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7章 ~エアリー視点~
しおりを挟む本当にミシュアが私を追放しようとしたのか。簡単には受け入れられません。ミシュアと再び顔を合わせたとき、何と声をかければよいのでしょう。答えが出せないまま、ロイスの背中を見つめていました。
「そろそろだな」
ロイスの言葉で目線を遠くにやると、そびえたつ尖塔が目に入りました。デニスミール王国のシンボル。私の新しい住家となるはずの城。
「このまま城まで突っ切りますか?」
隣でレイが言いました。ロイスの馬と歩調を合わせています。
「少なくともレイは無理だろう。お尋ね者として城の兵士たちが探し回っているはずだ。無警戒に飛び込めば袋叩きに遭うぞ」
「でしょうね。それじゃあ俺はここでお役御免ということで」
レイが馬のスピードを緩め、後方に下がりました。
「いや、ちょっと待ってくれ。もう少し協力してほしい」
ロイスが言い、馬の足を完全に止めました。
「ロイス、どうしましたか?」
私が尋ねても、ロイスは前を向いたまま返事をしてくれません。
「城のほうから誰かやって来ますね」
レイが追い付いてきて言いました。
「どうやらうちの兵士だな」
ロイスが呟きました。
「ロイス王子。お帰りなさいませ」
城の兵士は全く労いの気持ちを感じない態度で言いました。
「城を空けてすまなかった。この通り、エアリーが見つかった。捜索は終了してくれ」
ロイスの言葉に兵士は首を傾げました。私のほうを訝しげに睨んできます。
「なるほど。確かにエアリー様によく似た方だ。ですが、本当にエアリー様だという証拠はありますかな?」
「なんだと」
「ミシュア様がこう申されました。『近頃エアリーの様子がどうもおかしい。ロイス王子を誑かしているようだ。以前のエアリーならそんなことはなかった。別人がなりすましているのかもしれない』と」
兵士は虚ろな表情で言いました。様子がおかしいのはどう見ても兵士のほうです。
「何を言っているんだ。このエアリーが別人だなんて、そんな出まかせを信じたのか」
「ミシュア様を侮辱するのは止めろ!」
突然兵士が怒り出し、武器を振り上げて襲い掛かってきました。
「危ない!」
レイが飛び出し兵士の攻撃を受けました。さらに反撃し兵士は動かなくなりました。
「いったいどういう事でしょうね」とレイ。
「分からない。とにかくミシュアと話をする。一気に城まで行くぞ」
ロイスがレイに声を掛けます。
「俺はあなたの部下じゃないんですけどね」
二人は馬を走らせ、城下町へ飛び込んでいきました。私はただただ恐ろしく、ロイスにしがみついていました。
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