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プロローグ
第1話(2)
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「莉音は優しい子だねえ。でもね、おばあちゃんに言われるまでもなく、あたしもずっと、あんたのことが気掛かりだったのよ。たったひとり残して悲しませちゃったし、寂しい思いも心細い思いもいっぱいさせちゃったしね」
「母さん……」
「まだ学生だったのに、いろんな手続きとか、これからの生活とか、わからないことだらけで不安だったと思うし、大変だったと思う。だから心配で、ずっと見守ってたんだけど、あたし以上にあんたのこと大事にしてくれる人が現れたじゃない? ほんとによかったって、すごく安心したんだから」
まあ、パパはかなりショック受けてたけど、とさりげなく付け足されて、莉音はドキッとした。
「あ、えっ? まっ、まさか……まさか父さんも、アルフさんのこと知ってるの?」
「そりゃあ知ってるわよ」
あたりまえじゃないのと母はあっけらかんと笑った。
「なに言ってんのよ。あんたたちこのあいだ、ふたりそろってお墓参りに来たじゃない。そのときにあんたの彼氏にもしっかり挨拶されたんだから、パパだって当然その場に居合わせたに決まってるじゃない。おばあちゃんのお墓もおなじスペースで隣り合ってるんだし」
「そ、そうだけど、それでみんな、その場に居合わせてたなんて……」
いや、そのつもりで紹介したし、愛する恋人も真摯に手を合わせてくれたわけなのだが、あらためて母の口から言われてしまうと気恥ずかしさがまさってしまう。
「あの……、あのそれで、父さんは……なんて?」
おそるおそる尋ねると、母はニンマリと口の端を吊り上げた。
「俺の息子がっ! 俺の可愛い莉音が~っ!!って悶絶してたわよ?」
あああっ、と莉音は頭を抱えた。
「あの、えっと、えっと……、ごっ、ごめんなさいっ!」
なにをどう言っていいかわからず、莉音は真っ赤になりながら頭を下げた。
「ほんと、ごめんね? そうだよね、そりゃびっくりするよね。だってまさか、自分の子供に同性の恋人紹介されるなんて思わないもんねっ。あの、あのね、でもねっ、本気なんだよ? すっごく大切で大好きな人で、アルフさんも僕のこと、とっても大事にしてくれてて。だから僕、ほんとは全然釣り合わないし、相応しくないからって一度は身を引こうと思ったんだけど、でもやっぱり、どうしても諦められなくて。それでアルフさんも僕のこと――」
「り~おんっ!」
言い訳がましいと思いながらも、思いつくまま必死に言葉を連ねてしまう。その途中で、母に遮られた。
「なに謝ってんの。あんたが選んだ人だもの、間違いないってことぐらい、ちゃんとわかってるわよ」
「え、でも、男同士だし……」
「好きになるのに男も女も関係ないでしょ。大体ね、こっちに来ちゃったら、性別なんてあってないようなもんだから、そんなのどうでもいいの。そうじゃなくてね」
母は思い出したようにふふふと笑った。
「パパにとって、あんたはいつまで経ってもちっちゃくて可愛かったころの息子のままなの。そりゃそうよね。一緒にいたのは、あんたが小学校に入るちょっとまえまでなんだから」
「そう、だけど……」
「だからね、その可愛くて可愛くてたまらない最愛の息子に、自分とあまり年齢の変わらない、美形の外国人の恋人ができたっていうところにショックを受けちゃったっていうわけ」
父が事故死したのが三十五歳のときだったことを考えると、たしかに現在三十二歳のヴィンセントとあまり変わらない。そう思い至って、なんとも言えない気分になった。
そうか、自分はそういう年齢の人と恋愛する歳になっていたのだなとあらためて思う。少し年の差はあるけれど、それでも充分恋人としての関係を保てていた。父からすれば、それはかなり衝撃だったに違いない。
「母さん……」
「まだ学生だったのに、いろんな手続きとか、これからの生活とか、わからないことだらけで不安だったと思うし、大変だったと思う。だから心配で、ずっと見守ってたんだけど、あたし以上にあんたのこと大事にしてくれる人が現れたじゃない? ほんとによかったって、すごく安心したんだから」
まあ、パパはかなりショック受けてたけど、とさりげなく付け足されて、莉音はドキッとした。
「あ、えっ? まっ、まさか……まさか父さんも、アルフさんのこと知ってるの?」
「そりゃあ知ってるわよ」
あたりまえじゃないのと母はあっけらかんと笑った。
「なに言ってんのよ。あんたたちこのあいだ、ふたりそろってお墓参りに来たじゃない。そのときにあんたの彼氏にもしっかり挨拶されたんだから、パパだって当然その場に居合わせたに決まってるじゃない。おばあちゃんのお墓もおなじスペースで隣り合ってるんだし」
「そ、そうだけど、それでみんな、その場に居合わせてたなんて……」
いや、そのつもりで紹介したし、愛する恋人も真摯に手を合わせてくれたわけなのだが、あらためて母の口から言われてしまうと気恥ずかしさがまさってしまう。
「あの……、あのそれで、父さんは……なんて?」
おそるおそる尋ねると、母はニンマリと口の端を吊り上げた。
「俺の息子がっ! 俺の可愛い莉音が~っ!!って悶絶してたわよ?」
あああっ、と莉音は頭を抱えた。
「あの、えっと、えっと……、ごっ、ごめんなさいっ!」
なにをどう言っていいかわからず、莉音は真っ赤になりながら頭を下げた。
「ほんと、ごめんね? そうだよね、そりゃびっくりするよね。だってまさか、自分の子供に同性の恋人紹介されるなんて思わないもんねっ。あの、あのね、でもねっ、本気なんだよ? すっごく大切で大好きな人で、アルフさんも僕のこと、とっても大事にしてくれてて。だから僕、ほんとは全然釣り合わないし、相応しくないからって一度は身を引こうと思ったんだけど、でもやっぱり、どうしても諦められなくて。それでアルフさんも僕のこと――」
「り~おんっ!」
言い訳がましいと思いながらも、思いつくまま必死に言葉を連ねてしまう。その途中で、母に遮られた。
「なに謝ってんの。あんたが選んだ人だもの、間違いないってことぐらい、ちゃんとわかってるわよ」
「え、でも、男同士だし……」
「好きになるのに男も女も関係ないでしょ。大体ね、こっちに来ちゃったら、性別なんてあってないようなもんだから、そんなのどうでもいいの。そうじゃなくてね」
母は思い出したようにふふふと笑った。
「パパにとって、あんたはいつまで経ってもちっちゃくて可愛かったころの息子のままなの。そりゃそうよね。一緒にいたのは、あんたが小学校に入るちょっとまえまでなんだから」
「そう、だけど……」
「だからね、その可愛くて可愛くてたまらない最愛の息子に、自分とあまり年齢の変わらない、美形の外国人の恋人ができたっていうところにショックを受けちゃったっていうわけ」
父が事故死したのが三十五歳のときだったことを考えると、たしかに現在三十二歳のヴィンセントとあまり変わらない。そう思い至って、なんとも言えない気分になった。
そうか、自分はそういう年齢の人と恋愛する歳になっていたのだなとあらためて思う。少し年の差はあるけれど、それでも充分恋人としての関係を保てていた。父からすれば、それはかなり衝撃だったに違いない。
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