1 / 2
前編
しおりを挟む
「敵戦団との遭遇まであと5分。射程距離には4分30秒後に入りますので注意してください」
AIのアリサが、スピーカーを通して僕に伝えてくれる。
「アキラ、やっとだな」
モニターの向こうから、親友のレイジがボヤくように話しかけてくる。
「出発して10分だぜ、敵との遭遇までかかりすぎだし。さすがにアーケード版はこうじゃないとは思うけどさ」
僕とレイジ、そして、僕が今付き合っている女の子、サヤカの3人で、幕張メッセで行われている『世界ロボティクス・ゲーム・ショー』に来ている。
新しいアーケードゲームの先行体験会だが、世界中のあらゆるゲームのランカーだけが参加できる特別なイベントだ
ゲームはロボティクス・ウェポンズという1種類だけで、従来のゲームショーとは全く異なる設定だ。
内容も、お世辞にも最新とは言い難い。
人型ロボットに搭乗して、機体を操り、武器を駆使して敵と戦うという在り来たりのものだ。ただ、目玉は、シミュレーション装置を使ったコクピットの動きとのこと。
たしかに、上下左右に動く筐体の感覚は、いままでのゲームにはまったくないものだった。
それに、筐体が完全な個室になっていて、操縦席はわけのわからないスイッチやら計器やらが満載の、ホンモノ感満載のコクピットだ。
金をかけてるなとは思うけど、所詮は演出のひとつに過ぎない感じで、僕はイマイチかな。
「アリサ、このロボの武器はどんなの?」
「ビーム・サーベルとビーム・ライフルです」
「目新しい感じはしないな」
「トップ・プレイヤーのアキラには物足りないでしょうか? でも、性能は、今回割り当てられたロボの中では一番です」
「そうなの?」
「はい。この機体は現在3機しか使用が認められていません。高性能すぎるために、簡単には配信ができないのです。ロボット格闘ゲームのランカー、アキラだからこそ割り当てられたのです」
「へえ、嬉しいね。運営も粋なことをやってくれるよ。で? 何か必殺技ってあるの?」
「はい。ビーム・サーベルを装着している時に必殺技が出せます。左側の黄色いレバーを押し込むことで、ビーム・サーベルは、水素と酸素を利用したエネルギーに加え、核融合を組み合わせます。さらに、宇宙に放電する電気エネルギーを組み合わせることで、大きな爆発を生み出して敵を壊滅させます」
「それって、水爆に原爆に雷ってこと? でも、とくに水爆、空気のない宇宙空間でそれはないんじゃない?」
「詳しいですね。このロボには酸素生成装置が付いています。そこで作られる酸素を利用しますので水爆の効果は得られます。ただし、必殺技が使えるのは3回までです。4回以上は酸素の生成が間に合わず、コクピットは酸欠状態になりますのでご注意ください」
「へえ、そんな設定があるんだ」
「アキラっ、こっちすごいよっ」
サヤカがモニターを通して話しかけてきた。
モニターは左右に2つずつ付いている。
スマホをセットして、その登録してある電話番号を利用して専用の通信を行っていると言う。
サヤカは音ゲー部門からの参加だ。
音ゲーでロボを操縦するという、これは新しい試みで面白いと思う。でも、僕は音ゲーなんてできないから、試したとしても、いいか悪いかは判断できない。
音ゲー部門のロボは機動性が高く、僕とレイジのロボより一足先に敵と遭遇して、ドンパチやりあっているらしい。
サヤカはキャーキャー言いながらも、けっこう楽しそうに遊んでいる。
いいなあ。
僕はアリサに操作方法を一通り聞いて、時間を持て余していた。レイジの言うとおり、このタイムラグはツライな。
ボーっとしていたら、サヤカのモニターが、電源が落ちたように急に暗くなった。
「あれ? サヤカ?」
答えたのはアリサだった。
「お友だちは敵機に撃墜されました。情報登録をしたお友だちが撃墜されてしまうと、このように通信も遮断されてしまいます」
「なんだ、一緒にやりたかったんだけどなあ。ここは要改善だな」
「アキラ、30秒後に敵の射程圏内に入ります。こちらも準備をしましょう」
「了解。はじめはやっぱライフルかな」
「はい。ライフルを継続して使うことを勧めます。ライフルは、遠くの敵も、近くの敵にも対応できます。接近戦であっても、銃口を敵機に当てることで対応できますので。レイジには釈迦に説法ですが」
「いや、初めてのゲームだからね、とても助かるよ」
今のところ、ゲームそのものに興味はないんだけど、このAIはよくできているなあと感心する。
「また、必殺技は魅力ですが、ライフルからサーベルへの切り替えには3秒かかります。その間に攻撃を受けないよう注意してください」
「ああ、ありがとう」
「どういたしまして」
さあ、お楽しみのバトル開始だっ。
AIのアリサが、スピーカーを通して僕に伝えてくれる。
「アキラ、やっとだな」
モニターの向こうから、親友のレイジがボヤくように話しかけてくる。
「出発して10分だぜ、敵との遭遇までかかりすぎだし。さすがにアーケード版はこうじゃないとは思うけどさ」
僕とレイジ、そして、僕が今付き合っている女の子、サヤカの3人で、幕張メッセで行われている『世界ロボティクス・ゲーム・ショー』に来ている。
新しいアーケードゲームの先行体験会だが、世界中のあらゆるゲームのランカーだけが参加できる特別なイベントだ
ゲームはロボティクス・ウェポンズという1種類だけで、従来のゲームショーとは全く異なる設定だ。
内容も、お世辞にも最新とは言い難い。
人型ロボットに搭乗して、機体を操り、武器を駆使して敵と戦うという在り来たりのものだ。ただ、目玉は、シミュレーション装置を使ったコクピットの動きとのこと。
たしかに、上下左右に動く筐体の感覚は、いままでのゲームにはまったくないものだった。
それに、筐体が完全な個室になっていて、操縦席はわけのわからないスイッチやら計器やらが満載の、ホンモノ感満載のコクピットだ。
金をかけてるなとは思うけど、所詮は演出のひとつに過ぎない感じで、僕はイマイチかな。
「アリサ、このロボの武器はどんなの?」
「ビーム・サーベルとビーム・ライフルです」
「目新しい感じはしないな」
「トップ・プレイヤーのアキラには物足りないでしょうか? でも、性能は、今回割り当てられたロボの中では一番です」
「そうなの?」
「はい。この機体は現在3機しか使用が認められていません。高性能すぎるために、簡単には配信ができないのです。ロボット格闘ゲームのランカー、アキラだからこそ割り当てられたのです」
「へえ、嬉しいね。運営も粋なことをやってくれるよ。で? 何か必殺技ってあるの?」
「はい。ビーム・サーベルを装着している時に必殺技が出せます。左側の黄色いレバーを押し込むことで、ビーム・サーベルは、水素と酸素を利用したエネルギーに加え、核融合を組み合わせます。さらに、宇宙に放電する電気エネルギーを組み合わせることで、大きな爆発を生み出して敵を壊滅させます」
「それって、水爆に原爆に雷ってこと? でも、とくに水爆、空気のない宇宙空間でそれはないんじゃない?」
「詳しいですね。このロボには酸素生成装置が付いています。そこで作られる酸素を利用しますので水爆の効果は得られます。ただし、必殺技が使えるのは3回までです。4回以上は酸素の生成が間に合わず、コクピットは酸欠状態になりますのでご注意ください」
「へえ、そんな設定があるんだ」
「アキラっ、こっちすごいよっ」
サヤカがモニターを通して話しかけてきた。
モニターは左右に2つずつ付いている。
スマホをセットして、その登録してある電話番号を利用して専用の通信を行っていると言う。
サヤカは音ゲー部門からの参加だ。
音ゲーでロボを操縦するという、これは新しい試みで面白いと思う。でも、僕は音ゲーなんてできないから、試したとしても、いいか悪いかは判断できない。
音ゲー部門のロボは機動性が高く、僕とレイジのロボより一足先に敵と遭遇して、ドンパチやりあっているらしい。
サヤカはキャーキャー言いながらも、けっこう楽しそうに遊んでいる。
いいなあ。
僕はアリサに操作方法を一通り聞いて、時間を持て余していた。レイジの言うとおり、このタイムラグはツライな。
ボーっとしていたら、サヤカのモニターが、電源が落ちたように急に暗くなった。
「あれ? サヤカ?」
答えたのはアリサだった。
「お友だちは敵機に撃墜されました。情報登録をしたお友だちが撃墜されてしまうと、このように通信も遮断されてしまいます」
「なんだ、一緒にやりたかったんだけどなあ。ここは要改善だな」
「アキラ、30秒後に敵の射程圏内に入ります。こちらも準備をしましょう」
「了解。はじめはやっぱライフルかな」
「はい。ライフルを継続して使うことを勧めます。ライフルは、遠くの敵も、近くの敵にも対応できます。接近戦であっても、銃口を敵機に当てることで対応できますので。レイジには釈迦に説法ですが」
「いや、初めてのゲームだからね、とても助かるよ」
今のところ、ゲームそのものに興味はないんだけど、このAIはよくできているなあと感心する。
「また、必殺技は魅力ですが、ライフルからサーベルへの切り替えには3秒かかります。その間に攻撃を受けないよう注意してください」
「ああ、ありがとう」
「どういたしまして」
さあ、お楽しみのバトル開始だっ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
いつもと違う日常
k33
ホラー
ある日 高校生のハイトはごく普通の日常をおくっていたが...学校に行く途中 空を眺めていた そしたら バルーンが空に飛んでいた...そして 学校につくと...窓にもバルーンが.....そして 恐怖のゲームが始まろうとしている...果たして ハイトは..この数々の恐怖のゲームを クリアできるのか!? そして 無事 ゲームクリアできるのか...そして 現実世界に戻れるのか..恐怖のデスゲーム..開幕!
「鳥葬」-Bird Strike-
我破破
ホラー
突如として世界中の鳥たちが凶暴化して人喰い鳥になってしまう事件が発生。両親を喰われた少年は、復讐の為に立ち上がる。その時少年が手に入れたのは、「鳥葬」の能力だった……・
オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員
眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。
視える棺―この世とあの世の狭間で起こる12の奇譚
中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、「気づいてしまった者たち」 である。
誰もいないはずの部屋に届く手紙。
鏡の中で先に笑う「もうひとりの自分」。
数え間違えたはずの足音。
夜のバスで揺れる「灰色の手」。
撮ったはずのない「3枚目の写真」。
どの話にも共通するのは、「この世に残るべきでない存在」 の気配。
それは時に、死者の残した痕跡であり、時に、境界を越えてしまった者の行き場のない魂でもある。
だが、"それ"に気づいた者は、もう後戻りができない。
見てはいけないものを見た者は、見られる側に回るのだから。
そして、最終話「最期のページ」。
読み進めることで、読者は気づくことになる。
なぜ、この短編集のタイトルが『視える棺』なのか。
なぜ、彼らは"見えてしまった"のか。
そして、最後のページに書かれていたのは——
「そして、彼が振り返った瞬間——」
その瞬間、あなたは気づくだろう。
この物語の本当の意味に。
隣人が有名ゲーム実況者なんだけど、最近様子がおかしい ~ネット配信者にガチ恋した少女の末路~
柚木崎 史乃
ホラー
柊木美玖は、隣人である諸麦春斗がストーカー被害に悩まされているのを目の当たりにしながらも、なかなか声をかけられず歯がゆい思いをしていた。
ある日、美玖は今を時めく人気ゲーム実況者・むぎはるの正体が春斗であることを知ってしまう。
そのうえ、配信中の彼の背後に怪しい人影を見てしまった。美玖は春斗を助けるためにコンタクトを取ろうと決意する。
だが、どうも美玖の行動はストーカーに筒抜けらしく、春斗を助けようとすると犯人と思しき少女・MiraiのSNSアカウントに釘を刺すようなツイートが投稿されるのだった。
平穏な生活を送っていた美玖は、知らず知らずのうちにSNSと現実が交差する奇妙な事件に巻き込まれていく──。

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。
現在 100話 越え。
エブリスタ・カクヨム・小説家になろうに同時掲載中
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
【総文字数 700,000字 超え 文庫本 約7冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
【短編集】エア・ポケット・ゾーン!
ジャン・幸田
ホラー
いままで小生が投稿した作品のうち、短編を連作にしたものです。
長編で書きたい構想による備忘録的なものです。
ホラーテイストの作品が多いですが、どちらかといえば小生の嗜好が反映されています。
どちらかといえば読者を選ぶかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる