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ディートハルト
2、マルガレーテ以外*
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公爵家へ戻ったディートハルトは、正妻が産んだ息子と引き合わされた。彼は軟弱で、物覚えも悪かった。しかし性格はあの女の息子とは思えないほどできたもので、そんな彼を使用人含め、父ですら可愛がっている様子だった。
「ディートハルト。おまえはすごいなぁ」
嫉妬など見せず、ディートハルトのことも素直に彼は褒め称えた。だがそれは、今まで人と比べられることのない環境で、誰からも害されることなく育つことができたがゆえの余裕だった。
実際ディートハルトが屋敷にいることにみなが慣れ始め、成長していくにつれてめきめきと才能を開花させていくと、最初は疎ましく思っていた周囲の目が変わり始めた。何より父譲りの美貌が、圧倒的なカリスマ性を備えているように錯覚させ、正妻の息子よりも跡継ぎに相応しいのではなかいという思いを芽生えさせていった。
少しずつ正妻の息子はディートハルトに良くない感情を抱き始め、嫉妬や劣等感になって、やがて敵意へと変わった。気づけば母親そっくりのどうしようもない男になって、ディートハルトを攻撃しようとした。
だがディートハルトはもうあの時の非力な子どもではなかった。反撃できるほどの、正妻の息子を凌ぐほどの力を身につけていた。
弱い者は、抗う力を持たない者は、蹂躙されるか、死ぬしかない。
彼の最期は呆気なかった。ディートハルトが従順に躾けていた犬にちょっかいをかけて、腕を噛まれて、それが原因で亡くなってしまったのだから。
父は息子の死に思いのほかショックを受けたのか、ディートハルトを正式な跡継ぎにすると、領地で静かに暮らすことを決めた。
また独りになったディートハルトは、弟の死よりも飼い犬が処分されたことの方が辛かった。利用するならば、もっと上手くやらなければならない。せめてもの教訓として、そう胸に刻んだ。
成長していく過程で、ディートハルトは自分の容姿がひどく武器になることに気がついた。メイドに意味ありげな視線を投げかけられたかと思えば、押し倒され、勝手に昂りを慰められた経験に始まり、寄ってくる女には事欠かさなかった。
宮廷で多くの王侯貴族を手玉に取っていた夫人たちも、ディートハルトをお気に入りのコレクションの一つに加えようと手を伸ばしてきた。最初は主導権を握ってディートハルトを快楽に導いていた彼女たちも、やがてはディートハルトに堕ちていった。普段慎ましやかな表情をしている淑女の仮面を剥がし、雌の顔で狂ったように喘がせながらディートハルトの内心はひどく冷めていた。
目の前の女がマルガレーテであればいいのに、と何度も思った。
王都へ戻ってきたマルガレーテは国王の娘だと世間に発表され、その姿は白亜の宮殿に厳重に隠されてしまった。ローゼンベルク公爵となったディートハルトですら容易に近づけない、手の届かない存在となってしまったのだ。
どうすれば彼女に会えるか。会うだけでは意味がない。彼女のそばにずっといられるよう……結婚したい。
まずどうやったら彼女の近くへ行けるか。誰にも咎められることなく会うことができるか。王族を護衛する騎士になればいい。もともと黒の騎士団に早い時期から所属させられていた彼は、ローゼンベルクの名も大いに活用してすぐに出世した。だがそれでもマルガレーテの護衛騎士にはなれなかった。他の王女に気に入られ、そちらの護衛を担うこととなった。
どうも国王はディートハルトを……というより、年頃の男を近づけまいとマルガレーテの近くには女性騎士しかつかせないようにしていた。
ならば中から懐柔していくまでだと、ディートハルトはマルガレーテの部屋に出入りする夫人や女性騎士に近づき、時には身体の関係になって籠絡した。
宮廷に仕える人間のほとんどは薄汚い欲を持っている。恋人や夫がいようが自分に抱いてくれと迫る女性もいたが、それがマルガレーテを得るのに何も役立たない場合は、すぐに切り捨てて、相手にしなかった。ディートハルトの代わりは他にいくらでもいるのが宮廷の実状だ。
マルガレーテの周りにいる人間を陥落させていく一方で、結婚の許可を得るために国王を何とかしなければならないとも考えた。聖地奪還のための戦いを企てている王に、戦績で実力を示すだけでは認められない。もっと確かな恩を売る必要がある。
そこで思いついたのが、戦のための資金であった。
国王は議会を招集して諸侯たちに課税して集めようとしたが、それまでの浪費癖や専横的なやり方からなかなか賛成を得られないでいる。王を焚きつけるかたちで聖戦を言い出した聖職者たちも、いろいろ言い訳して金を出し渋っている有様だ。
そこに、ディートハルトは目をつけた。
誰かこの機会を狙っている人間に、他にも恩を売って上へ行こうとしている者――毛織物業を始め、金融業にも手を染めているメルツ男爵、イレーネの父親を利用することに決めた。
彼もまた貴族社会に溶け込み、国王の取り巻きの一人に加わりたいという野望を持っている。そのために自身の一人娘を、イレーネをディートハルトに差し出してきた。彼は聖戦が終わるまでの間を視野に、マルガレーテが手に入れば捨てるつもりで、イレーネの婚約者となった。
男爵に金を出させ、その見返りにディートハルトは彼を社交界へ呼んでやり、他の貴族たちとの繋がりを持たせてやった。
たとえいずれは解消するにしても、彼としては十分相手に利を与えてやっているつもりだった。だから男爵がさらに貪欲さを露わに、イレーネの処女を散らせ、責任を取らせようと――媚薬を食事に混入したことで激怒した。
(ついこの間まで一商人の平民にすぎなかった男が、よくもまぁ図々しく公爵家を出し抜こうと考えついたものだ)
そちらがそのつもりならば、今は騙された振りをして、後で手酷く振ってやろうと決めた。罪悪感など抱く必要はない。向こうだって悪党なのだから。目的を遂げるまで、娘のイレーネを性欲の捌け口にしてやる。父親がそうしろと命じているのだからディートハルトはそれに従ってやるだけだ。
(この娘も、父親と同じ考えのはずだ)
ディートハルトの下で必死に声を我慢しながら体をくねらせる女を、彼はじっと見下ろした。
イレーネ・メルツ。男爵の一人娘で、グレイの瞳にブルネットの髪と、あまりぱっとしない容姿をしていた。性格も大人しく、父親から紹介されても、終始俯くようにして最低限の言葉しか話したがらなかった。だからこそ、油断したともいえる。
異常な興奮と熱に襲われ、媚薬を盛られたとわかった時、ディートハルトはイレーネの怯える顔が、以前同じ類の薬を飲ませた未亡人の姿と重なった。彼女は夫に先立たれたばかりで、一時の慰めがほしいのだとディートハルトに迫った。
彼はこういうタイプは後々まで自分を手放そうとしないだろうと本能的に悟り、いつもやんわりと断って関係を持つことを避けていた。だがそんなディートハルトの態度に業を煮やし、未亡人は飲んでいた飲み物に薬を混ぜ、動けなくなった彼の股に跨って、何度も精を吐き出させた。
彼女以外にも、無理矢理身体の関係を持たせようと画策した女性はおり、幻覚を見せる類の薬を飲まされた時は、相手がマルガレーテに見えたことがあった。だがしょせんはまやかし。夢から覚めた時に知る現実は何度体験しても虚しく、馬鹿みたいな気分になる。
しかし何度かそういったことを経験させられれば、ディートハルトの方も次第に、ああ、こういう時は危ないなと危機を察するようになったので、そういうことはほぼなくなっていった。
だから今回久しぶりに同じ手口に引っかかり、自分への苛立ち、騙した男爵への憎悪、そして媚薬の効果と相まって、目の前の相手を無茶苦茶に犯してやりたくなった。自傷して耐える手段もあったが、震えて怯えるイレーネの姿に、ごめんなさいと涙を浮かべて謝る姿に、気づけば寝台へと押し倒していた。
イレーネは怯えて、暴れて抵抗することすらできなかった。すればもっと酷い目に遭うと思ったのだろう。だがその時のディートハルトはそういったのもすべて演技で、自分に抱かれたいがためだと思った。
怒りと無理矢理高められた興奮で理性を失い、服を引き裂くようにして取り払い、触れるたびにびくびくと震える彼女の身体を押さえつけ、無理矢理中をこじ開けていった。
その時の、喉元を晒し、声にならない悲鳴をあげて涙を流す姿が、やけに鮮明に記憶に残っている。揺さぶられるがまま、彼女はきつく目を瞑っていた。早くこの地獄が終わってほしいと耐えるかのように……。
本能に支配されていたディートハルトは奇妙な、今まで感じたことのない思いに囚われた。この女をもっと苦しめたい。一緒に地獄に堕としてやりたい。欲しいと望むならいくらでもくれてやる。
強烈な締めつけに呻きながらディートハルトは中へ出した。ずるりと引き抜いた陰茎はまだ収まりがつかないというように鎌首をもたげていたが、幾分冷静さを取り戻した彼はこれ以上自分が翻弄されることを嫌った。
だが夥しい量の白濁に混じって血が――彼女の純潔の証が混じっているのを見ると、また抗い難い衝動に駆られる。てっきり他の男に身を委ねていると思っていたからか。わからない。たぶんそうだろうと深く考えることを避けて、彼女に勘違いしないよう、はっきりと釘を刺して、屋敷を後にした。
「ディートハルト。おまえはすごいなぁ」
嫉妬など見せず、ディートハルトのことも素直に彼は褒め称えた。だがそれは、今まで人と比べられることのない環境で、誰からも害されることなく育つことができたがゆえの余裕だった。
実際ディートハルトが屋敷にいることにみなが慣れ始め、成長していくにつれてめきめきと才能を開花させていくと、最初は疎ましく思っていた周囲の目が変わり始めた。何より父譲りの美貌が、圧倒的なカリスマ性を備えているように錯覚させ、正妻の息子よりも跡継ぎに相応しいのではなかいという思いを芽生えさせていった。
少しずつ正妻の息子はディートハルトに良くない感情を抱き始め、嫉妬や劣等感になって、やがて敵意へと変わった。気づけば母親そっくりのどうしようもない男になって、ディートハルトを攻撃しようとした。
だがディートハルトはもうあの時の非力な子どもではなかった。反撃できるほどの、正妻の息子を凌ぐほどの力を身につけていた。
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彼の最期は呆気なかった。ディートハルトが従順に躾けていた犬にちょっかいをかけて、腕を噛まれて、それが原因で亡くなってしまったのだから。
父は息子の死に思いのほかショックを受けたのか、ディートハルトを正式な跡継ぎにすると、領地で静かに暮らすことを決めた。
また独りになったディートハルトは、弟の死よりも飼い犬が処分されたことの方が辛かった。利用するならば、もっと上手くやらなければならない。せめてもの教訓として、そう胸に刻んだ。
成長していく過程で、ディートハルトは自分の容姿がひどく武器になることに気がついた。メイドに意味ありげな視線を投げかけられたかと思えば、押し倒され、勝手に昂りを慰められた経験に始まり、寄ってくる女には事欠かさなかった。
宮廷で多くの王侯貴族を手玉に取っていた夫人たちも、ディートハルトをお気に入りのコレクションの一つに加えようと手を伸ばしてきた。最初は主導権を握ってディートハルトを快楽に導いていた彼女たちも、やがてはディートハルトに堕ちていった。普段慎ましやかな表情をしている淑女の仮面を剥がし、雌の顔で狂ったように喘がせながらディートハルトの内心はひどく冷めていた。
目の前の女がマルガレーテであればいいのに、と何度も思った。
王都へ戻ってきたマルガレーテは国王の娘だと世間に発表され、その姿は白亜の宮殿に厳重に隠されてしまった。ローゼンベルク公爵となったディートハルトですら容易に近づけない、手の届かない存在となってしまったのだ。
どうすれば彼女に会えるか。会うだけでは意味がない。彼女のそばにずっといられるよう……結婚したい。
まずどうやったら彼女の近くへ行けるか。誰にも咎められることなく会うことができるか。王族を護衛する騎士になればいい。もともと黒の騎士団に早い時期から所属させられていた彼は、ローゼンベルクの名も大いに活用してすぐに出世した。だがそれでもマルガレーテの護衛騎士にはなれなかった。他の王女に気に入られ、そちらの護衛を担うこととなった。
どうも国王はディートハルトを……というより、年頃の男を近づけまいとマルガレーテの近くには女性騎士しかつかせないようにしていた。
ならば中から懐柔していくまでだと、ディートハルトはマルガレーテの部屋に出入りする夫人や女性騎士に近づき、時には身体の関係になって籠絡した。
宮廷に仕える人間のほとんどは薄汚い欲を持っている。恋人や夫がいようが自分に抱いてくれと迫る女性もいたが、それがマルガレーテを得るのに何も役立たない場合は、すぐに切り捨てて、相手にしなかった。ディートハルトの代わりは他にいくらでもいるのが宮廷の実状だ。
マルガレーテの周りにいる人間を陥落させていく一方で、結婚の許可を得るために国王を何とかしなければならないとも考えた。聖地奪還のための戦いを企てている王に、戦績で実力を示すだけでは認められない。もっと確かな恩を売る必要がある。
そこで思いついたのが、戦のための資金であった。
国王は議会を招集して諸侯たちに課税して集めようとしたが、それまでの浪費癖や専横的なやり方からなかなか賛成を得られないでいる。王を焚きつけるかたちで聖戦を言い出した聖職者たちも、いろいろ言い訳して金を出し渋っている有様だ。
そこに、ディートハルトは目をつけた。
誰かこの機会を狙っている人間に、他にも恩を売って上へ行こうとしている者――毛織物業を始め、金融業にも手を染めているメルツ男爵、イレーネの父親を利用することに決めた。
彼もまた貴族社会に溶け込み、国王の取り巻きの一人に加わりたいという野望を持っている。そのために自身の一人娘を、イレーネをディートハルトに差し出してきた。彼は聖戦が終わるまでの間を視野に、マルガレーテが手に入れば捨てるつもりで、イレーネの婚約者となった。
男爵に金を出させ、その見返りにディートハルトは彼を社交界へ呼んでやり、他の貴族たちとの繋がりを持たせてやった。
たとえいずれは解消するにしても、彼としては十分相手に利を与えてやっているつもりだった。だから男爵がさらに貪欲さを露わに、イレーネの処女を散らせ、責任を取らせようと――媚薬を食事に混入したことで激怒した。
(ついこの間まで一商人の平民にすぎなかった男が、よくもまぁ図々しく公爵家を出し抜こうと考えついたものだ)
そちらがそのつもりならば、今は騙された振りをして、後で手酷く振ってやろうと決めた。罪悪感など抱く必要はない。向こうだって悪党なのだから。目的を遂げるまで、娘のイレーネを性欲の捌け口にしてやる。父親がそうしろと命じているのだからディートハルトはそれに従ってやるだけだ。
(この娘も、父親と同じ考えのはずだ)
ディートハルトの下で必死に声を我慢しながら体をくねらせる女を、彼はじっと見下ろした。
イレーネ・メルツ。男爵の一人娘で、グレイの瞳にブルネットの髪と、あまりぱっとしない容姿をしていた。性格も大人しく、父親から紹介されても、終始俯くようにして最低限の言葉しか話したがらなかった。だからこそ、油断したともいえる。
異常な興奮と熱に襲われ、媚薬を盛られたとわかった時、ディートハルトはイレーネの怯える顔が、以前同じ類の薬を飲ませた未亡人の姿と重なった。彼女は夫に先立たれたばかりで、一時の慰めがほしいのだとディートハルトに迫った。
彼はこういうタイプは後々まで自分を手放そうとしないだろうと本能的に悟り、いつもやんわりと断って関係を持つことを避けていた。だがそんなディートハルトの態度に業を煮やし、未亡人は飲んでいた飲み物に薬を混ぜ、動けなくなった彼の股に跨って、何度も精を吐き出させた。
彼女以外にも、無理矢理身体の関係を持たせようと画策した女性はおり、幻覚を見せる類の薬を飲まされた時は、相手がマルガレーテに見えたことがあった。だがしょせんはまやかし。夢から覚めた時に知る現実は何度体験しても虚しく、馬鹿みたいな気分になる。
しかし何度かそういったことを経験させられれば、ディートハルトの方も次第に、ああ、こういう時は危ないなと危機を察するようになったので、そういうことはほぼなくなっていった。
だから今回久しぶりに同じ手口に引っかかり、自分への苛立ち、騙した男爵への憎悪、そして媚薬の効果と相まって、目の前の相手を無茶苦茶に犯してやりたくなった。自傷して耐える手段もあったが、震えて怯えるイレーネの姿に、ごめんなさいと涙を浮かべて謝る姿に、気づけば寝台へと押し倒していた。
イレーネは怯えて、暴れて抵抗することすらできなかった。すればもっと酷い目に遭うと思ったのだろう。だがその時のディートハルトはそういったのもすべて演技で、自分に抱かれたいがためだと思った。
怒りと無理矢理高められた興奮で理性を失い、服を引き裂くようにして取り払い、触れるたびにびくびくと震える彼女の身体を押さえつけ、無理矢理中をこじ開けていった。
その時の、喉元を晒し、声にならない悲鳴をあげて涙を流す姿が、やけに鮮明に記憶に残っている。揺さぶられるがまま、彼女はきつく目を瞑っていた。早くこの地獄が終わってほしいと耐えるかのように……。
本能に支配されていたディートハルトは奇妙な、今まで感じたことのない思いに囚われた。この女をもっと苦しめたい。一緒に地獄に堕としてやりたい。欲しいと望むならいくらでもくれてやる。
強烈な締めつけに呻きながらディートハルトは中へ出した。ずるりと引き抜いた陰茎はまだ収まりがつかないというように鎌首をもたげていたが、幾分冷静さを取り戻した彼はこれ以上自分が翻弄されることを嫌った。
だが夥しい量の白濁に混じって血が――彼女の純潔の証が混じっているのを見ると、また抗い難い衝動に駆られる。てっきり他の男に身を委ねていると思っていたからか。わからない。たぶんそうだろうと深く考えることを避けて、彼女に勘違いしないよう、はっきりと釘を刺して、屋敷を後にした。
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