43 / 52
第5章
誘惑と友情、魂の交信(2)
しおりを挟む
「エル……」
ほんのり頬を上気させ、潤んだ眼差しを向けられてあわてて視線を逸らした。
「もういいだろ。余分なエネルギーは充分中和されたはずだ」
「我はまだ足りない」
嘘つけっ!と内心ですかさずツッコミを入れた。
この美人、なにシレッと甘えたモード全開で大ボラぶっこいてんだよ。俺の身体だってあんたと力のやりとりしてるんだから、いまの状態はわかるっつうの。
「もうダメか?」
上目遣いで訊かれて、ウッと詰まった。
「あ~、まあ、とりあえず今回はこれでおしまいってことで。あんまやりすぎるのも、よくないだろ」
「そんなことはないと思うが」
そんなことあるんだよ。やりすぎてあんた、錯乱状態に陥っただろうが。
「もうずっと、こうして触れ合うだけの処置しかしていないが、エロいチュウはしなくていいのか?」
「エッ………………ッ」
思わず絶句した。
いや、マジで勘弁してくれ。なに言っちゃってんの、この人っ!?
「しませんっ!! ってか、その言いかたはやめなさいっ! あんた、仮にも高貴な生まれでしょうが!?」
「え~、そなたが教えてくれたのではないか」
教えてねぇわっ!
内心で断固否定して、ガックリ肩を落とした。
まったく勘弁してくれよ……。なにがエロいチュウだ。俺が口走ったこと勝手におぼえやがって。そんなん、できるわけねぇだろ。
原因となったあれこれを思い出して、げんなりする。
「……ともかく、いまはこまめに発散してるんだから、そんな必要全然ないだろ? あれは、本当に倒れる寸前でどうにもならなくなった場合のみの最終手段ですっ!」
「そうなるまえに、万一に備えて、してもいいと我は思うのだが」
「よくねえよ! 万一に備えてってなんだよっ! っていうか、うっかり濃厚接触した結果、どうなったかはあんたもよくわかってるだろうが」
「ルシアスならば、我からよく言い聞かせておくぞ?」
「そういう問題じゃねぇんだよっ!!」
マジでなに言ってんだ、この人。神様の貞操観念ってどうなってんの?
つぶらな瞳で邪な提案してくるのはやめてほしい。この躰の持ち主のせいで、うっかり流されそうになっちゃうんだから、ほんとやめて!?
思うように誘いに乗らない俺の反応に、リュシエルは不満そうに口唇を尖らせた。うん、そういう顔してもダメだから。あざと可愛い手には乗りません。
これ以上迫ってもさすがに無理だと諦めたのか、リュシエルはようやく躰を離した。
「作業を中断させてしまったようだが、エルディラントが記したものは、なにか見つかったのか?」
部屋の様子を見て、真顔で問われたのでこちらも真摯に応じる。
「いや、残念ながらいまのところ、これといったものはまだ」
ここ最近、日中手が空いているときは、手がかりになりそうな手記が残されていないかと探ってはいるのだが、それらしいものはなにひとつ見つかっていない。俺の勘では、力のやりとりが上手くいかない原因とリュシエルが襲撃された件について、この躰の持ち主はなんらかの情報を得ていたはずなのだ。
「やはりそうであるなら、我はしたほうがいいと思うのだが。エロッ――」
まだ諦めてなかったかっ!
皆まで言わせず、ビタッと掌で口を塞いだ。
「しません! ダメですっ!」
リュシエルが不満そうに「ん~っ! ん~っ!」と抗議するので、しかたなく手を放した。
ほんのり頬を上気させ、潤んだ眼差しを向けられてあわてて視線を逸らした。
「もういいだろ。余分なエネルギーは充分中和されたはずだ」
「我はまだ足りない」
嘘つけっ!と内心ですかさずツッコミを入れた。
この美人、なにシレッと甘えたモード全開で大ボラぶっこいてんだよ。俺の身体だってあんたと力のやりとりしてるんだから、いまの状態はわかるっつうの。
「もうダメか?」
上目遣いで訊かれて、ウッと詰まった。
「あ~、まあ、とりあえず今回はこれでおしまいってことで。あんまやりすぎるのも、よくないだろ」
「そんなことはないと思うが」
そんなことあるんだよ。やりすぎてあんた、錯乱状態に陥っただろうが。
「もうずっと、こうして触れ合うだけの処置しかしていないが、エロいチュウはしなくていいのか?」
「エッ………………ッ」
思わず絶句した。
いや、マジで勘弁してくれ。なに言っちゃってんの、この人っ!?
「しませんっ!! ってか、その言いかたはやめなさいっ! あんた、仮にも高貴な生まれでしょうが!?」
「え~、そなたが教えてくれたのではないか」
教えてねぇわっ!
内心で断固否定して、ガックリ肩を落とした。
まったく勘弁してくれよ……。なにがエロいチュウだ。俺が口走ったこと勝手におぼえやがって。そんなん、できるわけねぇだろ。
原因となったあれこれを思い出して、げんなりする。
「……ともかく、いまはこまめに発散してるんだから、そんな必要全然ないだろ? あれは、本当に倒れる寸前でどうにもならなくなった場合のみの最終手段ですっ!」
「そうなるまえに、万一に備えて、してもいいと我は思うのだが」
「よくねえよ! 万一に備えてってなんだよっ! っていうか、うっかり濃厚接触した結果、どうなったかはあんたもよくわかってるだろうが」
「ルシアスならば、我からよく言い聞かせておくぞ?」
「そういう問題じゃねぇんだよっ!!」
マジでなに言ってんだ、この人。神様の貞操観念ってどうなってんの?
つぶらな瞳で邪な提案してくるのはやめてほしい。この躰の持ち主のせいで、うっかり流されそうになっちゃうんだから、ほんとやめて!?
思うように誘いに乗らない俺の反応に、リュシエルは不満そうに口唇を尖らせた。うん、そういう顔してもダメだから。あざと可愛い手には乗りません。
これ以上迫ってもさすがに無理だと諦めたのか、リュシエルはようやく躰を離した。
「作業を中断させてしまったようだが、エルディラントが記したものは、なにか見つかったのか?」
部屋の様子を見て、真顔で問われたのでこちらも真摯に応じる。
「いや、残念ながらいまのところ、これといったものはまだ」
ここ最近、日中手が空いているときは、手がかりになりそうな手記が残されていないかと探ってはいるのだが、それらしいものはなにひとつ見つかっていない。俺の勘では、力のやりとりが上手くいかない原因とリュシエルが襲撃された件について、この躰の持ち主はなんらかの情報を得ていたはずなのだ。
「やはりそうであるなら、我はしたほうがいいと思うのだが。エロッ――」
まだ諦めてなかったかっ!
皆まで言わせず、ビタッと掌で口を塞いだ。
「しません! ダメですっ!」
リュシエルが不満そうに「ん~っ! ん~っ!」と抗議するので、しかたなく手を放した。
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

かわいい息子がバリタチだった
湯豆腐
BL
主人公は、中田 秀雄(なかた ひでお)36歳サラリーマン。16歳の息子と2人暮らし。
残業で深夜に帰宅したとき、息子・真央(まお)が男と性行為をしている姿を目撃してしまう!
【注意】BL表現、性描写がかなりあります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる