9 / 34
町に行こう
しおりを挟む困りました……謎の体調不良が治りません。
「大丈夫か、お前?」
「ぴゅぃー…(駄目なようです)。」
まるで溶けた氷のようになった私に、セルヴィスが気遣った声をかけてくれます。
うぅ、セルヴィスに心配かけてしまって申し訳ないです。
あれから5日。身体はどんどん怠くなる一方でした。
今日なんかもう、どんなに気合を入れて丸まろうとしても駄目で、どうしてもヘニョンと溶けちゃいます。
溶けスラ犬ですね。
唯一の救いは病のように、体に引きずられて心まで弱らない事でしょうか。
身体はどうしようもなく怠いですが、心の中は元気いっぱいです。というか、身体が動かないストレスの分、心の中はいつもより元気なぐらいです。
これって病気なんでしょうかねぇ。スライムが病気にかかるのかすら全然知りませんし、セルヴィスも同じようです。
薬はありますが、スライムって普通の薬を飲んで平気なんでしょうか。そもそも熱もないし何の薬を飲めばいいのかもわかりませんけど。
セルヴィスは私を持ち上げて、眉根を寄せて何か考え込んでいます。
どうしました、セルヴィス?
「───決めた。スライム、町に行こう。」
はい?
え、今なんて言いました?
「町には冒険者ギルドがあるから。そこでなら、知り合いの従魔師に連絡が取れる。従魔師にならお前の不調の原因もわかるかもしれないし。」
ああーなるほどー従魔師ですかー………って、えぇぇぇ!?
知・り・あ・い!?
「ぴゅいいい(ちゃんと誰かと交流してたんですか)!!??」
私がスライムになって3か月、誰かと交流する姿なんて一度も見ていませんよ!?
町に行ってたんですか!?なんでそこで住まないんです!?
っていうかもしかしてセルヴィス、孤独じゃなかった!?お友達いた!?
一瞬あまりの衝撃に、だるい身体の事も忘れて大声(大鳴き?)しました。
2秒後にはまた溶けスラ犬になりましたが……。
「こら、無茶するな。」
軽く叱られました。
心配して怒られるなんて、いつぶりでしょう。100年以上?
身体は怠いのに心はホンワカです。
……困りましたねぇ。セルヴィスってば、優しすぎです。
私は傍にいさせてくれるだけで満足なのに、スライムになってからは優しいし甘やかすし、挙句の果てには私の為にわざわざ町に行くだなんて。
私の心が満たされ過ぎで溺れちゃいますよ?
昔ぐらい程々に冷たいぐらいが私には丁度良いんです。
……お礼をしたくてもスラ犬に出来ることなんて寄り添うぐらいで、時々胸が苦しくなっちゃうんですから。
。 ゜ 。 〇 。 ゜ 。
やって来ました人間の町!!
空から遠目に見たことはありますが、来るのなんて初めてですよ。興味はありましたが、まさか来ることが出来るなんて!
身体は怠いけど、心の中ではついついハイテンションになってしまいます。
タオルを敷いた籠に私を入れたセルヴィスがやって来たのは、私達の住む森の近くにある小さな町。セルヴィスが生まれた町だと道中で聞きました。
ここは元々人は住んでいなかったのですが、随分と昔に森の資源目当てに人が集まって、いつの間にか出来ていた覚えはあります。ハンターや冒険者の拠点となっている場所のようです。
きょろきょろと辺りを見る(いや目はないんですけど)私をよそに、セルヴィスは迷いなく道を進んで───たのに、急に止まりました。あれ?
「すみません。冒険者ギルドへはどう行けばいいですか?」
……はい?
あ、あれ?今セルヴィス、通りすがりの人に道を聞いていませんか?
あれ?知り合いがいるんですよね?町に一人で来てたんじゃないんですか?お友達、いるんじゃないんですか?
「きゅいぃ~(あれぇ~)?」
言葉はわからなくても困惑は伝わったのでしょうか。
道を聞き終えたセルヴィスがこちらを見て首を傾げました。
「道を知らない事が不思議なのか?小さい頃には町に住んでたけど、今は必要最低限でしか来た事ないから。俺も人の町に詳しくないんだよ。」
「………。」
必要最低限しか来た事なかったんですか………っ!!!
い、いえ!まだです!
短い滞在時間でも知り合いは作れますっ
私にはお友達かもしれない知り合いという希望があります!!
お願いフレンズ、現れてーっ!
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ある公爵令嬢の生涯
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。
妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。
婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。
そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが…
気づくとエステルに転生していた。
再び前世繰り返すことになると思いきや。
エステルは家族を見限り自立を決意するのだが…
***
タイトルを変更しました!
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる