6 / 10
6章 ~ロイス視点~
しおりを挟む翌朝。ベッドから降り部屋から出ると、レイがニヤニヤしながら立っている。
「夕べは楽しめましたか? ふかふかのベッドがある綺麗な部屋で」
「なんだ、自分だけ宴会場で一晩過ごしたのを根に持ってるのか。それはすまない」
昨晩、宿の主人に部屋を用意してくれないかと頼んだら二つ返事で上等な部屋に案内された。上客用に確保してあったようだ。エアリーと俺はその部屋で眠った。
「……冗談が通じていないみたいですね」
レイはつまらなそうに去っていった。よく分からない。
「ロイス、どうかしましたか」
エアリーが部屋から顔を覗かせた。目を覚ましたらしい。
「レイがニヤニヤしながら立っていた。よく分からないことを言い残して宴会場に戻っていった」
「何か冗談でも思いついたのでしょう。よくあることです。放っておけばよろしいかと」
エアリーはそっけなく言った。親密さを感じさせる言い回しにレイへの黒い感情が沸き起こった。
「さあ、そろそろ出発しようか」
俺は話題を変えた。レイの話はどうでもいい。
「ええ。すぐに準備します」
エアリーはてきぱきと身の回りを片付け始める。
それから数時間後。俺はエアリーを自分の後ろに乗せて馬を走らせている。前方にはレイが操る馬が見える。
「城に帰るのはいいですけど、ロイス王子はどうするつもりなんです?」
レイが叫ぶ。
「指輪に詳しい奴に話を聞く。おそらくそいつが今回の騒動を起こした」
「誰なんですか、その迷惑な奴って」
「レイが知っているとは思えないが、ミシュアという女だ」
考案の言葉はエアリーに言い聞かせるように呟いた。
「ミシュア!?」
案の定、エアリーが大きく反応する。
「エアリー、あまり動かないでくれよ。馬が暴れる」
「そう言われましても……どうしてミシュアが……」
エアリーが消え入りそうな声で言う。
「まだ確実にそうと決まったわけじゃない。情報を組み合わせていくと、ミシュアが一番怪しいと言うだけだ」
俺は嘘を付いた。エアリーを安心させるために。自分のなかでは、犯人はミシュアだと確信している。
「指輪の話を俺にしてくれたのはミシュアだ」
「それだけでミシュアを疑うのですか。私のために尽くしてくれているミシュアを」
「どうであれ本人に聞いてみればわかるさ。さあ、飛ばしていくぞ」
馬のスピードを上げ、レイを追い抜く。
「きゃっ」
エアリーが悲鳴をあげる。
「楽しそうでなによりですね。まるでピクニックのようだ」
レイの皮肉を聞き流し、俺は昨日通ってきたばかりの道を戻る。
51
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
【完結】27王女様の護衛は、私の彼だった。
華蓮
恋愛
ラビートは、アリエンスのことが好きで、結婚したら少しでも贅沢できるように出世いいしたかった。
王女の護衛になる事になり、出世できたことを喜んだ。
王女は、ラビートのことを気に入り、休みの日も呼び出すようになり、ラビートは、休みも王女の護衛になり、アリエンスといる時間が少なくなっていった。
【完結】4公爵令嬢は、この世から居なくなる為に、魔女の薬を飲んだ。王子様のキスで目覚めて、本当の愛を与えてもらった。
華蓮
恋愛
王子の婚約者マリアが、浮気をされ、公務だけすることに絶えることができず、魔女に会い、薬をもらって自死する。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
愛しき我が子に捧ぐ
夜瑠
恋愛
政略結婚だと分かっていた。他に愛する人が居ることも自分が正妻に選ばれたのは家格からだとも。
私だって貴方の愛なんて求めていなかった。
なのにこんな仕打ちないじゃない。
薬を盛って流産させるなんて。
もう二度と子供を望めないなんて。
胸糞注意⚠本編3話+番外編2話の計5話構成
【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる