灯台と怪物

「今でも灯台の中で怪物が眠っている、なんて言えば……おかしいかしら?」

 幼い頃に訊いた、曾祖母の言葉。
 その意味はずっと解らなかったけれど、知ることになった夏の出来事。

 ―――口づけひとつ下さらない貴方を慕う私も、愚かで醜悪な怪物なのでしょう。
 ―――貴方は私の灯台です。


 別サイトにも重複投稿中。
24h.ポイント 0pt
0
小説 194,421 位 / 194,421件 現代文学 8,344 位 / 8,344件

あなたにおすすめの小説

酒を飲むなら縁側で

春色悠
BL
「だぁぁぁあ!!全く思い浮かばんっ!!……、酒でも飲むか。」  飲んだくれの中堅作家こと来ノ木満作(らいのき まんさく)。  絶賛スランプ中の彼の前に現れたのは____ 『朝からメシも食わずに酒ひっかけるなよ、オッサン。』 「誰がおっさんだぁっ!まだピチピチの25だぞこちとラァ!!」 『え、?』 「あ?」 『「…は?」』  ___幽霊の青年だった。 「なんでお前人様の家に勝手に住んでんだよ。家賃払え。」 『出来たらとっくに出てってるわこんなゴミ屋敷ィ!!』  これは、 『ちゃんとしたもの食えオッサン!!酒ばっか飲んでんじゃねぇぞ!自炊しろ!!』 「出来たら今頃飯食ってんだワ。」  飲んだくれと幽霊の、 「やれば出来るもんだなァ、オレ。流石オレ。」 『そのポテサラ俺のお陰だぞ。崇め奉れよ。自画自賛すんな。』  少しだけ不本意な同居生活の話。

和歌浦グラフィティ

真夜中
青春
レーズンの家の近くには二軒の本屋がある。雑誌を読むにはもっぱら大浦街道に面した大きい方を利用することにしている。倉庫のような白い建物にそれを照らすライティング設置用の黄色い鉄骨、看板には赤く大きな文字でBooKとある。その中にあったアイスクリームを主に売るテナントはオープンして三年程で消えた。レーズン達はよくそこで水風船を買いアイスクリームを頬張った。そこで覚えたラム・レーズンの味は最高。僕のニックネームはレーズンに決まった。 これから何度と淡い春が来て、その度にまた厳しい冬を乗り越えようとも、もう、あの頃と同じ情熱を感じることはないのかもしれない。僕は決して誠実な人間ではないけれど、あの時代に感じていたすべてを忘れることはないだろう。目一杯満喫したから二度と振り返らないなんて言わないし、サヨナラの手を振るつもりもない。あの頃からいろいろと吸うものは変わったけど、カクテルグラスに刺さった安いストローや、濃度の高い煙に巻かれながら、僕らは、この胸、深いところと共謀し、センチメンタルという一生懸命に甘くて、精一杯に酸っぱく苦しいドロップを互いの口に放り込む計画を立てている。かつて、僕のことをレーズンと呼んだあの悪ガキ達の残像が摺り寄って来ては、僕の横腹を突つきニヤっとささやくと、今、僕の横に掛けているのはあの頃とちっとも変わらないチャーミングな女の子。  それは、たった一度の魔法で、僕らはそれを初恋と呼んだ。

【改訂版】12本のバラをあなたに

谷崎文音
恋愛
――夫婦ってなんだろう。結婚ってなんだろう。夫とは、妻とは、そして仕事とは。 仕事はできるが自分の気持ちに素直になれない女。のんびりしているように見えるが考えすぎる男。離婚した過去を引きずるこじらせ男女の切ない恋模様。 【登場人物紹介】 麻生 遼子(あそう りょうこ)32才 弁護士。過去に離婚を経験している。 別所 聡(べっしょ さとし)45才 コンサルタント会社社長。過去に離婚を経験している。 【あらすじ】 遼子(りょうこ)は企業内弁護士(インハウスローヤー)、企業の社員として雇用されている弁護士だ。 会社の社長である別所(べっしょ)にほのかな恋心を抱いているが、いま一歩踏み出せないままでいる。その別所も遼子を好きなことは自覚しているものの悶々とした毎日を過ごしていたが、遼子が会社を去る日まで一ヶ月を切ったことで焦りを感じ行動に移したが空振りもとい玉砕。そんな別所にしびれを切らした友人の粋な計らいで絶好のチャンスを与えられたものの遼子は愛の告白に応えてくれなかった。その後遼子の元夫が現れたことをきっかけに二人の関係は急速に進展していく。 別所と遼子、2人の恋を陰に日向に見守る若い恋人たちと熟年夫婦。それぞれの価値観が交差する人間模様。 【注意】 本作の著作権所有者は谷崎文音です。当方が著作権を有する作品の一部または全部を無断で複製・改変・転載・転用・賃貸・配布・配信・販売することを禁じます。 No reproduction or republication without written permission.

生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち

はるかず
児童書・童話
生まれることもできない卵の雛たち。 5匹の殻にこもる雛は、卵の中でそれぞれ悩みを抱えていた。 一歩生まれる勇気さえもてない悩み、美しくないかもしれない不安、現実の残酷さに打ちのめされた辛さ、頑張れば頑張るほど生まれることができない空回り、醜いことで傷つけ傷つけられる恐怖。 それぞれがそれぞれの悩みを卵の中で抱えながら、出会っていく。 彼らは世界の美しさを知ることができるのだろうか。

見返り坂 ~いなり横丁~

遠藤 まな
ファンタジー
洋館やお洒落なお店が並ぶポプラ並木の緩い坂道があった。その坂道の名前は見返り坂。 大人の街といった雰囲気の場所であったが、その坂の途中にある小さなお稲荷様の角を曲がると、時代の流れから取り残された空間が姿を現す。 ~いなり横丁~ レトロな日本の懐かしい風景とそこに集う人たちの小さな物語

太陽の島

丹羽嘉人
ライト文芸
小説家志望の〈私〉は療養のためにある島に滞在し、オランダ人とのクオーターの少年、ケンと出逢う。創作に行き詰まり、脱色された現実に悩まされた〈私〉において、ケンは新たな空想の太陽、世界を彩色する象徴のようであった。やがて〈私〉はケンに惹かれ、ケンは視野狭窄にかかった少女小百合に恋をする。空想と現実、肉体と精神、生と死、それらが深く交差し、混濁した島で〈私〉にはひとつの野望が芽生えはじめる。……

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

どうしてこの街を出ていかない?

島内 航
ミステリー
まだ終戦の痕跡が残る田舎町で、若き女性教師を襲った悲惨な事件。 その半世紀後、お盆の里帰りで戻ってきた主人公は過去の因縁と果たせなかった想いの中で揺れ動く。一枚の絵が繋ぐふたつの時代の謎とは。漫画作品として以前に投稿した拙作「寝過ごしたせいで、いつまでも卒業した実感が湧かない」(11ページ)はこの物語の派生作品です。お目汚しとは存じますが、こちらのほうもご覧いただけると幸いです。