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新たな事実
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「ミランダ様の勘は侮れませんよ。私でも時々はっとさせられるほどの生存本能をお見せなるのですから」
「ねぇ、それって褒めているのよね?」
ロジェがもちろんですと肯定するも、ミランダには嘘くさく思えてしまう。
(まぁ。今はそれより……)
結果的に、ミランダの良くない勘は当たっていた。
「ミラを安心させたくて調べたところ、母娘が監視の目を盗んで、逃げ出していた」
ミランダはロジェと共にディオンの報告を聞いていた。ディオンの側近であるヤニックとアルノーもいる。彼らはロジェが女装していることも知っており、今もミランダの侍女として振る舞うロジェの姿を見ても動じない。さすがディオンの側近と褒めるところだろうか。それとも指摘することを諦めたか。
「今さらになってわかった、ってことは、事実は違うのですね」
「ああ。病気で亡くなったと報告されていた。だが実際は……」
ディオンは少し言いにくそうな顔をする。
「その女性に手を出していた、とかでしょうか?」
ロジェが代わりに尋ねれば、ディオンは目を閉じてため息をつくようにそうだと言った。
「密かに身体の関係を持つことで監視の目を緩ませ、娘と共に崖から身を投げ出した」
「街へ行くまでは捕まる可能性が高いので、いちかばちかの賭けに出たのでしょう。恐らく同情を買う振りをして、監視の心を揺さぶって、娘だけでも助けようとしたのではないでしょうか。親はともかく、子どもが囚人として生きていくにはあまりにも辛い環境でしたでしょうから。死ぬことになっても、かえってよかったかもしれないという苦渋の判断だったかもしれませんね」
ロジェはなぜこんなにも、まるでその時を見たかのようにスラスラ語れるのだとヤニックとアルノーの顔が言っていた。
ロジェは幼い頃、過酷な人生を送っていたので、そうした者たちの行動原理がわかるのかもしれない。
「……いずれにせよ、その一族が生きていたということですか?」
「ああ。まだ、調べている最中だが……」
彼らは自分たちをこんな目に遭わせた王家に復讐しようとしているのか。
(妬みや恨みって、そう簡単には消えないのね……)
一同が黙り込み、ミランダが暗い顔を晒していると、いつの間にかディオンが目の前におり、名前を呼んだ。
「大丈夫だ。何があっても、ミラは俺たちが守る。絶対だ」
「ディオン様……」
「そうですよ、姫様。私がそばについておりますので、もし手を出してきたならば何十倍にもして返り討ちにします」
真顔でそう告げたロジェにミランダは苦笑いする。
ロジェならば本当に相手にそうすると思ったからだ。
「私たちもおりますから。だからそんなに構える必要はありませんよ」
「はい。そこのお二人には及ばないかもしれませんが、いざという時には王妃殿下の身代わりになる覚悟です」
ヤニックとアルノーの言葉にミランダは何だか意外な気持ちになる。しかし二人の言葉に嘘偽りはない様子で、心から自分のことを心配しているのが伝わってきた。
「……ありがとう、二人とも。今の言葉だけで、十分です。とても勇気が湧いてきました」
ミランダが微笑と共にお礼を述べれば、ヤニックは目を瞠り、アルノーは顔を赤くした。
「……ミラ。俺には何もないのか」
「姫様。私には?」
二人にずいっと迫られ、ミランダは目をぱちぱちと瞬いたあと、思わず笑ってしまった。
「どうして笑うんだ?」
「ふふっ、ごめんなさい。何だか自分も褒めてってねだる子どもみたいで……二人ともそろって同じ顔をしていたから、おかしくなったの」
顔立ちも全く似ていないので余計におかしく思えたのだ。
ツボにはまるミランダを二人はどこか不満そうに見ていたが、やがてどちらともなく顔を見合わせ、降参するように肩の力を抜いた。
「まぁ。ミラが明るい気持ちになれたのならば、それ以上は望むまい」
「そうですね。私も同じ気持ちです」
そんなふうに言い合う二人を見ていたヤニックとアルノーもまた顔を見合わせ、二人にばれないようこっそり笑い合うのだった。
「ねぇ、それって褒めているのよね?」
ロジェがもちろんですと肯定するも、ミランダには嘘くさく思えてしまう。
(まぁ。今はそれより……)
結果的に、ミランダの良くない勘は当たっていた。
「ミラを安心させたくて調べたところ、母娘が監視の目を盗んで、逃げ出していた」
ミランダはロジェと共にディオンの報告を聞いていた。ディオンの側近であるヤニックとアルノーもいる。彼らはロジェが女装していることも知っており、今もミランダの侍女として振る舞うロジェの姿を見ても動じない。さすがディオンの側近と褒めるところだろうか。それとも指摘することを諦めたか。
「今さらになってわかった、ってことは、事実は違うのですね」
「ああ。病気で亡くなったと報告されていた。だが実際は……」
ディオンは少し言いにくそうな顔をする。
「その女性に手を出していた、とかでしょうか?」
ロジェが代わりに尋ねれば、ディオンは目を閉じてため息をつくようにそうだと言った。
「密かに身体の関係を持つことで監視の目を緩ませ、娘と共に崖から身を投げ出した」
「街へ行くまでは捕まる可能性が高いので、いちかばちかの賭けに出たのでしょう。恐らく同情を買う振りをして、監視の心を揺さぶって、娘だけでも助けようとしたのではないでしょうか。親はともかく、子どもが囚人として生きていくにはあまりにも辛い環境でしたでしょうから。死ぬことになっても、かえってよかったかもしれないという苦渋の判断だったかもしれませんね」
ロジェはなぜこんなにも、まるでその時を見たかのようにスラスラ語れるのだとヤニックとアルノーの顔が言っていた。
ロジェは幼い頃、過酷な人生を送っていたので、そうした者たちの行動原理がわかるのかもしれない。
「……いずれにせよ、その一族が生きていたということですか?」
「ああ。まだ、調べている最中だが……」
彼らは自分たちをこんな目に遭わせた王家に復讐しようとしているのか。
(妬みや恨みって、そう簡単には消えないのね……)
一同が黙り込み、ミランダが暗い顔を晒していると、いつの間にかディオンが目の前におり、名前を呼んだ。
「大丈夫だ。何があっても、ミラは俺たちが守る。絶対だ」
「ディオン様……」
「そうですよ、姫様。私がそばについておりますので、もし手を出してきたならば何十倍にもして返り討ちにします」
真顔でそう告げたロジェにミランダは苦笑いする。
ロジェならば本当に相手にそうすると思ったからだ。
「私たちもおりますから。だからそんなに構える必要はありませんよ」
「はい。そこのお二人には及ばないかもしれませんが、いざという時には王妃殿下の身代わりになる覚悟です」
ヤニックとアルノーの言葉にミランダは何だか意外な気持ちになる。しかし二人の言葉に嘘偽りはない様子で、心から自分のことを心配しているのが伝わってきた。
「……ありがとう、二人とも。今の言葉だけで、十分です。とても勇気が湧いてきました」
ミランダが微笑と共にお礼を述べれば、ヤニックは目を瞠り、アルノーは顔を赤くした。
「……ミラ。俺には何もないのか」
「姫様。私には?」
二人にずいっと迫られ、ミランダは目をぱちぱちと瞬いたあと、思わず笑ってしまった。
「どうして笑うんだ?」
「ふふっ、ごめんなさい。何だか自分も褒めてってねだる子どもみたいで……二人ともそろって同じ顔をしていたから、おかしくなったの」
顔立ちも全く似ていないので余計におかしく思えたのだ。
ツボにはまるミランダを二人はどこか不満そうに見ていたが、やがてどちらともなく顔を見合わせ、降参するように肩の力を抜いた。
「まぁ。ミラが明るい気持ちになれたのならば、それ以上は望むまい」
「そうですね。私も同じ気持ちです」
そんなふうに言い合う二人を見ていたヤニックとアルノーもまた顔を見合わせ、二人にばれないようこっそり笑い合うのだった。
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