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本編(ノーマルエンド)
53、心配ゆえの怒り
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「マリアン様……」
ぼろぼろと涙を流すマリアンの顔は、いつもの可憐な彼女とはかけ離れていて酷い有様だった。これが演技だとは、さすがに誰も思うまい。マリアンは本当に心から自分に対して謝っている。リディアはそう思った。
「……もう、いいですよ」
「でもっ」
「きちんと謝って下さったので、それで十分です」
自分が悪いことをしたと自覚し、反省してくれたのならばリディアが望むことはもう何もない。
「それに、ずっとマリアン様に嫌われている方が個人的にはきつかったですし、今回のことでそうじゃないってわかってもらえたら、安心しました」
「リディアさん……」
「それより、ほら。もう遅いですし、今日は帰りましょうよ」
リディアは三人を見渡すと、にっこりと笑った。
「それで、明日から具体的にどうするか考えていきましょう」
マリアンの父親への説得。マシューの部への復帰。新聞部の見直し。やるべきことはたくさんある。それに備えて今日は休むべきだ。
リディアの提案に、マリアンとマシュー、そしてベンジャミンはお互い顔を見合わせ、やがてそうだというように頷き合った。――嵐のような騒動を乗り越えた今、四人の間には不思議な絆が出来上がっていた。
(うんうん。いろいろあったけど、これで一件落着……)
だと思った瞬間、突然地響きのような音が鳴り、強い揺れが四人を襲った。
「え、なに? 地震?」
「や、やだ、怖いわ」
「に、逃げましょう部長!」
「いや、ここはひとまず落ち着いて、揺れが収まるのを……」
待とう、と冷静に言いかけたマシューの言葉を遮るようにますます揺れが酷くなり、とうとう一歩も動けなくなってしばらく四人で蹲っていた所、ピタリと揺れが静まった。
「よ、よかった。なんとか収まった」
「こ、怖かったわ……」
「今のうちに逃げましょう」
そう思って立ち上がったのだが、今度はパリーンと室内の窓ガラスが割れた。そりゃあ、もう豪快に。破片が机や床に飛び散り、ひぃいいいと震え上がる新聞部員。
「て、天変地異の前ぶりだぁあああ」
「こんなボロ校舎、すぐに壊れてしまう!」
先ほどの長い揺れでパニックに陥ったのか、二人はわんわん泣き喚きながらリディアにしがみついてくる。
「ちょ、みなさん、落ち着いて下さいよ!」
「リ、リディアさん。どうしましょう。わたくし、腰が抜けてしまったわ」
ガタガタ震えるマリアンもまた助けを求めるようにリディアを見上げた。
「大丈夫ですから。みなさん。ちょっと落ち着いて……」
「リディア!」
せめて自分だけは冷静に、と思ったリディアも今度ばかりは目を見開いた。またもやパリーンと残っていた窓ガラスをすべてぶち破って、少年――セエレが部屋に飛び込んできたのだ。さらに彼に必死にしがみついてきたと思われるロイドも一緒であった。
「セエレ? それにロイドも……なんでここに。いや、それよりそんな窓を割って……ここ三階……」
もはやどこから触れればいいかわからない。
「リディア! よかった! 無事だったんだね!」
セエレはマシューやマリアンのことなどちっとも目に入っていない様子で、呆気にとられるリディアに勢いよく抱き着いてきた。首元が締め付けられるようなきつい抱擁にリディアの身体は悲鳴を上げる。
「ちょ、セエレ。お、重いです」
「よかった! 本当によかった! リディアが危険な目に遭っているかもしれないって聞いて、生きた心地がしなかったんだっ!」
「あ、あなた、わたくしの身体を蹴飛ばさないでちょうだいっ!」
「僕の足も踏まないでくれっ!」
「うう、一体どうなってるんだ」
カオスである。誰かこの状況を説明して、みなを落ち着かせて欲しい。そう。こういう時こそ常識人が必要だ。ここでそう振る舞えることができるのは……
「ロ、ロイド。助けて下さい……」
彼は言うまでもないといった様子でつかつか近寄ってくると、ゴミを剥がすようにべりっとマリアン、マシュー、ベンジャミン、そして最後にセエレをリディアから引きはがした。
「嫌だっ、オレはリディアと離れたくないっ」
絶対離れないっ、と再度しがみついてきたセエレをやっぱり容赦なく引きはがすと、リディアはようやく息をついた。
「ありがとうございます。ロイドがいなかったら本当にどうなってたか……ロイド?」
あれ、とリディアは気づいた。そういえば彼は先ほどから一言も発していない。黙ったままである。真顔である。
「あの、ロイド?」
「リディア。俺、言ったよね」
「えっ」
一体何を、という言葉はかろうじて飲み込んだ。だってロイドの声が絶対零度のように冷たく、顔がとっても怖く見えたから。
(お、落ち着こう。とりあえず状況説明。話せばわかってもらえる)
「あの、ロイド。これはですね――」
「なにのこのこ、こんな人がめったにこない場所までついてきてんの? なんでマリアン・レライエの仕業だって思わないわけ? まさかわかっててついて行ったとか馬鹿なこと言わないよね?」
「いや、それは」
矢継ぎ早に責め立ててくるロイドにリディアはたじたじだ。
(こ、怖い。ロイドってこんなふうに怒るんだ……)
普段怒らない人ほど怒らせると怖い。あれは本当だったのだ、とリディアは今ものすごく実感した。
「ねぇ、聞いてるの?」
「は、はいっ」
もちろんですと、コクコク頷く。
「俺、言ったよね? 一人で何でもかんでも勝手に抱え込むな。俺に頼れって。なのになんで……てか、なにこの状況。なんで男二人に抱き着かれて平然としてるわけ? 襲われかけてたって自覚あるの?」
「いや、決して襲われていたわけでは……」
「そうだぞ! 僕たちはただ――」
「外野は黙ってろ」
ギロリと鋭い眼差しをベンジャミンに向けるロイドに、彼はひえっと口を押さえた。気のせいか眼鏡をかけているロイドの瞳が赤くなっているような……
「ロイド。ちょっと落ち着いて下さいよ。わたしは何ともありませんし、大げさすぎ――」
「大げさじゃないだろっ!!」
びりびりと鼓膜の震えるような大声で怒鳴られ、びくっとリディアと肩を震わせた。ついでにマシューとベンジャミン、マリアンもひえっと情けない悲鳴を上げた。
「なんであんたはいっつもそうなんだよ! こっちがどれだけ心配したかっ……もっと自分のこと大切にしろっ!」
生まれて初めて、こんなふうに怒鳴られ、リディアはびっくりしてしまい、固まってしまった。そんなリディアに、セエレが静かな声で言った。
「ロイドね、すっごく焦った様子でオレの所までたずねてきたんだよ。あちこち探し回ってもリディアがいなくて、危ないかもしれないから一緒に探して欲しいって、すごく必死になってオレにお願いしてきたんだよ」
リディアがロイドの方を見ると、決まり悪げな顔で彼は視線を逸らした。
「職員室に行っても、俺のことなんか呼んでいないって言うから、慌てて戻ったらあんたの姿はなくて、俺を呼びに来た生徒を探して問い質してみれば、マリアン様に頼まれてやった、って白状して……」
「そう、だったんですか……」
ああ。彼は責任を感じていたのだ。そしてリディアに何かあったのではないかと死ぬほど心配してくれた。それをちっともわかっていない自分に苛立って、もっと自分自身を大切にしろと叱ってくれた。
「――ロイド。心配かけてすみません。それから……助けに来てくれてありがとう」
「……どこも、怪我してないの」
「ええ。ありません」
「……あっそ。なら、よかった」
逸らしていた視線を恐る恐る合わせ、ロイドは怒ったような、困っているような、複雑な表情で言った。リディアはそんな彼を優しく見つめ返した。
胸がくすぐったくなり、温かくなる感情は、キャスパーが心配してくれるものとよく似ていた。
怒られたのに、嬉しいと思う自分がいた。
ぼろぼろと涙を流すマリアンの顔は、いつもの可憐な彼女とはかけ離れていて酷い有様だった。これが演技だとは、さすがに誰も思うまい。マリアンは本当に心から自分に対して謝っている。リディアはそう思った。
「……もう、いいですよ」
「でもっ」
「きちんと謝って下さったので、それで十分です」
自分が悪いことをしたと自覚し、反省してくれたのならばリディアが望むことはもう何もない。
「それに、ずっとマリアン様に嫌われている方が個人的にはきつかったですし、今回のことでそうじゃないってわかってもらえたら、安心しました」
「リディアさん……」
「それより、ほら。もう遅いですし、今日は帰りましょうよ」
リディアは三人を見渡すと、にっこりと笑った。
「それで、明日から具体的にどうするか考えていきましょう」
マリアンの父親への説得。マシューの部への復帰。新聞部の見直し。やるべきことはたくさんある。それに備えて今日は休むべきだ。
リディアの提案に、マリアンとマシュー、そしてベンジャミンはお互い顔を見合わせ、やがてそうだというように頷き合った。――嵐のような騒動を乗り越えた今、四人の間には不思議な絆が出来上がっていた。
(うんうん。いろいろあったけど、これで一件落着……)
だと思った瞬間、突然地響きのような音が鳴り、強い揺れが四人を襲った。
「え、なに? 地震?」
「や、やだ、怖いわ」
「に、逃げましょう部長!」
「いや、ここはひとまず落ち着いて、揺れが収まるのを……」
待とう、と冷静に言いかけたマシューの言葉を遮るようにますます揺れが酷くなり、とうとう一歩も動けなくなってしばらく四人で蹲っていた所、ピタリと揺れが静まった。
「よ、よかった。なんとか収まった」
「こ、怖かったわ……」
「今のうちに逃げましょう」
そう思って立ち上がったのだが、今度はパリーンと室内の窓ガラスが割れた。そりゃあ、もう豪快に。破片が机や床に飛び散り、ひぃいいいと震え上がる新聞部員。
「て、天変地異の前ぶりだぁあああ」
「こんなボロ校舎、すぐに壊れてしまう!」
先ほどの長い揺れでパニックに陥ったのか、二人はわんわん泣き喚きながらリディアにしがみついてくる。
「ちょ、みなさん、落ち着いて下さいよ!」
「リ、リディアさん。どうしましょう。わたくし、腰が抜けてしまったわ」
ガタガタ震えるマリアンもまた助けを求めるようにリディアを見上げた。
「大丈夫ですから。みなさん。ちょっと落ち着いて……」
「リディア!」
せめて自分だけは冷静に、と思ったリディアも今度ばかりは目を見開いた。またもやパリーンと残っていた窓ガラスをすべてぶち破って、少年――セエレが部屋に飛び込んできたのだ。さらに彼に必死にしがみついてきたと思われるロイドも一緒であった。
「セエレ? それにロイドも……なんでここに。いや、それよりそんな窓を割って……ここ三階……」
もはやどこから触れればいいかわからない。
「リディア! よかった! 無事だったんだね!」
セエレはマシューやマリアンのことなどちっとも目に入っていない様子で、呆気にとられるリディアに勢いよく抱き着いてきた。首元が締め付けられるようなきつい抱擁にリディアの身体は悲鳴を上げる。
「ちょ、セエレ。お、重いです」
「よかった! 本当によかった! リディアが危険な目に遭っているかもしれないって聞いて、生きた心地がしなかったんだっ!」
「あ、あなた、わたくしの身体を蹴飛ばさないでちょうだいっ!」
「僕の足も踏まないでくれっ!」
「うう、一体どうなってるんだ」
カオスである。誰かこの状況を説明して、みなを落ち着かせて欲しい。そう。こういう時こそ常識人が必要だ。ここでそう振る舞えることができるのは……
「ロ、ロイド。助けて下さい……」
彼は言うまでもないといった様子でつかつか近寄ってくると、ゴミを剥がすようにべりっとマリアン、マシュー、ベンジャミン、そして最後にセエレをリディアから引きはがした。
「嫌だっ、オレはリディアと離れたくないっ」
絶対離れないっ、と再度しがみついてきたセエレをやっぱり容赦なく引きはがすと、リディアはようやく息をついた。
「ありがとうございます。ロイドがいなかったら本当にどうなってたか……ロイド?」
あれ、とリディアは気づいた。そういえば彼は先ほどから一言も発していない。黙ったままである。真顔である。
「あの、ロイド?」
「リディア。俺、言ったよね」
「えっ」
一体何を、という言葉はかろうじて飲み込んだ。だってロイドの声が絶対零度のように冷たく、顔がとっても怖く見えたから。
(お、落ち着こう。とりあえず状況説明。話せばわかってもらえる)
「あの、ロイド。これはですね――」
「なにのこのこ、こんな人がめったにこない場所までついてきてんの? なんでマリアン・レライエの仕業だって思わないわけ? まさかわかっててついて行ったとか馬鹿なこと言わないよね?」
「いや、それは」
矢継ぎ早に責め立ててくるロイドにリディアはたじたじだ。
(こ、怖い。ロイドってこんなふうに怒るんだ……)
普段怒らない人ほど怒らせると怖い。あれは本当だったのだ、とリディアは今ものすごく実感した。
「ねぇ、聞いてるの?」
「は、はいっ」
もちろんですと、コクコク頷く。
「俺、言ったよね? 一人で何でもかんでも勝手に抱え込むな。俺に頼れって。なのになんで……てか、なにこの状況。なんで男二人に抱き着かれて平然としてるわけ? 襲われかけてたって自覚あるの?」
「いや、決して襲われていたわけでは……」
「そうだぞ! 僕たちはただ――」
「外野は黙ってろ」
ギロリと鋭い眼差しをベンジャミンに向けるロイドに、彼はひえっと口を押さえた。気のせいか眼鏡をかけているロイドの瞳が赤くなっているような……
「ロイド。ちょっと落ち着いて下さいよ。わたしは何ともありませんし、大げさすぎ――」
「大げさじゃないだろっ!!」
びりびりと鼓膜の震えるような大声で怒鳴られ、びくっとリディアと肩を震わせた。ついでにマシューとベンジャミン、マリアンもひえっと情けない悲鳴を上げた。
「なんであんたはいっつもそうなんだよ! こっちがどれだけ心配したかっ……もっと自分のこと大切にしろっ!」
生まれて初めて、こんなふうに怒鳴られ、リディアはびっくりしてしまい、固まってしまった。そんなリディアに、セエレが静かな声で言った。
「ロイドね、すっごく焦った様子でオレの所までたずねてきたんだよ。あちこち探し回ってもリディアがいなくて、危ないかもしれないから一緒に探して欲しいって、すごく必死になってオレにお願いしてきたんだよ」
リディアがロイドの方を見ると、決まり悪げな顔で彼は視線を逸らした。
「職員室に行っても、俺のことなんか呼んでいないって言うから、慌てて戻ったらあんたの姿はなくて、俺を呼びに来た生徒を探して問い質してみれば、マリアン様に頼まれてやった、って白状して……」
「そう、だったんですか……」
ああ。彼は責任を感じていたのだ。そしてリディアに何かあったのではないかと死ぬほど心配してくれた。それをちっともわかっていない自分に苛立って、もっと自分自身を大切にしろと叱ってくれた。
「――ロイド。心配かけてすみません。それから……助けに来てくれてありがとう」
「……どこも、怪我してないの」
「ええ。ありません」
「……あっそ。なら、よかった」
逸らしていた視線を恐る恐る合わせ、ロイドは怒ったような、困っているような、複雑な表情で言った。リディアはそんな彼を優しく見つめ返した。
胸がくすぐったくなり、温かくなる感情は、キャスパーが心配してくれるものとよく似ていた。
怒られたのに、嬉しいと思う自分がいた。
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