目覚めた世界で光の眷属の次代盟主とかいう超絶美人に迫られているのだが!?

九條 連

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第4章

世界の調和と盟主の役割(3)

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 嘘だろ、俺。盛りまくってる第二次性徴期まっただなかのガキじゃあるまいし、なんでこんな、精力剤まとめて何本か飲んじゃいました、みたいなことになってるんだ!?

「あ~、っと、その、やっぱもう少し横になってたほうがいいんじゃないか? 身体、しんどいだろ? それにその、なんかやけに顔も赤いし。熱があるなら無理はしないほうがいい。な?」

 あきらかに声が上擦ってて、なんかもう、自分ながらやましさといやしさ満載で、いろいろ挙動がおかしかった。だが、とにかくこのままではダメなことは間違いない。己の中の理性を総動員して、密着状態を解こうとした。自分で自分を褒めてもいいくらい立派だったと思う。相手がいるいないはともかくとして、リュシエルはいま、病人なのだから。
 それなのに肝心の劣情対象となっている張本人が、こちらの理性を試すかのように自分からしがみついてきた。

「ちょっ!?」
「いやだ。もう少し、このままでいたい」


 いやいやいや、だからこれ以上はマジでヤバいんだってぇえぇぇぇっ!


 なんとか引き剥がそうとする俺と、絶対に離れまいとしがみついてくるリュシエル。病人相手に本気で抵抗することもできず、揉み合ううちにバランスを崩して押し倒されてしまった。折り重なったのが上半身だけだったのがせめてもの幸い……と言っていいのか。

 短い攻防の末に勝利したリュシエルは、意地でも離れるものかと俺の胸に顔をうずめる。そうなってしまうと、もう完全に降参するしかなかった。抵抗を諦めて、胸の上にある背中をそっと撫でた。

 これは毛並みのいい血統証つきの犬か猫。これは毛並みのいい血統証つきの犬か猫。

 自分の中で暴れ狂う獣の衝動を抑えるために、心の中でただひたすら呪文か念仏のように唱えつづける。その合間に、「クッソ、おなじ男なのになんでこんないい匂いすんだよっ!」と悪態をついた。


「……気持ちいい。エルディラントと触れ合っているようだ」
 リュシエルがうっとりと囁いた。

 ええ、まあそうですね。中身はともかく、あなたが押し倒して抱きついてるのは、あなたの恋人の躰ですから。

 内心で皮肉たっぷりに返したところで、はたと気がついた。
 ん? あれ? そうだよな、恋人同士なんじゃん、このふたり。特殊な生まれ、特殊な立場で最初から相手が決まっていたとはいえ、それでも互いに好き合って良好な関係を築いていた。
 いや、もちろんそれははじめからわかってたことなんだが、その片割れの躰を借りてる立場としては、完全に他人事として見てたというか。けど、当人たちにとっては、あたりまえのように当事者同士なわけで……。

 あ~、なんか、いろいろわかった気がする。


「もしもし、リュシエルさんや」

 ムードをだいなしにすることを承知のうえで、というか、むしろそれを狙った口調で声をかけた。案の定、リュシエルはムッとした顔でこちらに顔を向ける。その顔が、うっすらと上気していた。

 やっぱな。やっぱそうだよ、そういうことだよ。

 納得したことで、ちょっとした安堵感が胸の中にひろがった。
 いましがたの衝動は、俺ではなくて、エルディラントのものだったということである。なんならいまも、リュシエルには気づかれてないだけで気合い入っちゃったままだけど。なにがって、ナニが。
 そりゃそうだわ。健全な大人の男が、恋人とひとつ屋根の下で何ヶ月も暮らして、なにもないわけがない。プラトニックなほうがどうかしてる。神様だって、そこはふつうに愛を交わすだろう。日本でも北欧でもギリシャでも、神話の中の神々は、愛して憎んで嫉妬してと、人間くさく生々しく描かれていた。

 そしてもうひとつ。
 さっきは突然湧き起こった衝動に狼狽うろたえたが、それはそれとして、たしかにこうして触れ合っていると気持ちがいいんである。肉欲的なものはさておき、身体が楽というか、癒やされるというか。そこから導き出される結論と言えば――
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