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追憶編
○追憶編②~夢の始まり~
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※これはプロローグ後半と繋がっているお話です。プロローグを読んでからの方が読みやすいかもしれません。
「私の曲が優秀賞!?」
ー高校1年生の春ー
偶然見た公募雑誌に、高校生のみが応募できる作曲コンクールが載っていた。
歌詞や歌入りのシンガーソング部門と、曲のみのインストゥルメンタル部門という2部門での募集内容だった。
私は作曲を始めて間もなかったが、自分を試してみようという怖いもの見たさで初めて作った『空を見上げて』という曲をカセットテープに録音し、インストゥルメンタル部門に応募した。
ピアノだって上手くないし、作曲の知識も全くない、冴えないメガネでショートカットのただの女子高生……
そんな私の元に届いた一通の封筒。
『篠田《しのだ》春香《はるか》様』と書かれたその封筒の中に入っていた通知を見て、私は愕然としていた。
なんとなく……ただ無我夢中で初めて作った曲が賞をとるなんて有り得ない。
「全国に流れます?」
受賞した各曲が次の雑誌の発行日以降にラジオで流れるそうで、紙には日時と放送局、周波数と番組名が記載されていた。
「つきましては、受賞コメント!?……」
私は戸惑ってしまった。
作曲も手探りで訳も分からず作ったのに、作文なんて……ましてや自分のことを語るなんて大の苦手だ。
結局締め切り間際まで悩んだが、一日がかりで無理やり文章をひねりだした。
~~~~~~~~~~
この度はインストゥルメンタル部門の優秀賞をいただき本当にありがとうございました。
この曲は初めて作った曲なので、とてもびっくりしたし、とても嬉しいです。
私はピアノも下手で作曲の知識もないので、ただ伝えたいという思いだけを頼りに必死に作りました。
この曲には、「落ち込むこともあるけれど、自分の力を信じてまっすぐ歩いていこう」という気持ちが込められていると思います。
これからも自分を信じて、少しでも前に進めるよう、自分に何ができるかを探しながら頑張っていこうと思います。
~~~~~~~~~~
ラジオの日、私は自分の曲が受賞するという事実が信じられなくて番組を録音した。
まずは去年の優秀賞、最優秀賞の紹介があり、曲が流れ「先輩はすごいなぁ」と溜め息をついた後、
「続いてはインストゥルメンタル部門優秀賞の発表です……」という言葉に息を飲む。
その後は夢の中にいるようで、よく覚えていないというか現実にいる感じがしなかった。
なんだか心の奥を見られて恥ずかしいような嬉しいような不思議な気分だった。
「投稿した名前……学校の名前のアナグラムにしといてよかった」
中学に入ってから推理漫画や暗号が好きになった私は、高校の名前をアルファベットにして入れ替え、即席のアーティスト名を作っていた。
その数日後、自宅に一本の電話がかかってきた。
「先日のラジオ聞きました~突然ですが……『空を見上げて』をある番組の詩の朗読のBGMとして使わさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「……え?…………あ、はい……どうぞ……あんな曲でよろしければ」
夢の中にいるのではないかと耳を疑った。
私は今まで誰かに頼られたり何かを依頼されたことがなかったので、少しでも誰かの、何かのお役に立てたのが嬉しかった。
ピンポーン……
そんな私の元に届いたのは、またしても一通の封筒。
応募コンクールの受賞を祝福してくれた文章とともに挟まっていたのは、優秀賞の副賞である音楽商品券だった。
もちろん使えるはずがない。
バイトをしたことがない私にとって、それは初めて自分で稼いだお給料代わりの特別な宝物になった。
そして、その数日後……
高校に着いた私を待っていたのは、ある意外な依頼だった。
「私の曲が優秀賞!?」
ー高校1年生の春ー
偶然見た公募雑誌に、高校生のみが応募できる作曲コンクールが載っていた。
歌詞や歌入りのシンガーソング部門と、曲のみのインストゥルメンタル部門という2部門での募集内容だった。
私は作曲を始めて間もなかったが、自分を試してみようという怖いもの見たさで初めて作った『空を見上げて』という曲をカセットテープに録音し、インストゥルメンタル部門に応募した。
ピアノだって上手くないし、作曲の知識も全くない、冴えないメガネでショートカットのただの女子高生……
そんな私の元に届いた一通の封筒。
『篠田《しのだ》春香《はるか》様』と書かれたその封筒の中に入っていた通知を見て、私は愕然としていた。
なんとなく……ただ無我夢中で初めて作った曲が賞をとるなんて有り得ない。
「全国に流れます?」
受賞した各曲が次の雑誌の発行日以降にラジオで流れるそうで、紙には日時と放送局、周波数と番組名が記載されていた。
「つきましては、受賞コメント!?……」
私は戸惑ってしまった。
作曲も手探りで訳も分からず作ったのに、作文なんて……ましてや自分のことを語るなんて大の苦手だ。
結局締め切り間際まで悩んだが、一日がかりで無理やり文章をひねりだした。
~~~~~~~~~~
この度はインストゥルメンタル部門の優秀賞をいただき本当にありがとうございました。
この曲は初めて作った曲なので、とてもびっくりしたし、とても嬉しいです。
私はピアノも下手で作曲の知識もないので、ただ伝えたいという思いだけを頼りに必死に作りました。
この曲には、「落ち込むこともあるけれど、自分の力を信じてまっすぐ歩いていこう」という気持ちが込められていると思います。
これからも自分を信じて、少しでも前に進めるよう、自分に何ができるかを探しながら頑張っていこうと思います。
~~~~~~~~~~
ラジオの日、私は自分の曲が受賞するという事実が信じられなくて番組を録音した。
まずは去年の優秀賞、最優秀賞の紹介があり、曲が流れ「先輩はすごいなぁ」と溜め息をついた後、
「続いてはインストゥルメンタル部門優秀賞の発表です……」という言葉に息を飲む。
その後は夢の中にいるようで、よく覚えていないというか現実にいる感じがしなかった。
なんだか心の奥を見られて恥ずかしいような嬉しいような不思議な気分だった。
「投稿した名前……学校の名前のアナグラムにしといてよかった」
中学に入ってから推理漫画や暗号が好きになった私は、高校の名前をアルファベットにして入れ替え、即席のアーティスト名を作っていた。
その数日後、自宅に一本の電話がかかってきた。
「先日のラジオ聞きました~突然ですが……『空を見上げて』をある番組の詩の朗読のBGMとして使わさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「……え?…………あ、はい……どうぞ……あんな曲でよろしければ」
夢の中にいるのではないかと耳を疑った。
私は今まで誰かに頼られたり何かを依頼されたことがなかったので、少しでも誰かの、何かのお役に立てたのが嬉しかった。
ピンポーン……
そんな私の元に届いたのは、またしても一通の封筒。
応募コンクールの受賞を祝福してくれた文章とともに挟まっていたのは、優秀賞の副賞である音楽商品券だった。
もちろん使えるはずがない。
バイトをしたことがない私にとって、それは初めて自分で稼いだお給料代わりの特別な宝物になった。
そして、その数日後……
高校に着いた私を待っていたのは、ある意外な依頼だった。
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