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ご奉仕*

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「わかりました。では、寝台の縁に腰かけてください」

 グレイスに言われたとおり、レイモンドはいそいそと従う。脚を大きく開いてもらい、その間にグレイスが入ってしゃがむと、彼は動揺したように後ろへ仰け反った。

「そ、そんなところに入るのか」
「ええ。不快かもしれませんが、レイモンド様が上でわたしが下にいる方が舐めやすいので」
「そ、そうか……」

 本当は男性目線から女性が下にいることで、より視覚的に興奮を得てもらうため……という理由もあったのだが、グレイスは口にはしなかった。緊張していたためでもあった。いくらエステラの講義を受けていても、実践に移すのは今が初めてである。

(落ち着いて……まずは、レイモンド様のを……)

 前を寛げると、まるで待ち望んでいた様子でぶるんと彼の分身が飛び出てきた。その勢いのよさに目を丸くすると、レイモンドが焦って「すまない」と謝ってくる。グレイスはくすりと微笑んだ。

「いいえ。すごく元気なんですね」
「あ、あぁ……。貴女に触れてもらえると思っただけで、もう……いや、何でもない」

 これ以上余計なことを口走るまいと、レイモンドは先を促した。そんな彼の態度にグレイスはいつもの余裕を取り戻し、そっと雄茎に触れた。

「大きくて、硬くて、熱い……。それにこんなにいっぱい涙を流して……あ、ピクンって動きましたわ」
「グ、グレイス。あまり言葉にしないでくれ……恥ずかしいし、興奮する」
「でも、レイモンド様も言葉にしていたじゃありませんか」
「う……そう、だな。わかった、はぁっ……我慢、する……」

 そんなやり取りをしながら、まずグレイスは彼ものがどれくらいの大きさなのか、指でじっくり触れて確かめていく。グレイスの指に撫でられる度、ぴくぴくと生き物のように震え、先端部分から透明な滴を零している。

(確かこれは興奮している証で、女性で言うと、準備ができている、ってことよね)

 授業では遠目から見たり、絵や張り形を見るくらいで、実物を目にするのはやはりレイモンドが初めてである。

(なんとなく、レイモンド様の方が大きいような?)

 いや、人と比べるのはよくない。エステラにひんひん啼かされていた男性には男性の、レイモンドにはレイモンドの良さがある。

「グレイス、もう……」

 そんなことを考えながらグレイスが手を動かしていると、レイモンドがはぁはぁと射精しそうな雰囲気を出す。

「レイモンド様、まだ出してはいけません。もう少し、我慢なさって」
「しかし、くっ……」
「レイモンド様」
「り、了解だ、グレイスの命令なら、俺は我慢でき、る……」
「ありがとうございます。そろそろ、咥えますね」
「……! わ、わかった。だが、あまり無理はしないでくれ」

 ここで気遣えるあたり、やはりレイモンドは優しい。グレイスは微笑んでこくんと頷くと、すでに勇ましく勃ち上がっている男根を支え、ちゅっと鈴口に口づけする。レイモンドの情けない呻き声を耳にしながら、ぱくりと先端を咥えた。

(やっぱり、大きい……)

 もっと奥まで咥えようとしても、グレイスの口では難しい。なので先端部分を中心に舌を使って奉仕することにした。

(確かこのカリの部分が気持ちいいって……あ、根元の方は指を使って……)

「はぁ、あっ、グレイス、そんな、吸われるようにされたら、俺はもう……っ」

(レイモンド様は反応が大きくてわかりやすいわ……)

 彼の分身もさらに硬く膨らんで気持ちがいいと素直に伝えてくれる。

「くっ……あっ」

(このまま……)

「だめだっ、グレイス!」

 口の中で受け止めようとしていたグレイスは突然ぐっと肩を押され、咥えていた肉棒を口から放してしまう。と同時に白い液体が胸や首筋、頬にまで飛び散ってしまう。

「ん……」
「す、すまない!」
「……いえ、いいんです」
「今拭くから!」

 レイモンドは下半身を晒したまま、あたふたとグレイスの胸や顔をタオルで急いで拭っていく。綺麗に拭き取ると、見事に落ち込んだ表情になった。

「気持ちよくなかったですか?」
「まさか! 素晴らしかった。……ただ、やはり貴女にこんなことをさせてしまったのが申し訳なくて……」
(ふむ……)

 口での奉仕に罪悪感を抱くのなら――

「胸で、挟みましょうか?」

 一瞬何を言われたのか理解できなかったのか、レイモンドはポカンとする。だがグレイスの胸に視線をやり、その意味を理解したのか、首までかぁっと赤く染めた。

「なっ、貴女は何を言っているのか、理解しているのか!?」
「はい。レイモンド様のものを、わたしの胸できゅっと挟んで――」
「貴女は俺を殺すつもりか!」

 ややキレ気味に言われ、シュンとグレイスは眉を下げる。

「ごめんなさい。女性がこんなことするなんて、はしたないですよね」
「あっ、いや、そんなことはない。そうじゃなくて……」

 まだ床に座っていたグレイスは上目遣いでレイモンドにそっと尋ねる。

「わたしがするの、嫌ですか?」
「~~嫌じゃないっ!!」

 グレイスはよかったと微笑んで、さっそく自身の胸でレイモンドの肉棒を挟んだ。

「くっ……これは、やばい。視覚的暴力だ……っ」

 まだ挟んだだけなのに、レイモンドはすでに息絶え絶えである。グレイスは少し意地悪な気持ちが湧いた。

(えいっ)

 きゅっとわりと強めに挟むと、「あぁっ……」と狙いどおり彼は喘いでくれた。その後も面白いほど反応してくれる。

(ふふ、可愛い。それにしても……)

 つい先ほどたっぷりと精を吐き出して項垂れていたのに、レイモンドの男根はもうすでに元気を取り戻している。

(この調子だと、またすぐに出てしまいそうね)

 また胸に出されるのだろうか……と思っていると、レイモンドがグレイスの肩を掴んで、行為を止めた。

「レイモンド様?」
「俺も、貴女に触れたい。奉仕させてくれ」
「えっ」

 グレイスは戸惑う。

「今日はわたしがレイモンド様を慰めるので、そんなこと、ひゃっ」

 つべこべ言わせまいとレイモンドはグレイスを寝台の上へ引っ張り上げると、なぜか身体を逆向きにして、自分が下になった状態でグレイスの尻を持ち上げる。彼女の身体はレイモンドに跨っており、猫が伸びをしたような格好になる。

「レイモンド様! 一体何を――」
「こうして互いの急所を晒すかたちで舐め合えば、恥ずかしさも相殺され、互いに気持ちよくなれる」
「そんな、でも、ぁんっ……」

 はぁ、と息を吹きかけられ、グレイスはびくんと身体を震わせた。

「さっき見た時よりもさらに濡れているな……」

 丸い尻を支えながら花びらを左右に開かれ、じっくりと観察されている。窄まりまで見えている体勢に、今までよりもずっと強い羞恥心に襲われ、グレイスは真っ赤になった。

「そ、そんなところご覧にならないでっ」
「綺麗だから見たい」
「ではせめて、話すのはおやめになって……」

 レイモンドの吐息を感じる度、むずむずして尻を揺らしてしまう。

「どうして? 感じているのか? ああ、俺が話すと、貴女のここがひくつくな」
「やぁ、んっ……」

 指をつぷりと入れられてグレイスはいつもより大きく反応してしまう。恐らく見えないから余計に神経が研ぎ澄まされるだろう。

「んっ、やだ、レイモンド様、恥ずかしい……」
「可愛いな……。今の恥ずかしがる貴女を見られなくてひどく残念だ」

 レイモンドの呼吸が乱れ、吐息が忙しなく肌を刺激する。グレイスは声を殺し、代わりに身体を震わせ、レイモンドの蜜孔を弄る指をしとどに濡らしてしまう。

「……ほら、グレイスも俺のに触って。俺と一緒に気持ちよくなろう」
(レイモンド様と、一緒に……)

 互いの性器を舐め合う。エステラにそういった体位があることをグレイスは教えられていた。だが今回言い出したのは、レイモンドの方だ。彼はこうやって愛することを知っていたのだろうか。童貞のなせる業なのか。

 ……いや、グレイスも気持ちよくなってほしいという気持ちから自然と導きだした体位な気がした。

 彼もまた自分を愛そうとしている。そう思うと、グレイスは胸が熱くなり、目の前でびんびんに勃起している肉棒に舌を這わせた。今度は口に含んだ時の顔を晒さずに済むと思えば、積極的に顎を動かし、唇と舌で吸いつくことができる。

(わたしも、レイモンド様と愛し合いたい……愛してほしい)

 凶悪な見た目をしたレイモンドの分身……根元の子種を作る場所を愛おしげに掌で包み込み、唇で亀頭にキスして、輪っかのようにした指の腹で強めに扱いていく。

「あぁ……グレイス……」
「んっ、んんっ……」

 お返しだというようにレイモンドがグレイスの気持ちいいところを指と舌で丹念に可愛がり、その時は我慢できず甘い声で啼いた。

 二人は互いに顔が見えない状態で相手の声に耳を澄まし、確実に興奮を高めていく。

「ふっ、う……レイモンド、さま、わたし、もう、だめ……っ」
「あぁ、グレイス、俺もだ、一緒にいきたい、一緒に――」

 淫音を大きく響かせ、陰核の裏側を小刻みに揺らされていく。グレイスも激しく肉竿を扱き、もうだめだと思った瞬間――

「あぁっ――」

 どぴゅっ、と精液が弾け飛び、グレイスの頭の中も真っ白に塗り替えられた。
 心地よい疲労感に包まれ、彼女はくたりとそのまま横になってしまう。

「グレイス」
「あ、レイモンド様……」

 先に回復したレイモンドが顔を覗き込んできた。グレイスは目をとろんとさせたまま、彼へと腕を伸ばす。レイモンドは当然のように抱きしめ、そのまま二人で一緒に寝台に沈んでいく。

「とてもよかった……」
「ええ、わたしも……」

 目を閉じていた瞼の上に柔らかな感触が落ちる。目を開けば、優しく、幸せに満ちた表情のレイモンドが映る。

「でも貴女の顔を見られないのは、やはり惜しいというか、寂しいな」

 レイモンドの感想に、グレイスは笑った。そして「わたしも」と告げるように目元にキスを返した。
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