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〈初めての誕生日プレゼント〉前編
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1月7日の純子ちゃんの誕生日当日……
僕達は播磨屋の2階に集合して四人でお祝いをした。
「純子」「純子ちゃん」「姉ちゃん」
「お誕生日おめでとう~!」
「ありがとう~」
ヒロからの誕生日プレゼントである箱根駅伝の記事が載った新聞と、浩くんからの手作りの首飾りを受け取って嬉しそうに微笑む純子ちゃんに、僕は自分のプレゼントを渡すのが恥ずかしかった。
ご時世的に探すのには苦労したが、ヒロのような努力のプレゼントではなくて買った物だし、半年かけたヒロと比べたらとモジモジしていたら……
ヒロが気を使って「浩! 下に残ってた料理受け取りに行くぞ~」と二人きりにしてくれた。
「コレ、お誕生日祝い……大したものじゃないんだけど……」
「わ~ありがとう! 素敵なスミレ柄の傘……」
「す、スミレの花言葉は『小さな幸せ』らしくて……ヒロみたいに大きな幸せじゃないから余り嬉しくないかもだけど……」
「そんなことないわ! 私、スミレ好きだから嬉しい! 早く雨が降らないかしら~早く傘が使いたいな……今まで雨が嫌いだったけれど雨が好きになれそう!」
その言葉が嬉し過ぎて、心の声が思わず口から出てしまった。
「傘になれたらいいな……そしたら純子ちゃんを冷たい雨から守ってあげられるのに……」
「え? 今、なんて?」
「な、何でもないよ」
僕は耳まで真っ赤になってしまったが、聞こえていないようで安心した。
傘をクルクル回して部屋の中で嬉しそうにはしゃぐ純子ちゃんは本当に可愛らしくて……
いつもは実年齢より上に見えるのに、今日だけ幼く見えた。
「源次さん、本当にありがとう! コレどうやって閉じるのかしら?……あれ?…………痛っ」
傘を閉じようとして指を挟んでしまったようで、僕は慌てて純子ちゃんの手のケガを確認した。
「だ、大丈夫? 血、出てない?」
「だ、大丈夫、です……」
手を握った状態での至近距離が余程恥ずかしかったのか……手を離してからも純子ちゃんの顔は耳まで真っ赤になっていた。
「……ご、ごめんね」
「私の方こそ、傘の畳み方も下手なんてお恥ずかしい……」
お互いペコペコお辞儀をしていたら、ヒロ達が入ってきて僕に思わぬ事を言ってきた。
「源次~静子おばさんも言うてたんやけど……今日、俺の部屋に泊まっていかへん?」
初めて泊まるヒロの部屋は、純子ちゃんと浩くん達の隣の部屋でドキドキしたが……
二人が寝静まった頃、僕達は男同士の秘密の話をした。
「お前さ……純子のこと好きやろ?」
「は、はあ? 何言ってんだよ、お、お前こそどうなんだよ! 箱根駅伝で純子ちゃんと抱き合っててアベックみたいだったぞ!」
「あれは従兄妹だからやろ? ただの家族の抱擁で……って気にするってことはやっぱりお前、純子のこと好きやろ?」
「ち、違うよ! 僕はただ……純子ちゃんに幸せになって欲しくて……い、妹に似てるんだ……歌が上手い所も、名前も……」
僕は自分に嘘をついた後ろめたさから、今まで思っていた本当の事を言った。
「妹?」
「僕には2つ下の妹がいたんだ……純子ちゃんと同じ純て漢字が入った純奈っていう名前の妹で……小さい頃から歌が大好きで、透き通るキレイな歌声で……近所でも将来は歌手になるんじゃないかと評判だったよ」
「そりゃ初耳じゃのう! お近付きになりたいから今度紹介してく……」
「死んだんだ……1931年の9月21日にあった西埼玉地震で」
「それは…………ふざけてすまん」
「直下型の地震でさ……川に沿った比較的地盤が軟らかい場所が液状化したり、場所によっては関東大震災の時より被害が酷くて多くの建物が潰れたんだ」
「俺はその頃大阪やったけど、そんなに大変やったとは……」
「住んでた家はなんとか大丈夫だったんだけどね……その年は純奈が丁度数え年で7つになる年で、9月21日は七五三の着物を仕立てに行く日だったんだ……たまたま行ってた場所が被害が酷い地域で、それで……」
僕達は播磨屋の2階に集合して四人でお祝いをした。
「純子」「純子ちゃん」「姉ちゃん」
「お誕生日おめでとう~!」
「ありがとう~」
ヒロからの誕生日プレゼントである箱根駅伝の記事が載った新聞と、浩くんからの手作りの首飾りを受け取って嬉しそうに微笑む純子ちゃんに、僕は自分のプレゼントを渡すのが恥ずかしかった。
ご時世的に探すのには苦労したが、ヒロのような努力のプレゼントではなくて買った物だし、半年かけたヒロと比べたらとモジモジしていたら……
ヒロが気を使って「浩! 下に残ってた料理受け取りに行くぞ~」と二人きりにしてくれた。
「コレ、お誕生日祝い……大したものじゃないんだけど……」
「わ~ありがとう! 素敵なスミレ柄の傘……」
「す、スミレの花言葉は『小さな幸せ』らしくて……ヒロみたいに大きな幸せじゃないから余り嬉しくないかもだけど……」
「そんなことないわ! 私、スミレ好きだから嬉しい! 早く雨が降らないかしら~早く傘が使いたいな……今まで雨が嫌いだったけれど雨が好きになれそう!」
その言葉が嬉し過ぎて、心の声が思わず口から出てしまった。
「傘になれたらいいな……そしたら純子ちゃんを冷たい雨から守ってあげられるのに……」
「え? 今、なんて?」
「な、何でもないよ」
僕は耳まで真っ赤になってしまったが、聞こえていないようで安心した。
傘をクルクル回して部屋の中で嬉しそうにはしゃぐ純子ちゃんは本当に可愛らしくて……
いつもは実年齢より上に見えるのに、今日だけ幼く見えた。
「源次さん、本当にありがとう! コレどうやって閉じるのかしら?……あれ?…………痛っ」
傘を閉じようとして指を挟んでしまったようで、僕は慌てて純子ちゃんの手のケガを確認した。
「だ、大丈夫? 血、出てない?」
「だ、大丈夫、です……」
手を握った状態での至近距離が余程恥ずかしかったのか……手を離してからも純子ちゃんの顔は耳まで真っ赤になっていた。
「……ご、ごめんね」
「私の方こそ、傘の畳み方も下手なんてお恥ずかしい……」
お互いペコペコお辞儀をしていたら、ヒロ達が入ってきて僕に思わぬ事を言ってきた。
「源次~静子おばさんも言うてたんやけど……今日、俺の部屋に泊まっていかへん?」
初めて泊まるヒロの部屋は、純子ちゃんと浩くん達の隣の部屋でドキドキしたが……
二人が寝静まった頃、僕達は男同士の秘密の話をした。
「お前さ……純子のこと好きやろ?」
「は、はあ? 何言ってんだよ、お、お前こそどうなんだよ! 箱根駅伝で純子ちゃんと抱き合っててアベックみたいだったぞ!」
「あれは従兄妹だからやろ? ただの家族の抱擁で……って気にするってことはやっぱりお前、純子のこと好きやろ?」
「ち、違うよ! 僕はただ……純子ちゃんに幸せになって欲しくて……い、妹に似てるんだ……歌が上手い所も、名前も……」
僕は自分に嘘をついた後ろめたさから、今まで思っていた本当の事を言った。
「妹?」
「僕には2つ下の妹がいたんだ……純子ちゃんと同じ純て漢字が入った純奈っていう名前の妹で……小さい頃から歌が大好きで、透き通るキレイな歌声で……近所でも将来は歌手になるんじゃないかと評判だったよ」
「そりゃ初耳じゃのう! お近付きになりたいから今度紹介してく……」
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