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番外編:リドリー殿下はお怒りです。
しおりを挟む学園の敷地内に設けられた魔法練習場。放課後の為か、2人の青年以外にこの日は利用者がいなかった。
ズガガガガガガッ!!
「うわわわわわーっ!!??」
私が連射する小さな火炎弾を必死の形相で避けるザリウス。
案外すばしっこいね。あいつは私の側近とはいえ文官なのに。
「ちょっと避けないでよ。お仕置きにならないじゃないか。」
「避けなきゃ死ぬでしょーが!!何言ってんだアンタ!!」
涙声で怒鳴ってくるザリウス。普段は敬語のアイツも、さすがに二人だけの時は口調が幼馴染みのソレに戻っているね。
でもね、私だって怒っているんだ。
「お前が逃げたせいで、クリスタに誤解されて泣かれたんだよ?」
「そりゃ逃げたのは悪かったですけど!あの女コエーんですもん!殿下だけじゃなくて俺にまで色目使ってきて!!」
「だからって主人を残して逃げるなんて、それでも側近?」
「殿下はあの程度、何とでも出来るでしょう!詐欺師みたいに舌先三寸で丸め込むの得意なんですから!」
このザリウスは、オードリー伯爵令嬢の男を狩らんとする肉食獣が如き猛攻に恐れを為し、主の私を置いて逃げ出したのだ。そのせいで私のみが伯爵令嬢の標的になり、あまつさえ目撃したクリスタが勘違いして婚約解消まで言い出して。どれだけ私が内心焦っていたことか。
その私に『詐欺師』やら『舌先三寸で丸め込む』とか……。
「……よしわかった。そんなに怖かったんなら仕方ないよね。仕方ないから永遠に逃げさせてあげるよ。」
「永遠ってじょうだ……っぎゃあああああああああああああっ!!!!」
美しい夕日が染める空の下、悲痛な悲鳴がどこまでも響きわたった。
───明日は天気が良かったら、クリスタを遠乗りに誘おうかな?───
ズタボロになったザリウスの頭を踏みつけながら、思いついた計画にリドリー殿下は楽し気な笑みを浮かべていた。
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