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11、思い出せない記憶
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「おお、ブランシュ。ずいぶんと元気になったのではないか」
ここ数日、業務で忙殺されていた父が、久しぶりにブランシュのもとへ会いに来た。会えなかった間、彼女は特に寂しいと思わなかったが、国王の方はそうでもなく、娘の顔を見て表情を緩ませた。そうしてなかなか会いに来られなかったことを詫び、体調の方はどうかとたずねてきた。
「記憶の方はどうだ。何か、思い出したか?」
「いいえ、まだ……」
「そうか……」
国王はがっかりした様子であったが、すぐに笑みを浮かべた。
「まぁ、そんなに焦ることはない。儂はおまえが今こうして元気でいるだけで、とても嬉しい」
「……ありがとうございます」
父親の優しい眼差しに目を伏せつつ、ブランシュは心苦しさを感じた。父は娘のそんな様子に気づかず、明るい声で話題を変える。
「そう言えば、最近はマティアスとも仲良くやっているそうではないか」
ぎくりとする。どうしてそれを、と顔を上げると、国王はジョシュアに似た目元を和ませた。
「マティアスがあまりにも昼間熱心に仕事に専念して、おまえの見舞いに足を運ばぬからな。注意しようと思ったところ、臣下たちから夜には行っているようだと教えてもらい、安心した」
侍女も衛兵も、彼がブランシュの寝所へ忍んでいるのを知っている。そして報告している。すべて、筒抜けなのだ。
「よかったなぁ、ブランシュ。ようやくおまえの想いがマティアスに通じたのだな」
ただ違うのは、マティアスが妻を愛おしいがために抱いていると思っていることだ。
「おまえは周囲からどんなに反対されてもマティアスと結婚したいと望んでいたからな。こんなことになって、どうなることかと思ったが……かえってよかったかもしれぬ。マティアスも、おまえのことをこれからは大事にすると、誠心誠意、儂やジョシュアに謝ってくれたからな」
(えっ――)
「公爵が、そうおっしゃったのですか?」
「ああ、そうだよ」
ブランシュは愕然とした。娘が感激して言葉も出ないのだろうと父は思い、さらに笑みを深め、ほっそりとした両手を優しく己の手で包み込んだ。
「ブランシュ。よかったな。おまえの願いが叶って、儂ももう思い残すことはない」
「陛下……」
彼は心からそう思っている。ブランシュとマティアスの関係を祝福している。
(違う)
彼女は叫び出したくなる。
(あの方はわたくしのことなど、愛してなどいない!)
ブランシュはじわじわと息の根を止められるような息苦しさを覚え、小刻みに震えたけれど、国王陛下は喜びのあまりだと勘違いしたままだった。
「――あぁ、姫様! 懐かしゅうございます!」
ふっくらとした頬の、中年の女性がブランシュを見るなり、無遠慮に抱きしめてきた。ブランシュは困惑して、遠くで見ている侍女たちに視線で問いかける。
「王女殿下のお世話をなさっていた乳母でございます」
「姫様……私のことを、覚えてはいらっしゃらないのですか」
抱擁を緩め、乳母がじっとブランシュを見つめてくる。縋るような、期待するような目に、彼女は罪悪感を抱きながらも、ごめんなさいと視線を下げた。
「あなたがどなたか、わたくしは何も、覚えていないのです……」
「まぁ、そんな……!」
彼女は目を潤ませ、おいたわしいとわんわん泣き始めた。ブランシュの心はますます苦しくなり、ただ気づかわしげに女性の小さくなってしまった背中を撫でてやることしかできなかった。
やがて思う存分泣いて落ち着いたのか、彼女は目尻に溜まった涙をかさついた指先で拭い、しわくちゃの顔で笑って見せた。
「泣いてしまって、申し訳ありません」
「……いいのよ。少しは落ち着いたかしら?」
優しい言葉に、また彼女は涙で目を滲ませたが、今度は耐え、はいと頷いた。
「姫様、焦らずとも、ゆっくりと思い出していけばいいですわ。イネスが姫様のおそばについております」
「……ありがとう」
この女性はイネスという名前らしい。知っているはずなのに初めて聞く名にしか思えなかった。
「そうそう。今度庭師のダミアンもお呼びして、この宮殿の庭を手入れさせようとなさっているんですよ。ふふ。姫様は小さい頃、まだ見習いだったダミアンの仕事にちょっかいをかけては困らせていましたから、彼もみんなも、困ってしまって、でも、とても微笑ましい光景でしたのよ」
「……そう。それなら、何か思い出すかもしれないわね」
「はい!」
医師のロワールに、乳母のイネス。そして庭師のダミアン。彼らはみな、昔のブランシュと面識がある者たちだ。記憶を失う前の自分を、よく知っている。だから会えば、思い出す何かのきっかけになるのではないかと思っている。
「あなたがわたくしのもとへ来たのは、陛下の取り計らいかしら」
「ええ、ええ。陛下は姫様が記憶を無くされたことをとても嘆いているご様子で、田舎で暮らしていた私のもとへも、わざわざ手紙を書いて、もう一度王女の世話をしてくれないかと頼まれましたのよ」
「そう……それは、悪いことをしてしまったわね……」
イネスはカッと垂れ下がった目を見開いた。
「何をおっしゃいますか! 私も姫様には記憶を取り戻して欲しいですもの。それに田舎での暮らしは穏やかで、平和ですけれど、少し退屈していたのも、事実でございますわ。ですからこうして王都へ戻ってくることができて、私、わくわくしていますの。姫様のおかげですわ」
ブランシュに記憶を取り戻してほしいと言いながら、記憶を失くしたことで王宮へ呼び出されたことを嬉しがっている。ひどく矛盾した言い分に聞こえた。
「あなたが無理をしていないと、いいのだけれど……」
「私は昔の可愛い姫様とまたこうして会うことができて、とても嬉しく思っております」
これからはイネスを頼って下さいね、と再度抱きしめられ、ブランシュは力なく「ええ」と答えた。
ここ数日、業務で忙殺されていた父が、久しぶりにブランシュのもとへ会いに来た。会えなかった間、彼女は特に寂しいと思わなかったが、国王の方はそうでもなく、娘の顔を見て表情を緩ませた。そうしてなかなか会いに来られなかったことを詫び、体調の方はどうかとたずねてきた。
「記憶の方はどうだ。何か、思い出したか?」
「いいえ、まだ……」
「そうか……」
国王はがっかりした様子であったが、すぐに笑みを浮かべた。
「まぁ、そんなに焦ることはない。儂はおまえが今こうして元気でいるだけで、とても嬉しい」
「……ありがとうございます」
父親の優しい眼差しに目を伏せつつ、ブランシュは心苦しさを感じた。父は娘のそんな様子に気づかず、明るい声で話題を変える。
「そう言えば、最近はマティアスとも仲良くやっているそうではないか」
ぎくりとする。どうしてそれを、と顔を上げると、国王はジョシュアに似た目元を和ませた。
「マティアスがあまりにも昼間熱心に仕事に専念して、おまえの見舞いに足を運ばぬからな。注意しようと思ったところ、臣下たちから夜には行っているようだと教えてもらい、安心した」
侍女も衛兵も、彼がブランシュの寝所へ忍んでいるのを知っている。そして報告している。すべて、筒抜けなのだ。
「よかったなぁ、ブランシュ。ようやくおまえの想いがマティアスに通じたのだな」
ただ違うのは、マティアスが妻を愛おしいがために抱いていると思っていることだ。
「おまえは周囲からどんなに反対されてもマティアスと結婚したいと望んでいたからな。こんなことになって、どうなることかと思ったが……かえってよかったかもしれぬ。マティアスも、おまえのことをこれからは大事にすると、誠心誠意、儂やジョシュアに謝ってくれたからな」
(えっ――)
「公爵が、そうおっしゃったのですか?」
「ああ、そうだよ」
ブランシュは愕然とした。娘が感激して言葉も出ないのだろうと父は思い、さらに笑みを深め、ほっそりとした両手を優しく己の手で包み込んだ。
「ブランシュ。よかったな。おまえの願いが叶って、儂ももう思い残すことはない」
「陛下……」
彼は心からそう思っている。ブランシュとマティアスの関係を祝福している。
(違う)
彼女は叫び出したくなる。
(あの方はわたくしのことなど、愛してなどいない!)
ブランシュはじわじわと息の根を止められるような息苦しさを覚え、小刻みに震えたけれど、国王陛下は喜びのあまりだと勘違いしたままだった。
「――あぁ、姫様! 懐かしゅうございます!」
ふっくらとした頬の、中年の女性がブランシュを見るなり、無遠慮に抱きしめてきた。ブランシュは困惑して、遠くで見ている侍女たちに視線で問いかける。
「王女殿下のお世話をなさっていた乳母でございます」
「姫様……私のことを、覚えてはいらっしゃらないのですか」
抱擁を緩め、乳母がじっとブランシュを見つめてくる。縋るような、期待するような目に、彼女は罪悪感を抱きながらも、ごめんなさいと視線を下げた。
「あなたがどなたか、わたくしは何も、覚えていないのです……」
「まぁ、そんな……!」
彼女は目を潤ませ、おいたわしいとわんわん泣き始めた。ブランシュの心はますます苦しくなり、ただ気づかわしげに女性の小さくなってしまった背中を撫でてやることしかできなかった。
やがて思う存分泣いて落ち着いたのか、彼女は目尻に溜まった涙をかさついた指先で拭い、しわくちゃの顔で笑って見せた。
「泣いてしまって、申し訳ありません」
「……いいのよ。少しは落ち着いたかしら?」
優しい言葉に、また彼女は涙で目を滲ませたが、今度は耐え、はいと頷いた。
「姫様、焦らずとも、ゆっくりと思い出していけばいいですわ。イネスが姫様のおそばについております」
「……ありがとう」
この女性はイネスという名前らしい。知っているはずなのに初めて聞く名にしか思えなかった。
「そうそう。今度庭師のダミアンもお呼びして、この宮殿の庭を手入れさせようとなさっているんですよ。ふふ。姫様は小さい頃、まだ見習いだったダミアンの仕事にちょっかいをかけては困らせていましたから、彼もみんなも、困ってしまって、でも、とても微笑ましい光景でしたのよ」
「……そう。それなら、何か思い出すかもしれないわね」
「はい!」
医師のロワールに、乳母のイネス。そして庭師のダミアン。彼らはみな、昔のブランシュと面識がある者たちだ。記憶を失う前の自分を、よく知っている。だから会えば、思い出す何かのきっかけになるのではないかと思っている。
「あなたがわたくしのもとへ来たのは、陛下の取り計らいかしら」
「ええ、ええ。陛下は姫様が記憶を無くされたことをとても嘆いているご様子で、田舎で暮らしていた私のもとへも、わざわざ手紙を書いて、もう一度王女の世話をしてくれないかと頼まれましたのよ」
「そう……それは、悪いことをしてしまったわね……」
イネスはカッと垂れ下がった目を見開いた。
「何をおっしゃいますか! 私も姫様には記憶を取り戻して欲しいですもの。それに田舎での暮らしは穏やかで、平和ですけれど、少し退屈していたのも、事実でございますわ。ですからこうして王都へ戻ってくることができて、私、わくわくしていますの。姫様のおかげですわ」
ブランシュに記憶を取り戻してほしいと言いながら、記憶を失くしたことで王宮へ呼び出されたことを嬉しがっている。ひどく矛盾した言い分に聞こえた。
「あなたが無理をしていないと、いいのだけれど……」
「私は昔の可愛い姫様とまたこうして会うことができて、とても嬉しく思っております」
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