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ワタシはナニモノ?
しおりを挟む「どういう事だよ?」
どう見てもスライム姿の私を捕まえて、ディロックは何を言っているんでしょう。
セルヴィスも怪訝な顔で問いかけています。
「いいか?スライムってのは流動生物だ。獲物を身体に取りこみ消化するが、消化器官を含めて内臓を一切もたない。どういう仕組みか知らねぇが、それは心臓すら例外じゃない。だがな、心臓の代わりともいうべき【核】が必ず身体のどこかにあるんだよ。」
えぇ、常識ですね。
スライムの体は物理攻撃が効きませんが【核】を潰せばスライムは倒す事が出来ます。ちなみに魔石は核の中にあります。この核、身体のどこにでも移動できるようですし、ゴマのようなサイズは戦闘中に見つけるのは困難ですが。
「だがな。このスライム、その【核】が見当たらねぇ。」
へぇー、そうなんですか?
………。
はあぁぁぁぁぁぁあああ!!??
え、ちょっと待ってください!?
私、スライムじゃないんですか!?
今の今までスライムだと信じて疑ってなかったのに!
最近では悪魔のプライド的にアレだけど『セルヴィスのペットのスラ犬』って喜びもあったのに、ここにきてアイデンティティーの崩壊ですか!?そんなの困りますっ
自分の全身なんて見えないから気づきませんでしたよっ!
「核が、ない?」
「ない、どこにもな。だから聞いてんだよ、本当にコイツはスライムかって。」
「……わざわざ探したこともなかったから気づかなかった。」
セルヴィスが席を立って、ディロックが両手に掬うように持つ私の傍にしゃがみ覗き込んでいます。
どうしましょうセルヴィス!私、自分が何なのかわかりませんよ?
「………核が小さすぎて見えないってことは?どこからどう見てもスライムだろ、こいつ。」
「スライムは巨大になれば家サイズにもなるが、核の大きさだけは同じなんだよ。逆に豆粒ほどのやつでも核の大きさは同じだ。見落とすわけがねぇ。」
「じゃあコイツって何?」
「わかるなら聞かねぇって。核がないことを除けばスライム以外の何物でもないんだがなー。」
私の身体がディロックの掌からセルヴィスへと移されました。
溶けるスライ……謎の生物、な私。
……もうスラ犬って固有種ってことにしませんか?謎の生物とかイヤです。
「まぁわからんもんは仕方ないか。案外、新種のスライムって可能性もあるしな。一応オレのほうでも従魔師連中にそれとなく聞いておいてやるよ。」
「……そうして。それよりこいつの体調の方が心配なんだけど。原因はわからない?」
「スライムだったら従魔師なら一度は従えてるから、誰かしらに聞けばわかったかもしれないがなぁ。おい、お前。喋れたりしないかぁ?」
無茶を言わないで下さい。口も無いのに!鳴きますけどね!
凄く怠くて仕方なかったけど触手を作るぐらい出来たので、2本をぷらーんと下に垂らして、交差させました。つまりバツ印。これ、傍から見たら岩なんかの上でうつ伏せに死んだ人のような恰好ですね。
「ククッ……さすがに喋れないってさ。」
その恰好が面白かったのでしょう。声を殺しきれずに笑ってらっしゃいますよ。ちょっと憮然としましたが、まぁ笑いを提供できたのなら良しとしましょう。
「おい!?こいつ、人の言葉が理解できるのか!?」
あら?なんだかディロックが興奮してますね。人の言葉が理解できるのなんて当然でしょう、悪魔なんで……す、から………、
し、失敗しました。私、今はスライムですよね。とっても知能が低い筈の、スライムでしたよね!
「多分出来てる、と思う。畑仕事や家事を手伝ってくれたり、こいつなりにオレを助けてくれてるし。なにより魔法が使えるよ。」
「ちょっと待て!?上級スライムにもそんな知恵のある奴はいねぇって!下手したら魔族並じゃねぇのか!?」
う゛!?
ち、違いますよ!?今は魔族じゃないですよ!?魔石を採っても美味しくないですからね!?
「知能は高いかもしれないけど、使えるのは下位の水魔法だけだから。さすがに魔族とは言えないでしょ。」
な、ないすふぉろー、セルヴィス!!
「下位……うーん、それならまぁ……。しっかしますます謎だなー。」
同意ですけど、考えてもわかりませんしねぇ。
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