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続4
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捜査官の努力の成果で、長期に渡り追い続けていたある組織の幹部が捕縛された。
仲間に取り調べを受けている様子を覗き見るための部屋に遅れて入る。
「お手柄だったな。よく尻尾を掴んだ」
「いえ、そんな」
情報を得た手段は誰にも話していない。話せるはずもなかった。
隣の部屋から「で、アジトの場所はどこなんだ?」と仲間の声が聞こえてくる。
「それを話したら、減刑してくれるのは本当なんだろうな?」
幹部の声が聞こえてくる。
その声に、捜査官は情報屋の手引きで顔も見えない相手に散々責められた記憶が流れるように浮かんだ。
(まさか……そんな……)
唾を飲み込む。息が上がってくる。胎がじわじわと疼いてお尻がきゅっ、と締まるのを感じた。
「交渉成立だな」
すぐ横の仲間の声がどこか遠く聞こえる。
使用が終わった部屋からは出ていく必要がある。ゾロゾロと仲間たちと並んで部屋の外に出ると、ちょうど幹部が手錠を引かれながら牢に連れて行かれるところだった。
(バレるはずはない。向こうだって顔も知らないのだから)
そう言い聞かせるも自分は明らかに動揺していた。
「おい、どうした?体調でも悪いのか」
「あっ、いえ、大丈夫です」
心配した仲間の声に思わず答えてハッとした。
そんな、たったこれだけで気づくはずはない。しかし幹部の男に視線をやる事もできない。
目を伏せて通り過ぎるのを待っていると、ふいに男がバランスを崩したようによろけてきた。
咄嗟にそれを受け止めると耳に吹き込むように囁かれた。
「可愛いねぇ、捜査官さん。また遊んでくれよ」
「お前、何してる!」
「いや、こんな手元を拘束されて引っ張られるからよろけたのさ」
「良いから行け!まったく、大丈夫か?」
その時平常を取り繕えたかは分からない。
あの男の言葉が周りに聞こえていたとしても、何のことかは分からないだろう。
ただ捜査官はその後何度もあの夜を思い出すことになる。甘く熱い劣情と共に。
幹部の男が減刑を受け、更に保釈金を使って解放されたことを知ってからは、何かに怯えるような、あるいは何かを待つような気持ちに翻弄された。
その日の仕事は簡単に終わった。匿名の通報を受け、ある組織の流した違法品を押収した。
仲間と別れてあとは帰路に着くだけだった。
突然陰から伸びてきた腕に掴まれて、脇道の暗がりに連れ込まれる。当然このような事態を想定した訓練は嫌というほど受けているので、拘束を逃れて相手を捕縛しようと構えた。
が、それは不発に終わった。
「覚えているか?」
耳に吹き込まれた声に、驚くほどに体が反応する。
「ぁっ……♡ゃ、やだ……♡」
「嫌だっていう顔じゃないな」
顎を掴まれて向かされた先にはたった一度すれ違っただけの顔がある。
抱かれた腰が熱くなり、体の奥がじん♡じん♡と疼いていた。
「お前のココが忘れられなくてな。また虐めても良いか?」
「っ♡♡ん♡♡だ、め……っ♡♡」
スラックスの上から尻たぶを掴んで、割れ目を指でなぞられながら言われると体を差し出したくて堪らなくなる。
「そうか、じゃあ無理やりだな」
「はぁ♡♡♡っ♡♡♡」
その後数日間、捜査官と連絡が取れず本部は暫く慌ただしくなった。
だがすぐに捜査官が自ら顔を出し、「トラブルに巻き込まれた」と説明した。
その後も度々音信不通になる事があったが、それは彼独自の情報収集だろうと仲間たちは信じて疑わなかった。
なにしろ過去の実績があるからである。
そして彼がかつて情報を掴んだある1人の男を除いて、捜査官は定期的に情報を手に入れるようになった。
仲間たちは彼を優秀な捜査官と認めていたが、その独自の捜査方法について誰1人知ることはなかった。
仲間に取り調べを受けている様子を覗き見るための部屋に遅れて入る。
「お手柄だったな。よく尻尾を掴んだ」
「いえ、そんな」
情報を得た手段は誰にも話していない。話せるはずもなかった。
隣の部屋から「で、アジトの場所はどこなんだ?」と仲間の声が聞こえてくる。
「それを話したら、減刑してくれるのは本当なんだろうな?」
幹部の声が聞こえてくる。
その声に、捜査官は情報屋の手引きで顔も見えない相手に散々責められた記憶が流れるように浮かんだ。
(まさか……そんな……)
唾を飲み込む。息が上がってくる。胎がじわじわと疼いてお尻がきゅっ、と締まるのを感じた。
「交渉成立だな」
すぐ横の仲間の声がどこか遠く聞こえる。
使用が終わった部屋からは出ていく必要がある。ゾロゾロと仲間たちと並んで部屋の外に出ると、ちょうど幹部が手錠を引かれながら牢に連れて行かれるところだった。
(バレるはずはない。向こうだって顔も知らないのだから)
そう言い聞かせるも自分は明らかに動揺していた。
「おい、どうした?体調でも悪いのか」
「あっ、いえ、大丈夫です」
心配した仲間の声に思わず答えてハッとした。
そんな、たったこれだけで気づくはずはない。しかし幹部の男に視線をやる事もできない。
目を伏せて通り過ぎるのを待っていると、ふいに男がバランスを崩したようによろけてきた。
咄嗟にそれを受け止めると耳に吹き込むように囁かれた。
「可愛いねぇ、捜査官さん。また遊んでくれよ」
「お前、何してる!」
「いや、こんな手元を拘束されて引っ張られるからよろけたのさ」
「良いから行け!まったく、大丈夫か?」
その時平常を取り繕えたかは分からない。
あの男の言葉が周りに聞こえていたとしても、何のことかは分からないだろう。
ただ捜査官はその後何度もあの夜を思い出すことになる。甘く熱い劣情と共に。
幹部の男が減刑を受け、更に保釈金を使って解放されたことを知ってからは、何かに怯えるような、あるいは何かを待つような気持ちに翻弄された。
その日の仕事は簡単に終わった。匿名の通報を受け、ある組織の流した違法品を押収した。
仲間と別れてあとは帰路に着くだけだった。
突然陰から伸びてきた腕に掴まれて、脇道の暗がりに連れ込まれる。当然このような事態を想定した訓練は嫌というほど受けているので、拘束を逃れて相手を捕縛しようと構えた。
が、それは不発に終わった。
「覚えているか?」
耳に吹き込まれた声に、驚くほどに体が反応する。
「ぁっ……♡ゃ、やだ……♡」
「嫌だっていう顔じゃないな」
顎を掴まれて向かされた先にはたった一度すれ違っただけの顔がある。
抱かれた腰が熱くなり、体の奥がじん♡じん♡と疼いていた。
「お前のココが忘れられなくてな。また虐めても良いか?」
「っ♡♡ん♡♡だ、め……っ♡♡」
スラックスの上から尻たぶを掴んで、割れ目を指でなぞられながら言われると体を差し出したくて堪らなくなる。
「そうか、じゃあ無理やりだな」
「はぁ♡♡♡っ♡♡♡」
その後数日間、捜査官と連絡が取れず本部は暫く慌ただしくなった。
だがすぐに捜査官が自ら顔を出し、「トラブルに巻き込まれた」と説明した。
その後も度々音信不通になる事があったが、それは彼独自の情報収集だろうと仲間たちは信じて疑わなかった。
なにしろ過去の実績があるからである。
そして彼がかつて情報を掴んだある1人の男を除いて、捜査官は定期的に情報を手に入れるようになった。
仲間たちは彼を優秀な捜査官と認めていたが、その独自の捜査方法について誰1人知ることはなかった。
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