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第2章
俺は死んじまっただ?(8)
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「たしかに、俺のいた世界の平均寿命から考えても、相当長寿だよな。まあ、時間の長さが俺のいた世界とおなじかどうかわからないけど。俺らの世界だと、人間の寿命は大体八〇年前後ってとこだったな」
「こちらでも、人界の者らの平均寿命はそのぐらいと聞いている」
「そうか。こっちの人たちも、そのぐらいなんだな。だとしたら、時間の長さも大体おなじなのかも。けど、普通の人間はともかくとして、天界の人たちもかなり長生きとはいえ、一応寿命はあるんだな」
「ある。普通に老いもすれば、生命に限りもある。そうでなければ、世の理に反することになる」
八〇〇年でも充分規格外ですけどね、とは思ったが、こっちの世界では少しもおかしなことではないらしい。
「え~と、ちなみにおたくとこの躰の持ち主は、いま何歳くらい?」
「我は二百三十五歳だ。エルディラントは二百七十九歳になる」
あ~、やっぱそんな感じになるわけですねぇ。
大体の予想はしていたが、実際に数字を聞くとかなりエグいものがある。
すげぇな、もとの世界だったら俺、軽く三回か四回は人生やりなおしてるわ。けど、こっちの寿命で換算すると、銀髪美人は二十三、四で俺の躰の持ち主は二十七、八って感じになるのか。そうするとまあ、見た目のとおりになるんだろうな。たぶん。
「しかしいまの話からすると、あんたとあんたの恋人は、政略結婚っぽい感じになるってことだよな。それってなんか、聞きようによっちゃ人身御供っぽくないか?」
ふたりとも次期盟主ってことだったし、世界の均衡を保つために、当人の意思に関係なく相手が決められているということなのだから。
だが案の定、銀髪美人には意味が通じなかったようで、きょとんとしていた。
「ひとみ、ごくう……?」
「あ~、つまり、だれかを自由に好きになる権利を生まれながらに剥奪されて、一族の命運までたったひとりで背負わされるって、俺からすると、かなり人権侵害に近い印象あるなって。なんか、言いかた悪いけど、人柱っぽくないか?」
「ひとばしら……。盟主に選ばれるのは、とても栄誉なことなのだぞ?」
「いや、そりゃそうだろうけどよ、その名誉と引き替えに人生捧げさせられるって、しんどくねえの?」
銀髪美人は、ますます不思議そうに首をかしげた。
「それでなにか、不都合なことがあるのか?」
なにがどうつらいことなのか、まったくわからないという様子だった。本人がなんとも思ってないなら、べつにいいんだけどね。いいんだけど……。
「自分の意思に関係なく、将来とか結婚相手が決められるって、嫌じゃねえの? まあ、そういうものとして育てられたんなら、疑問を挟む余地もなかったのかもしれないけどな。っていうかさ、こっちの世界の人たちって、恋愛とかしない感じ? とくに天界の人」
「恋愛は皆、普通にしている」
天界も人界も、そこは変わらないという。
「じゃあ、結婚だけ別とか?」
「別、とは?」
「ん~? だから恋愛は自由だけど、結婚は決められた相手と、みたいな」
「そのようなことはない。皆、好いた者同士で婚姻を結んでおる」
答えたところで、ようやく俺の言わんとしていることに気づいたようだった。
「つまり、俺が言ってるのはそういうこと」
銀髪美人は不服そうに口を引き結んだ。
「我は自分にさだめられたすべてを、つらいと思ったことも嫌だと思ったこともない。むしろ、幸運だったと思っている。そうでなければ、エルディラントと出逢うことはできなかったのだからな」
仮に出逢っていたとしても、次期盟主として選ばれていなければ、婚姻を結ぶことはかなわなかったのだという。
「こちらでも、人界の者らの平均寿命はそのぐらいと聞いている」
「そうか。こっちの人たちも、そのぐらいなんだな。だとしたら、時間の長さも大体おなじなのかも。けど、普通の人間はともかくとして、天界の人たちもかなり長生きとはいえ、一応寿命はあるんだな」
「ある。普通に老いもすれば、生命に限りもある。そうでなければ、世の理に反することになる」
八〇〇年でも充分規格外ですけどね、とは思ったが、こっちの世界では少しもおかしなことではないらしい。
「え~と、ちなみにおたくとこの躰の持ち主は、いま何歳くらい?」
「我は二百三十五歳だ。エルディラントは二百七十九歳になる」
あ~、やっぱそんな感じになるわけですねぇ。
大体の予想はしていたが、実際に数字を聞くとかなりエグいものがある。
すげぇな、もとの世界だったら俺、軽く三回か四回は人生やりなおしてるわ。けど、こっちの寿命で換算すると、銀髪美人は二十三、四で俺の躰の持ち主は二十七、八って感じになるのか。そうするとまあ、見た目のとおりになるんだろうな。たぶん。
「しかしいまの話からすると、あんたとあんたの恋人は、政略結婚っぽい感じになるってことだよな。それってなんか、聞きようによっちゃ人身御供っぽくないか?」
ふたりとも次期盟主ってことだったし、世界の均衡を保つために、当人の意思に関係なく相手が決められているということなのだから。
だが案の定、銀髪美人には意味が通じなかったようで、きょとんとしていた。
「ひとみ、ごくう……?」
「あ~、つまり、だれかを自由に好きになる権利を生まれながらに剥奪されて、一族の命運までたったひとりで背負わされるって、俺からすると、かなり人権侵害に近い印象あるなって。なんか、言いかた悪いけど、人柱っぽくないか?」
「ひとばしら……。盟主に選ばれるのは、とても栄誉なことなのだぞ?」
「いや、そりゃそうだろうけどよ、その名誉と引き替えに人生捧げさせられるって、しんどくねえの?」
銀髪美人は、ますます不思議そうに首をかしげた。
「それでなにか、不都合なことがあるのか?」
なにがどうつらいことなのか、まったくわからないという様子だった。本人がなんとも思ってないなら、べつにいいんだけどね。いいんだけど……。
「自分の意思に関係なく、将来とか結婚相手が決められるって、嫌じゃねえの? まあ、そういうものとして育てられたんなら、疑問を挟む余地もなかったのかもしれないけどな。っていうかさ、こっちの世界の人たちって、恋愛とかしない感じ? とくに天界の人」
「恋愛は皆、普通にしている」
天界も人界も、そこは変わらないという。
「じゃあ、結婚だけ別とか?」
「別、とは?」
「ん~? だから恋愛は自由だけど、結婚は決められた相手と、みたいな」
「そのようなことはない。皆、好いた者同士で婚姻を結んでおる」
答えたところで、ようやく俺の言わんとしていることに気づいたようだった。
「つまり、俺が言ってるのはそういうこと」
銀髪美人は不服そうに口を引き結んだ。
「我は自分にさだめられたすべてを、つらいと思ったことも嫌だと思ったこともない。むしろ、幸運だったと思っている。そうでなければ、エルディラントと出逢うことはできなかったのだからな」
仮に出逢っていたとしても、次期盟主として選ばれていなければ、婚姻を結ぶことはかなわなかったのだという。
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