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プロローグ
第1話(1)
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「りお~んっ、みぃたぁぞ~~~っ! カレシ、超絶イケメンじゃ~ん!」
聞き慣れたからかい口調にギョッとして、莉音は思わず振り返った。途端に大きく息を呑む。そこに、満面の笑みを浮かべたよく知る人物が立っていた。
「えっ!? かっ、かっ、母さんっ!?」
そんなバカなと思うまもなく、勢いよく抱きしめられた。
「うわっぷっ、ちょっ、待っ……っ!」
「このこのこのぉっ! やるな! さすがあたしの息子。超玉の輿じゃん!」
「えっ、ちょっ、ま……っ! なんでっっっ!?」
強い力で頭を抱えこまれて髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き交ぜられる。なにが起こっているのか、理解できなかった。
混乱のあまりされるがままになっていた莉音は、息子の頭をひとしきりもみくちゃにしして満足したところで母の腕から解放された。だが、突然の事態にやはり頭が追いつかない。放心したようにその場に立ち尽くした。
「……うそ、ほんとに母さん?」
乱れた頭髪のまま、しばし茫然としたあとでようやく呟いた。その様子を正面からしみじみと眺めた母は、満足そうににっこりとした。
「元気そうでよかった。ごめんね、独りぼっちにしちゃって」
言われた途端、ああ、そうか、これは夢なんだと理解した。
「莉音にあんな悲しい思い、させるつもりなかったんだけどなぁ」
ごめんね、あたしってばおっちょこちょいで、と母は茶目っ気たっぷりに笑った。
「あの、母さんは、思ったより元気そうだね」
おかしなことを言っていると思いつつも、ほかにどう言えばいいのかわからない。母は、そんな莉音の戸惑いを理解しているように笑みを深くした。
「もちろん元気だよぉ。もともとピンピンしてたしね。だからあんなに呆気なく自分が死んじゃうなんて、夢にも思わなかったなぁ」
直截すぎる言葉に、莉音は声を詰まらせた。
「だからね、お母さん――あんたのおばあちゃんにも、すっごい怒られたんだぁ。仮にも母親が、まだ独り立ちもできてない大事な我が子を残して、こんなに早くこっちに来ちゃダメだろ~っ!って」
「えっ、ばあちゃんが?」
母は目を剥きながら頭の両サイドに人差し指を立てて、角が生えているジェスチャーをした。
「母さん、ばあちゃんに会えたんだ」
「会えた会えた。再会して開口いちばんにすごい剣幕で怒鳴るんだもの、感動もなにもあったもんじゃなかったわよ」
ほんと、怖かったんだからとぼやく母に、莉音は吹き出した。
「ばあちゃん、相変わらずなんだね。っていうか、ばあちゃんも元気そうでよかったよ。今日は一緒に来てないの?」
「今回はあたしだけ。あたしはほら、まだ日が浅いから」
母のその言葉に、莉音は複雑な気持ちになった。そんな言いかたをされれば、嫌でも実感が湧いてしまう。
「……そうなんだ。あの、でも今回のことは母さんはなにも悪くないんだし、そんなに怒らないでってばあちゃんにも伝えておいて」
莉音の気持ちを察したように、母は自分が乱した息子の髪を直すそぶりでそっと頭を撫でた。
聞き慣れたからかい口調にギョッとして、莉音は思わず振り返った。途端に大きく息を呑む。そこに、満面の笑みを浮かべたよく知る人物が立っていた。
「えっ!? かっ、かっ、母さんっ!?」
そんなバカなと思うまもなく、勢いよく抱きしめられた。
「うわっぷっ、ちょっ、待っ……っ!」
「このこのこのぉっ! やるな! さすがあたしの息子。超玉の輿じゃん!」
「えっ、ちょっ、ま……っ! なんでっっっ!?」
強い力で頭を抱えこまれて髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き交ぜられる。なにが起こっているのか、理解できなかった。
混乱のあまりされるがままになっていた莉音は、息子の頭をひとしきりもみくちゃにしして満足したところで母の腕から解放された。だが、突然の事態にやはり頭が追いつかない。放心したようにその場に立ち尽くした。
「……うそ、ほんとに母さん?」
乱れた頭髪のまま、しばし茫然としたあとでようやく呟いた。その様子を正面からしみじみと眺めた母は、満足そうににっこりとした。
「元気そうでよかった。ごめんね、独りぼっちにしちゃって」
言われた途端、ああ、そうか、これは夢なんだと理解した。
「莉音にあんな悲しい思い、させるつもりなかったんだけどなぁ」
ごめんね、あたしってばおっちょこちょいで、と母は茶目っ気たっぷりに笑った。
「あの、母さんは、思ったより元気そうだね」
おかしなことを言っていると思いつつも、ほかにどう言えばいいのかわからない。母は、そんな莉音の戸惑いを理解しているように笑みを深くした。
「もちろん元気だよぉ。もともとピンピンしてたしね。だからあんなに呆気なく自分が死んじゃうなんて、夢にも思わなかったなぁ」
直截すぎる言葉に、莉音は声を詰まらせた。
「だからね、お母さん――あんたのおばあちゃんにも、すっごい怒られたんだぁ。仮にも母親が、まだ独り立ちもできてない大事な我が子を残して、こんなに早くこっちに来ちゃダメだろ~っ!って」
「えっ、ばあちゃんが?」
母は目を剥きながら頭の両サイドに人差し指を立てて、角が生えているジェスチャーをした。
「母さん、ばあちゃんに会えたんだ」
「会えた会えた。再会して開口いちばんにすごい剣幕で怒鳴るんだもの、感動もなにもあったもんじゃなかったわよ」
ほんと、怖かったんだからとぼやく母に、莉音は吹き出した。
「ばあちゃん、相変わらずなんだね。っていうか、ばあちゃんも元気そうでよかったよ。今日は一緒に来てないの?」
「今回はあたしだけ。あたしはほら、まだ日が浅いから」
母のその言葉に、莉音は複雑な気持ちになった。そんな言いかたをされれば、嫌でも実感が湧いてしまう。
「……そうなんだ。あの、でも今回のことは母さんはなにも悪くないんだし、そんなに怒らないでってばあちゃんにも伝えておいて」
莉音の気持ちを察したように、母は自分が乱した息子の髪を直すそぶりでそっと頭を撫でた。
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