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しおりを挟む都心を離れた郊外にバロック調を模した知る人ぞ知る豪邸がある。そこは国内でも有数の若き富豪が自分の欲望を満たすために用意した箱庭だった。
主人の部屋に案内されて、男は格調高い廊下を普段のスーツ姿で歩いていた。綺麗に保たれた内装で、道中に燕尾服の執事達が控える様子は正統な貴族の住まいに見えた。
彼らがそれぞれ口枷を嵌められていたり、身体のどこかに性感帯を捕える玩具を身につけさせられていなければ。
「っ……♡ふぅ……♡」
「んっ……♡くっ……♡」
ここで働く者達がどういう扱いを受けているか男は身をもって知っていた。漏れ聞こえる悩ましい声に、自分もそうされていた時の記憶が蘇る。男は「早くそうされたい」と思いながら、歩く度に股に触れるスラックスにすら身体の熱が上がるのを感じていた。
男が想定していたよりあっさりと通された部屋は豪邸の主人のプライベートルームの1つだった。
部屋の窓際で外を眺めながら煙草を吹かしていた主人は、男と執事が入室し、執事が去った後もこちらを振り向きはしなかった。
素気無い反応に男は戸惑い、どうにか彼の機嫌を伺わなければと緊張し始めた。
それを察したのか主人はこちらを振り返り、実におよそ1年ぶりに再会した男を見て、微笑んだ。
「君が何をしに来たか、態度で示せるよね?」
「っ……♡♡あ、……♡♡」
男は覚束ない足取りで主人の前に歩み出ると、両膝をつき、両手を膝の前の床について腰を軽く浮かせる体勢を取って、熱に浮かされた表情で主人を見上げた。
何度も教えられ、躾けられた「待て」の姿勢だ。
主人のたった一言で男のおよそ1年間の抵抗は霧散して、元の立場に戻ってしまった。
主人は煙を吐きながら品定めするように男を見ている。その視線にすらプレイを思い出して男の熱はどんどん上がっていった。
「あっ♡はぁっ♡♡っ……♡♡」
「どうしてほしいか言ってごらんよ」
「っ♡♡か、飼ってくださいっ♡♡また、俺のこと、っ♡♡ぺ、ペットにしてっ♡♡躾けてっ♡♡くださいっ♡♡ぃ、んっ♡♡」
ごく普通のサラリーマンの格好で、情欲に蕩けた瞳を主人に向けて、だらしなく開いた口から密かに溜め込んだ欲望を吐き出した。
それだけで体の内からゾクゾクと快感が走り、腰から脳天までが痺れて朦朧とする。
主人が愉しそうな瞳で近づいてくるのを熱い息を吐きながら犬のように待っていると、品の良い光沢を纏ったストレートチップの革靴の先を股の下に差し込まれた。
「っ♡♡♡んっ♡♡♡くぅ♡♡♡」
「腰を落としちゃダメだよ」
「あっ♡♡♡は、いっ♡♡♡っ♡♡♡ぅ♡♡♡」
主人の体系に合わせて仕立てられた皺一つないストライプのスラックスが、服を押し上げるほどに張り詰めた肉棒の先に擦れた。主人の腿と股間の境辺りに顔から撓垂れ掛かる形になる。
息を吸うと、ムスクの甘い香りと煙草の苦い煙が混ざって満たされて、頭がいっそうぼうっとした。
「はぁ……♡♡♡あ……♡♡♡ん、♡♡♡」
「それで、どうだった?ここから外に出て、一般人みたいな顔をして生活した感想は?何してたんだっけ?」
「っ♡♡♡ぁ♡♡♡♡ぇ、えいぎょう、をっ♡♡♡」
「ふーん。頑張ってたんだね。どうして戻ってきちゃったの?」
「が、がまん、できなくてっ♡♡♡っ♡♡♡」
「そうか……誰かにしてもらった?」
「ここ」と言いながら、ぐり♡とつま先で会陰を押され、「~~っっ♡♡♡♡♡」と声にならない悲鳴をあげて体をのけぞらせながら男は絶頂した。かくかくと腰が震え、快感を逃がそうと悩ましげに体をくねらせて息を吐く。パンツの中で吐き出された精液が黒いスラックスまで染みていった。
「ん♡♡♡♡う♡♡♡♡」
「ここ虐められるだけで体ビクビクさせてイっちゃいますって誰かに教えて、してもらった?」
「し、してなっ♡♡♡んあぁぁぁっ♡♡♡いぐっ♡♡♡♡いぐっ♡♡♡♡いぎますっ♡♡♡♡ん゛♡♡♡♡」
足を引いて革靴のノーズで柔らかく膨らんだ戸渡をなぞられると、前立腺がじんじんと痺れてアナルがぎゅっ、ぎゅっと締まってまた絶頂する。
顎を左手で捉えられ法悦している顔を上げさせられ舐めるように観察された。
「はぁ……♡♡ぁ……♡♡ん……♡♡」
「誰にも触らせてない?」
「っ……♡♡ぅ……♡♡」
「触らせたんだ。女?」
「あ……ち、が……っ……♡♡」
「男か。じゃあお尻使ったの?」
「っ……♡♡つ、つかい、ました……っ♡♡」
「ちんこ挿れられた?」
「っ♡♡んっ♡♡挿れ、ました……♡♡♡」
1人2人ではない。いつも我慢できなくなってドロドロになったところを名前も知らない男に挿入してもらって熱を誤魔化していた。
それを白状させられる様を、熱の籠った目で主人が見ている。外に放したペットが男に抱かれてきたことを告白させられて、その記憶に体を疼かせる様子を責めるような愉しむような表情で暴いていった。
「んっ♡♡バックで、おしりっ♡♡いっぱい、突かれましたっ♡♡♡」
「どこが一番悦かった?」
「あっ♡♡♡おくっ♡♡♡おく、されるとっ♡♡♡だめでしたっ♡♡♡ぁ♡♡♡」
思い出すとお尻の穴がひくひくと収縮して腰を落としそうになるのを何とか堪える。
「前立腺は?突いてもらわなかったの?」
「っ♡♡♡あ、そこは♡♡♡せつなくなってっ♡♡♡つらいからっ♡♡♡」
「つらい?」
「んぅ♡♡♡」と啼いて甘イキしながら男は崩れた体勢で左手を後ろについて腰を支えた。ぐっしょりと濡れた股を曝け出して腰を浮かせながら快楽に濡れた目でご主人を見上げる。
「会陰……いじめて、ほしくて……♡♡♡」
「……ふふ。そういえばどうして弄ってもらわなかったの?」
「っ……♡♡♡ご主人、様に♡♡ゆるして、もらわないとっ♡♡自分ではっ……♡♡触ってっ……♡♡♡足りなくてっ……♡♡♡んあぁぁぁっ♡♡♡♡」
ぐに、ぐにと会陰を爪先で押し込まれて、股から伝わる甘い快感にガクガクと震えながら絶頂し、遂に腰を支えられなくなってしまった。床に下半身を落とすと主人の革靴がますます食い込んでボロボロと泣きながらまたイった。
「い、ぐ♡♡♡いってぅ♡♡♡♡はぅ♡♡♡♡ん♡♡♡♡ぅ♡♡♡♡」
脳まで蕩けそうな快感にへたり込んでしまった男の股から、ようやく主人は足を引き抜いた。その刺激に男の体はビクビクと震える。
「お尻はちんこ挿れられて悦がってたのにそこは操立てしてたんだ。ふふ、変な貞操観念だな」
「くぅ♡♡♡♡ん♡♡♡♡ふぅ♡♡♡」
「そうそう。ペットになりたいんだったね」
「ぁっ♡♡♡ん♡♡♡ぅ♡♡♡」
主人は微笑んで煙草の煙を吸い込み、吐き出した。漂ってくる紫煙がじわじわと男の周囲を包んでいく。
「良いよ。飼って躾けて、また人間やめさせてあげるよ」
「っ♡♡♡ぁ♡♡♡はぁ♡♡♡」
「嬉しい?」
「ぁっ♡♡♡うれし、ですっ♡♡♡♡ぅ♡♡♡」
またペットにしてもらえる悦びに意図せず腰を揺らしながら、男は甘イキして陰茎の先端から精液を滲ませた。
主人は、自ら檻の中に帰ってきた男が表情を蕩けさせ、衣服もぐちゃぐちゃになりながら性欲に負けていく様を満足そうに見下ろしている。
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