……パパに会わせてあげるけど、許すとか、許さないとかじゃないの。……先生に、私のことを、あきらめてほしくないの。……私が、わからないこととか、わかっていないことを、説明したり、教えたりするのを、あきらめてほしくないの。……教えても、わからないだろうって、思ってほしくないの。……教えてもらって、私がわからなかったら、私が悪いの。……先生は、悪くないの。……だから、お願い。教えて、……。先生、私がわかるまで教えて……」
驚いた。
ゆっくりだったけど、自分で最後まで話した。かおりが、自分の気持ちをこんな風に表すなんて。酔っていたことが、嘘のように消えていった。
玄関のドアが開いた。
かおりのお父さんだった。
「二人ともお帰り。心配したよ。中に入りなさい。かおり、寒くないか?」
「うん。遅くなってごめんなさい」
「遅くなってすみません」
リビングに通された。お父さんはかおりに聞いた。
「かおり、マヤちゃんから連絡があった。自分が誘ったけれど、先生と帰りましたと謝っていた。かおりが書いたお出かけ先のメモとは違う人と帰るのはおかしい。帰る時間も遅かったけど、出かけた時間も遅いよ。何だったの?」
かおりは黙ってしまった。それは、きっとかおりには説明できないだろう。わかっていないし、教えていない。
お父さんは、僕の方を向いた。
「慎一くん、かおりが面倒をかけてすまなかった。事情はわからないが、慎一くんが、かおりのことを考えて、してくれたことだと思っている。申し訳ない」
お父さんは、かおりに言った。
「さっき、玄関で話していたの、聞こえたよ。ちゃんと自分の気持ちを伝えられたね。慎一くんは、ちゃんと聞いてくれるから、これからもそうやって自分でお話しなさい。時間がかかっても、慎一くんは、ちゃんとかおりのことを、待っていてくれるからね」
お父さんは今度は僕に言った。
「明日もあるし、私はもう休むから。慎一くん、ありがとう。私とは、また後日話をしよう。おやすみ」
「すみませんでした。お休みなさい」
リビングで二人きりになった後、ソファーに座った僕の頬に、かおりが跪いてキスをしてきた。
僕も、かおりの頬にキスをした。
後はもう、言葉を交わすことなく、どちらからともなく唇にキスをした。
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