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ディートハルト
7、偽善
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翌朝、やはりイレーネを抱きしめながら目覚めたディートハルトはひどく離れがたい思いに駆られた。彼女の腹に回していた腕をさらに自分の方へ引き寄せ、細い首筋に唇を押し当て、じっと目を閉じる。彼女はおそらくすでに起きていた。けれど何も言わず、ディートハルトも声をかけずに、その温もりを感じていた。
だがやがてもう行かなくてはならないと、抗い難い思いで起き上がり、声もかけず部屋を後にした。
人前で済ました別れの挨拶は実に他人行儀なものであっただろう。実際イレーネは目を合わせようとしなかった。早く行ってしまえと心の中では思っているのかもしれない。
客観的に見れば、自分がしたことは最低だ。婚約者でもない女性――マルガレーテを抱いた後でイレーネのもとへ足を運んだのだから。
(いや、待ち伏せしていたのか)
いずれにせよ、双方に対する裏切りであり、イレーネ本人からすればなぜ、と言いたいことだろう。しかしディートハルト自身にもよくわからなかった。
恐らくマルガレーテを思う存分抱けず、燻った身体のまま帰りに偶然イレーネが他の男と逢瀬を交わす場面を見てしまい、嫉妬に駆られた結果だろう。
つまりただ今までの付き合いから何となく許せなくなっただけであり、イレーネに対して深い感情があるわけではない。あるとしても、身体の相性がいいだけ。
性交を毛嫌いし、淫欲に耽る姿を悪だと見なす人間はよく言うじゃないか。心と身体は別だと。
夫が愛人に現を抜かしても、それは若い身体に、女の技巧に夢中になっているだけだ。心では、正妻の方を愛している。理性で愛している女こそ、真実の愛だと。肉欲に溺れる愛は、正しくない。間違っている。認められない。
だから父も、ディートハルトの母親を捨てたのだ。心で正しいと思う人間を、正妻を最後には選んだ。そこに矛盾を孕んでいても、理性ある人間は正しいと言うはずだ。
自分が本当に愛しているのは、マルガレーテだけだ。
だって彼女はディートハルトがずっと想い焦がれてきた人なのだ。辛い過去を慰めてくれた。彼女といれば、ディートハルトの心は慰められる。見ているだけで愛していないのが伝わってくる両親の姿を打ち消してくれる。彼女を愛することで、自分は救われる。
ディートハルトのこうした考えは聖戦で疲弊していく中でより強固になった。どんなに強い戦士でも人間の死ぬ様を間近で見たり、肉を切り裂き、骨を断つ所業などを繰り返していると精神が擦り減っていく。脆弱な者は神経がおかしくなり、自殺する者もいた。
何より味方だと思っていた人間が言い争い、愚策を決行して大損害を自陣にもたらすとなると、どんな状況でも冷静であれと教え込まれてきた優秀な騎士たちもうんざりしてくる。戦など放って好き勝手し始めるのも、致し方ない気がした。
ディートハルトは上が仕出かした問題の後始末に追われながら、残った騎士団と適宜相談してどうにか双方の長が納得するかたちで戦いを終結するのに尽力した。王国側が失ったものは多く、結果的に惨敗であったわけだが、これ以上続けても泥沼化するだけであり、引き上げるのが最善であった。
現地の損害も激しく、そこで暮らしていた住民も怪我をして命を落とす者も大勢いた。神に仕える白の騎士団の中にはそうした彼らを放っておけず、留まることを主張してきたが、ディートハルトは一刻も早く帰りたかった。傷ついた身体や精神は、幼い頃のマルガレーテの笑顔を思い出させ、欲していた。
「――帰るのか」
振り返り、自分と同じ疲れ果てた表情の男がいた。いや、自分よりも酷い。なにせ人間の醜く、愚かな姿を罪深いと考える集団に属しているのだから。もともと性根が腐った自分よりも、うんとその綺麗な魂は傷ついているはずだ。
だが、ディートハルトは特に気遣うこともせず、淡々と「ああ」と答えた。
「そうか」
てっきり非難されると思っていたが、実にあっさりと彼は――ユリウスはディートハルトの選択を認めたので、拍子抜けする思いがした。それが顔に出ていたのか、ユリウスは笑った。
「故郷を恋しがるのは誰だって同じだ。特に貴殿は此度の戦争でずいぶんと走り回っていたから、余計に早く帰りたいだろう」
「……貴殿は残るのか」
ユリウスは静かに微笑み、ああと頷いた。
「怪我人が大勢いる。部下も動けない者が多いからな。建物も損壊しているし……残ってできることをしようと思う」
本来ならディートハルトも残って手伝うべきなのだろう。
「本国への報告も大切な任務だ。きっと国王陛下も気を揉んで待っていらっしゃることだろうから、一刻も早く帰って伝えるべきだ」
仲間を置き去りにして帰ることを気に病むな、というユリウスの気遣いが感じられた。ディートハルトは彼のこういうところが苦手だった。相手が気にしていることを鋭く見抜き、大丈夫だと許す言葉を善意から与える。――亡くなった異母弟を思い出させた。
別にディートハルトは他の者をおいて帰ることに罪悪感など抱いていなかった。気の毒には思うが、それが戦争というものだ。初めからわかりきっていたことだった。
「それに白の騎士団は神に仕える者だ。恋人も配偶者もいないのだから、気楽なものさ」
(――欲したくせに)
イレーネを。
ディートハルトはそう思って内心驚いた。今まで彼女のことなど忘れていた――意識しないようにしていたのに、ユリウスの何気ない一言で急に強い感情となって表に現れ出た。
「神に仕える人間といっても、肉欲には逆らえないだろう」
嘲笑するような口調に、ユリウスは面食らったようだった。ディートハルトも、別にこんなことを言うつもりはなかった。勝手に、攻撃的な言葉が自分の口から出ていた。
「……いや、すまない。今の言葉は忘れてくれ」
「そうだな。貴殿の言う通りだ。聖職者といっても、人であり、獣でもある。欲にはどうしても逆らえない時がある」
ユリウスはディートハルトの言葉に怒ることもせず、さらりと受けとめてみせた。だからディートハルトは立ち去ることもできず、さらに彼の話に耳を傾ける羽目になった。
「仲間が怪我を負って、呆気なく死んでいく様を見ていたせいか、私自身も、これでよかったのだろうかと思うことがある」
「女を抱かずに死んでいくことを後悔しているのか」
ディートハルトの直球な確認に、ユリウスは苦笑いした。
「まぁ、要はそういうことなんだろうが……好きな女性と結婚して家庭を築くことも、幸せだったのだろうなと考えたんだ」
「だったらここでの仕事が終われば、国へ帰り、還俗して家庭を持てばいい」
もしくはここで女を作ればいい。
「いや、それはできない」
「……なぜ」
ユリウスは黙って、ディートハルトを見つめる。
「――その人は、他の男性に嫁ぐことがすでに決まっているからだ」
ディートハルトはしばし黙り込んだが、やがてふいと背を向けながらそっけなく答えた。
「そうか。なら諦めて他の女性を探すことだな」
「ディートハルト」
初めて、名前を呼ばれた。肩を掴まれ、存外強い力で振り向かされる。緑の瞳が射貫くように自分の目を見た。
「なんだ」
「……幸せに、してくれ」
誰を、とは言わなかった。
だがディートハルトには嫌というほど伝わり、不快な気持ちになった。掴まれた手を乱暴に振り落としたかったが、ぐっと堪えて、「ああ」と感情を押し殺した声で頷いた。ユリウスはほっとした表情を浮かべ、力なく手を放した。
「すまない。引き留めてしまって」
「いや……」
ユリウスは笑みを浮かべ、達者で暮らすよう別れの挨拶を述べた。ディートハルトも同じ言葉を返して、その場を後にした。
奪う覚悟もないくせに――本当は欲しくてたまらないくせに、他人に幸せを託すユリウスの偽善に吐き気がした。
だがやがてもう行かなくてはならないと、抗い難い思いで起き上がり、声もかけず部屋を後にした。
人前で済ました別れの挨拶は実に他人行儀なものであっただろう。実際イレーネは目を合わせようとしなかった。早く行ってしまえと心の中では思っているのかもしれない。
客観的に見れば、自分がしたことは最低だ。婚約者でもない女性――マルガレーテを抱いた後でイレーネのもとへ足を運んだのだから。
(いや、待ち伏せしていたのか)
いずれにせよ、双方に対する裏切りであり、イレーネ本人からすればなぜ、と言いたいことだろう。しかしディートハルト自身にもよくわからなかった。
恐らくマルガレーテを思う存分抱けず、燻った身体のまま帰りに偶然イレーネが他の男と逢瀬を交わす場面を見てしまい、嫉妬に駆られた結果だろう。
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性交を毛嫌いし、淫欲に耽る姿を悪だと見なす人間はよく言うじゃないか。心と身体は別だと。
夫が愛人に現を抜かしても、それは若い身体に、女の技巧に夢中になっているだけだ。心では、正妻の方を愛している。理性で愛している女こそ、真実の愛だと。肉欲に溺れる愛は、正しくない。間違っている。認められない。
だから父も、ディートハルトの母親を捨てたのだ。心で正しいと思う人間を、正妻を最後には選んだ。そこに矛盾を孕んでいても、理性ある人間は正しいと言うはずだ。
自分が本当に愛しているのは、マルガレーテだけだ。
だって彼女はディートハルトがずっと想い焦がれてきた人なのだ。辛い過去を慰めてくれた。彼女といれば、ディートハルトの心は慰められる。見ているだけで愛していないのが伝わってくる両親の姿を打ち消してくれる。彼女を愛することで、自分は救われる。
ディートハルトのこうした考えは聖戦で疲弊していく中でより強固になった。どんなに強い戦士でも人間の死ぬ様を間近で見たり、肉を切り裂き、骨を断つ所業などを繰り返していると精神が擦り減っていく。脆弱な者は神経がおかしくなり、自殺する者もいた。
何より味方だと思っていた人間が言い争い、愚策を決行して大損害を自陣にもたらすとなると、どんな状況でも冷静であれと教え込まれてきた優秀な騎士たちもうんざりしてくる。戦など放って好き勝手し始めるのも、致し方ない気がした。
ディートハルトは上が仕出かした問題の後始末に追われながら、残った騎士団と適宜相談してどうにか双方の長が納得するかたちで戦いを終結するのに尽力した。王国側が失ったものは多く、結果的に惨敗であったわけだが、これ以上続けても泥沼化するだけであり、引き上げるのが最善であった。
現地の損害も激しく、そこで暮らしていた住民も怪我をして命を落とす者も大勢いた。神に仕える白の騎士団の中にはそうした彼らを放っておけず、留まることを主張してきたが、ディートハルトは一刻も早く帰りたかった。傷ついた身体や精神は、幼い頃のマルガレーテの笑顔を思い出させ、欲していた。
「――帰るのか」
振り返り、自分と同じ疲れ果てた表情の男がいた。いや、自分よりも酷い。なにせ人間の醜く、愚かな姿を罪深いと考える集団に属しているのだから。もともと性根が腐った自分よりも、うんとその綺麗な魂は傷ついているはずだ。
だが、ディートハルトは特に気遣うこともせず、淡々と「ああ」と答えた。
「そうか」
てっきり非難されると思っていたが、実にあっさりと彼は――ユリウスはディートハルトの選択を認めたので、拍子抜けする思いがした。それが顔に出ていたのか、ユリウスは笑った。
「故郷を恋しがるのは誰だって同じだ。特に貴殿は此度の戦争でずいぶんと走り回っていたから、余計に早く帰りたいだろう」
「……貴殿は残るのか」
ユリウスは静かに微笑み、ああと頷いた。
「怪我人が大勢いる。部下も動けない者が多いからな。建物も損壊しているし……残ってできることをしようと思う」
本来ならディートハルトも残って手伝うべきなのだろう。
「本国への報告も大切な任務だ。きっと国王陛下も気を揉んで待っていらっしゃることだろうから、一刻も早く帰って伝えるべきだ」
仲間を置き去りにして帰ることを気に病むな、というユリウスの気遣いが感じられた。ディートハルトは彼のこういうところが苦手だった。相手が気にしていることを鋭く見抜き、大丈夫だと許す言葉を善意から与える。――亡くなった異母弟を思い出させた。
別にディートハルトは他の者をおいて帰ることに罪悪感など抱いていなかった。気の毒には思うが、それが戦争というものだ。初めからわかりきっていたことだった。
「それに白の騎士団は神に仕える者だ。恋人も配偶者もいないのだから、気楽なものさ」
(――欲したくせに)
イレーネを。
ディートハルトはそう思って内心驚いた。今まで彼女のことなど忘れていた――意識しないようにしていたのに、ユリウスの何気ない一言で急に強い感情となって表に現れ出た。
「神に仕える人間といっても、肉欲には逆らえないだろう」
嘲笑するような口調に、ユリウスは面食らったようだった。ディートハルトも、別にこんなことを言うつもりはなかった。勝手に、攻撃的な言葉が自分の口から出ていた。
「……いや、すまない。今の言葉は忘れてくれ」
「そうだな。貴殿の言う通りだ。聖職者といっても、人であり、獣でもある。欲にはどうしても逆らえない時がある」
ユリウスはディートハルトの言葉に怒ることもせず、さらりと受けとめてみせた。だからディートハルトは立ち去ることもできず、さらに彼の話に耳を傾ける羽目になった。
「仲間が怪我を負って、呆気なく死んでいく様を見ていたせいか、私自身も、これでよかったのだろうかと思うことがある」
「女を抱かずに死んでいくことを後悔しているのか」
ディートハルトの直球な確認に、ユリウスは苦笑いした。
「まぁ、要はそういうことなんだろうが……好きな女性と結婚して家庭を築くことも、幸せだったのだろうなと考えたんだ」
「だったらここでの仕事が終われば、国へ帰り、還俗して家庭を持てばいい」
もしくはここで女を作ればいい。
「いや、それはできない」
「……なぜ」
ユリウスは黙って、ディートハルトを見つめる。
「――その人は、他の男性に嫁ぐことがすでに決まっているからだ」
ディートハルトはしばし黙り込んだが、やがてふいと背を向けながらそっけなく答えた。
「そうか。なら諦めて他の女性を探すことだな」
「ディートハルト」
初めて、名前を呼ばれた。肩を掴まれ、存外強い力で振り向かされる。緑の瞳が射貫くように自分の目を見た。
「なんだ」
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「すまない。引き留めてしまって」
「いや……」
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