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ロイド⑧ 胸騒ぎ
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夏休みになった。リディアは新しい生徒会役員選挙の準備のため、学園に留まることにした。他の生徒会メンバーも、よほどの事情がない限り、少し遅れて帰省することになっている。
「まず選挙管理委員会を発足させて、それから立候補を集めて説明して、選挙運動の期間設けて……ああ、あと演説会も開くって言ってたから、その段取りも決めておかなきゃ……」
「選挙と並行して、芸術祭の準備も進める必要がありますよ」
「やることが多すぎる……」
うんざりした顔でロイドはつぶやいた。
「委員会を発足させたら、ある程度はそちらに任せる流れになりますから、それまでの辛抱ですよ」
「そうだね。それまで頑張るよ」
嘆いても始まらない。初めてのことだから上手くいかないこともあるだろうが、できるだけのことをして、失敗したことは次に活かすしかない。
「それより、休みに入りましたけど、ロイドは帰らなくて大丈夫なんですか」
「うん。今回は前もって説明しておいたから」
「お爺さま、寂しがりません?」
リディアがそう言うと、とたんにロイドは嫌そうな顔をした。
「いや、そういう人じゃないし……帰る度に説教ばっかりする人だよ?」
「それが寂しいってことなんですよ」
「ええ……なにそれ。わかりにくすぎるでしょ」
案外ロイドとそっくりなんじゃないかな、とリディアは思ったが、ますます嫌がられそうなので黙っておいた。
「リディアの方こそ、帰らないと“師匠”がうるさいんじゃないの?」
「どうでしょう。週に一度は帰ってますし、毎日いるとかえってうっとうしがられそうで」
「なんか、一人暮らしの息子の家にお邪魔する母親みたいな言い分だね」
「母親って……そこはせめて兄と妹って関係にしておいてくださいよ」
さすがに母親に例えられるのは、年齢含めていろいろきつい。それに立場的には彼の方が保護者に当たるのだ。
「……リディアって、昔からそんな感じだったの」
「そんな感じって?」
「だめな人間放っておけない感じ」
歯に衣着せぬ物言いに思わず苦笑いする。
「まぁ、そうかもしれません」
「否定しないんだ」
「うーん。ほら、保護者がだらしない所あると、逆に子どもがしっかりするっていうでしょう?」
父親も、放っておけない人だったから。
(あの人、今頃何してるんだろ……)
リディアをキャスパーに売ってから、一度も会いに来ていない実の父親。
(ロイドは公爵家に引き取られてからご両親には会っていないんだよね)
息子に会いたいと、今でも思っていないのだろうか。それともハウレス公爵に禁じられているのか。もしそうだとしたら、ロイドはそのことについてどう思っているんだろう。
「リディア?」
「あ、いえ。まだお昼前なのに暑いなぁって」
「大丈夫? 具合悪いなら、今日は早めに切り上げようか」
馬鹿正直に聞ける内容ではなく、つい誤魔化してしまうと、ロイドは素直に信じたようで心配し始めた。慌てて大丈夫ですと答えながら、リディアは父親の件を頭から追い出した。
(今さら、もう過ぎたことじゃないか)
どうして父のことなんて思い出してしまったのだろう。ロイドに告白されたことや、生徒会選挙のことで自分の身分を気にしていたからだろうか。
それとも、何かの前触れだったのだろうか。
「――あらリディア・ヴァウルさん。先ほど事務員の方がこちらへ来て、あなたのことを探していましたよ」
「えっ、本当ですか」
寮の先生にそう言われ、リディアはすでに夕刻であったが事務室へと足を引き返した。
「ああ、ご家族の方からの手紙を受け取りまして」
「手紙?」
封筒を渡され、その場で封を切った。走り書きで、夏季休暇は帰って来ない方がいいと書かれていた。え、と思い、もう一度封筒を確認した。
キャスパー・グレモリーという送り主の名は書いてあったが、宛名は書かれておらず、切手も貼られていなかった。
「あの、これは本人が直接届けたのでしょうか」
「いいえ、使い走りのような小さな男の子が持ってきました。本人に届けてくれるよう頼まれたそうです」
「他に、その子は何か伝えませんでしたか?」
「いいえ、特には」
「そうですか……」
リディアはもう一度、手紙に目をやった。
――夏季休暇は帰って来ない方がいい。
(おかしい)
だって先週帰った時には、もう夏休みだろう? 早く帰って来なさいとうっとおしいほど催促してきた。それをこんな急に……
(もしかして病気にでもなったんじゃ……ううん、それなら今すぐにでも帰って来るよう伝えるはずだわ。だとすると……事故にでも巻き込まれたとか?)
あるいは女性関係で人質にでもなって、とっさに助けを求めるつもりで書いたとか……今までのことを踏まえれば、十分あり得る話であった。
(たいへん。今すぐ帰らないと!)
寮へ戻ることもせず、リディアは門へと駆け出した。頭の中はとにかくキャスパーのことでいっぱいだった。
「っ!」
突然後ろから強い力で引っ張られ、リディアはのけ反りそうになった。だがその前にとんと背中を支えてくれたのは、ロイドだった。
「どうしたのリディア。こんなに慌てて」
「ロイド! どうしましょう! 師匠が!」
焦って支離滅裂な言葉を発するリディアに、落ち着いて、とロイドは冷ややかともいえる口調で言った。彼の灰色がかった青い瞳にじっと見つめられ、リディアはしだいに冷静さを取り戻す。
「……すみません。ちょっと気が動転していて、取り乱しました」
「キャスパーがどうしたの」
「事故か何かに巻き込まれたかもしれないんです」
手紙を見せ、事の顛末を説明する。ロイドは何か考え込むようにじっとキャスパーの文字を見ていたが、やがて顔を上げ、リディアに提案した。
「俺が一度様子を見に行って来るよ。だからリディアは寮で待ってな」
「そんな……わたしも行きます!」
「だめ。何かあったら危ないでしょ」
ロイドの言い分もよくわかったが、ここは譲れなかった。
「お願いです。心配なんです。師匠に何かあったらと思うと……」
話しているうちにまた不安が襲ってきた。やはり自分の目で確かめたい。
「心配なのは、こっちも同じなんだけどね」
はぁ、とロイドはため息をつき、最終的にはリディアの同行を許可した。
「セエレがいれば、何かあった時の役に立つんだけど」
「待っていられません」
外出届を出していなかったが、今はそんな時間さえ惜しかった。一刻も早くキャスパーのもとへと帰らなきゃとひたすら急いで、普段通らないような道も近道としてずんずん進んでいく。ロイドが後ろから何か言っていたが、リディアは耳に入らなかった。
「着いた……」
家の前まで来たリディアは、はぁはぁと息を切らしていた。
「外からだとどこも変わらないように見えるけど」
「中では何が起きているかわかりません。念のため、裏口から入りましょうか」
待って、とロイドがリディアを止めた。玄関の扉が開き、誰かが――キャスパーが出てきた。笑みを浮かべて、実に楽しそうに。
「なんだ。やっぱりリディアの勘違いじゃ――って、ちょっと」
リディアはキャスパーのもとへと足が動いていた。こんなに心配させたくせに、彼が笑っていたから、という理由ではなかった。他人から見ればたしかにキャスパーは楽しそうだ。
でも、リディアにはわかった。あんなの心からの笑みじゃない。本心を隠してその場をやり過ごそうとする作り笑いだ。一体誰だ。彼にそんな表情をさせたのは。
「師匠!」
キャスパーがリディアの姿に目を見開く。
「どうしてあなたがここに……」
「師匠。中にいるのは一体誰なんです――」
「リディア!」
呼んだのは、キャスパーではなかった。後ろから追いかけてきたロイドでもなかった。扉の先、部屋の中にいた人物が、自分の名を呼んだのだ。相手の顔を見て、リディアは息を呑む。
「え……」
まさか。そんなわけない。
「ああ、リディア! 会いたかったよ」
どうしてこの人がこんな所にいるのだ。
「父さん……」
幼いリディアを捨てた父親との再会であった。
「まず選挙管理委員会を発足させて、それから立候補を集めて説明して、選挙運動の期間設けて……ああ、あと演説会も開くって言ってたから、その段取りも決めておかなきゃ……」
「選挙と並行して、芸術祭の準備も進める必要がありますよ」
「やることが多すぎる……」
うんざりした顔でロイドはつぶやいた。
「委員会を発足させたら、ある程度はそちらに任せる流れになりますから、それまでの辛抱ですよ」
「そうだね。それまで頑張るよ」
嘆いても始まらない。初めてのことだから上手くいかないこともあるだろうが、できるだけのことをして、失敗したことは次に活かすしかない。
「それより、休みに入りましたけど、ロイドは帰らなくて大丈夫なんですか」
「うん。今回は前もって説明しておいたから」
「お爺さま、寂しがりません?」
リディアがそう言うと、とたんにロイドは嫌そうな顔をした。
「いや、そういう人じゃないし……帰る度に説教ばっかりする人だよ?」
「それが寂しいってことなんですよ」
「ええ……なにそれ。わかりにくすぎるでしょ」
案外ロイドとそっくりなんじゃないかな、とリディアは思ったが、ますます嫌がられそうなので黙っておいた。
「リディアの方こそ、帰らないと“師匠”がうるさいんじゃないの?」
「どうでしょう。週に一度は帰ってますし、毎日いるとかえってうっとうしがられそうで」
「なんか、一人暮らしの息子の家にお邪魔する母親みたいな言い分だね」
「母親って……そこはせめて兄と妹って関係にしておいてくださいよ」
さすがに母親に例えられるのは、年齢含めていろいろきつい。それに立場的には彼の方が保護者に当たるのだ。
「……リディアって、昔からそんな感じだったの」
「そんな感じって?」
「だめな人間放っておけない感じ」
歯に衣着せぬ物言いに思わず苦笑いする。
「まぁ、そうかもしれません」
「否定しないんだ」
「うーん。ほら、保護者がだらしない所あると、逆に子どもがしっかりするっていうでしょう?」
父親も、放っておけない人だったから。
(あの人、今頃何してるんだろ……)
リディアをキャスパーに売ってから、一度も会いに来ていない実の父親。
(ロイドは公爵家に引き取られてからご両親には会っていないんだよね)
息子に会いたいと、今でも思っていないのだろうか。それともハウレス公爵に禁じられているのか。もしそうだとしたら、ロイドはそのことについてどう思っているんだろう。
「リディア?」
「あ、いえ。まだお昼前なのに暑いなぁって」
「大丈夫? 具合悪いなら、今日は早めに切り上げようか」
馬鹿正直に聞ける内容ではなく、つい誤魔化してしまうと、ロイドは素直に信じたようで心配し始めた。慌てて大丈夫ですと答えながら、リディアは父親の件を頭から追い出した。
(今さら、もう過ぎたことじゃないか)
どうして父のことなんて思い出してしまったのだろう。ロイドに告白されたことや、生徒会選挙のことで自分の身分を気にしていたからだろうか。
それとも、何かの前触れだったのだろうか。
「――あらリディア・ヴァウルさん。先ほど事務員の方がこちらへ来て、あなたのことを探していましたよ」
「えっ、本当ですか」
寮の先生にそう言われ、リディアはすでに夕刻であったが事務室へと足を引き返した。
「ああ、ご家族の方からの手紙を受け取りまして」
「手紙?」
封筒を渡され、その場で封を切った。走り書きで、夏季休暇は帰って来ない方がいいと書かれていた。え、と思い、もう一度封筒を確認した。
キャスパー・グレモリーという送り主の名は書いてあったが、宛名は書かれておらず、切手も貼られていなかった。
「あの、これは本人が直接届けたのでしょうか」
「いいえ、使い走りのような小さな男の子が持ってきました。本人に届けてくれるよう頼まれたそうです」
「他に、その子は何か伝えませんでしたか?」
「いいえ、特には」
「そうですか……」
リディアはもう一度、手紙に目をやった。
――夏季休暇は帰って来ない方がいい。
(おかしい)
だって先週帰った時には、もう夏休みだろう? 早く帰って来なさいとうっとおしいほど催促してきた。それをこんな急に……
(もしかして病気にでもなったんじゃ……ううん、それなら今すぐにでも帰って来るよう伝えるはずだわ。だとすると……事故にでも巻き込まれたとか?)
あるいは女性関係で人質にでもなって、とっさに助けを求めるつもりで書いたとか……今までのことを踏まえれば、十分あり得る話であった。
(たいへん。今すぐ帰らないと!)
寮へ戻ることもせず、リディアは門へと駆け出した。頭の中はとにかくキャスパーのことでいっぱいだった。
「っ!」
突然後ろから強い力で引っ張られ、リディアはのけ反りそうになった。だがその前にとんと背中を支えてくれたのは、ロイドだった。
「どうしたのリディア。こんなに慌てて」
「ロイド! どうしましょう! 師匠が!」
焦って支離滅裂な言葉を発するリディアに、落ち着いて、とロイドは冷ややかともいえる口調で言った。彼の灰色がかった青い瞳にじっと見つめられ、リディアはしだいに冷静さを取り戻す。
「……すみません。ちょっと気が動転していて、取り乱しました」
「キャスパーがどうしたの」
「事故か何かに巻き込まれたかもしれないんです」
手紙を見せ、事の顛末を説明する。ロイドは何か考え込むようにじっとキャスパーの文字を見ていたが、やがて顔を上げ、リディアに提案した。
「俺が一度様子を見に行って来るよ。だからリディアは寮で待ってな」
「そんな……わたしも行きます!」
「だめ。何かあったら危ないでしょ」
ロイドの言い分もよくわかったが、ここは譲れなかった。
「お願いです。心配なんです。師匠に何かあったらと思うと……」
話しているうちにまた不安が襲ってきた。やはり自分の目で確かめたい。
「心配なのは、こっちも同じなんだけどね」
はぁ、とロイドはため息をつき、最終的にはリディアの同行を許可した。
「セエレがいれば、何かあった時の役に立つんだけど」
「待っていられません」
外出届を出していなかったが、今はそんな時間さえ惜しかった。一刻も早くキャスパーのもとへと帰らなきゃとひたすら急いで、普段通らないような道も近道としてずんずん進んでいく。ロイドが後ろから何か言っていたが、リディアは耳に入らなかった。
「着いた……」
家の前まで来たリディアは、はぁはぁと息を切らしていた。
「外からだとどこも変わらないように見えるけど」
「中では何が起きているかわかりません。念のため、裏口から入りましょうか」
待って、とロイドがリディアを止めた。玄関の扉が開き、誰かが――キャスパーが出てきた。笑みを浮かべて、実に楽しそうに。
「なんだ。やっぱりリディアの勘違いじゃ――って、ちょっと」
リディアはキャスパーのもとへと足が動いていた。こんなに心配させたくせに、彼が笑っていたから、という理由ではなかった。他人から見ればたしかにキャスパーは楽しそうだ。
でも、リディアにはわかった。あんなの心からの笑みじゃない。本心を隠してその場をやり過ごそうとする作り笑いだ。一体誰だ。彼にそんな表情をさせたのは。
「師匠!」
キャスパーがリディアの姿に目を見開く。
「どうしてあなたがここに……」
「師匠。中にいるのは一体誰なんです――」
「リディア!」
呼んだのは、キャスパーではなかった。後ろから追いかけてきたロイドでもなかった。扉の先、部屋の中にいた人物が、自分の名を呼んだのだ。相手の顔を見て、リディアは息を呑む。
「え……」
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