小国の王女は野蛮な大国の王子との婚約で国を救う

終章

翌日の朝、ベイル王子は軍事施設の廃材置き場で死んでいるのが見つかりました。体は損傷が激しく即死だったそうです。

大国メルガルドは大混乱に陥るかと思いきや、すぐさまクライスとその仲間たちが実権を握り、メルガルドは平穏を取り戻しました。


「セシルには色々と迷惑をかけたね」

メルガルド王家の紋章を胸に付けたクライスが話しかけてきました。マントが風でたなびいています。

「気にしないで。私はクライスに会えただけで十分よ」

私は屋上庭園の花壇を眺めながら言いました。ランシオン産の品種が植えられていて馴染み深い花壇に変わっています。

「十分なものか。まだまだこれからだよ、ランシオンとメルガルドは。もちろん僕たちもね」

気付くとクライスが隣に来ていました。こちらをじっと見つめています。

「そう、これからだよね」

私もクライスを見つめます。

「これからはずっと一緒だ」

そう言うとクライスは花壇に顔を向けてしまいました。

「期待したのに」

「え、何だって。風が強くて聞こえなかった」

「何でもないわ」
　
焦る必要はありませんでした。幸せはこれからも続いていくのだから。