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イレーネはぎゅっと手を握りしめ、ディートハルトを睨むように見返す。
「どうしてそんなふうに決めつけるのですか」
「どうして? 事実だからだ。現にきみはつい先ほど、男に迫られていた。そして一人で撃退できず、俺が仲裁に入らなければ無理矢理手籠めにされていた……か、あるいは周囲に誤解を与えるかたちできみを手に入れようとしただろう」
きみは抵抗できていたか?
ディートハルトの言葉に、イレーネは反論できず黙り込む。
「今日は諦めて逃げ帰ったが、またしばらくしたら言い寄ってくる可能性もある。その場合は以前よりも用意周到に、姑息な手段できみを捕まえようとするだろう。その男以外にも、きみを手に入れようとする者は出てくるはずだ。きみの家にどれくらいの財産が残されているかは知らないが、少なくともこの家は手に入る。若くて、子どもも産める女も」
「もう、やめてください……」
どうしてそんな残酷な事実を突きつけてくるのだ。どうして誰も彼も自分を放っておいてくれない。どうして……
「これは避けられない未来だ。きみが対処しなければならない問題だ」
「わたしは……再婚など、したくありません。一人で、立派にあの子を育ててみせます」
そう約束したのだ。ハインツと。だから……
「どうやって稼いでいくつもりだ」
「……宿の食堂で、働いているんです。内職もしています」
「それで食べていけるのか」
切り詰めて何とかやっていけているのが実状だ。危うい時もある。でもイレーネは正直に告げるのが嫌で、できますと断言した。
だがディートハルトはそうしたイレーネの強がりもとっくに見抜いているように目を細めた。
「そうか。だがあの店は酔っ払いや乱暴な男も出入りしている店だろう? そういうところは、夜は酒を出して、そのまま客の相手もさせる店に変わるんじゃないか」
「それは……」
ディートハルトの言う通りだった。夜は居酒屋として、昼間よりもずっと男性客が多くなり、接客する女性も華やかに着飾って、酒の相手をする。二階には個室も用意されている。成人した男女が二人きりですることは、決まっていた。
「でも昼間は健全な食堂です。わたしはその人たちとは違います」
一緒にしないでほしい、とイレーネは自然と彼女たちの職業を蔑むような口調で言ってしまったことに気づき、眉根を寄せた。彼女たちとて、様々な事情があって働いているというのに……。
「そういうのは、まず昼に健全な仕事をさせて、自然と夜の仕事もやらせるようになっていくんだ。きみだって、いつかは誘われるんじゃないか」
『あんたはまだ若いんだから、一人の人ときちんと再婚して、養ってもらいな。……そうしないと、いろんな男を相手にして稼ぐしかなくなるよ』
あれも嫌、これも嫌、ではいつか行き詰まる。イレーネも本当は薄々わかり始めていた。現実はそんなに甘くない。ハインツだけを想って生き続けることは、できないのだ。
(でも……)
「あなたと再婚する道を選ぶくらいなら……他の方を選びます」
彼と一緒になるくらいならば、一夜だけの知らない相手と寝た方がましに思えた。
「本気か」
「……ええ、本気です」
とにかくディートハルトだけは嫌だった。だめだと思った。
「きみの父親が、きみに会いたがっている」
イレーネの頑なな態度にどう思ったのか、ディートハルトはそう口にした。しかし彼女は逆に冷めた心地になった。
「父がわたしに会いたがっているなんて、嘘ですわ」
会いに行ったとしても、怒鳴られて、今度こそ一生部屋に閉じ込められるだけだ。勝手に駆け落ちしたことも、絶対に許していない。
会いたいなんて、信じられなかった。
「――正確に述べるならば、きみの母親が、会いたいと願っているそうだ」
しかし今度はイレーネも、知らぬ振りをできなかった。
「お母様が……?」
「そうだ。もうだいぶ前から病気を患っていて、来年まで生きるのは難しいだろうと医者からも告げられている」
「そんな……」
夫を病で喪ったイレーネは、母も同じ状況に置かれていることになぜか運命の奇妙さと残酷さを感じた。
「きみの父親はなんとか妻を助けたいとあちこちから名医と呼ばれる医者を呼んで診せさせていたそうだが、打つ手がないそうで、ひどく憔悴している。……ずいぶんと、変わられたよ」
(お父様が……)
父はいつも傲慢で、自信に満ち溢れていた。決して他人を心配することなどなかった。――母以外。父にとって、母は自分のものであり、死んでしまえばまるで半身を失った苦しみに苛まれるほどの存在となっていた。
「夫人はきみに会いたいと零したそうだ。治す方法もない男爵は、せめて妻の最期の願いだけは叶えてやりたいときみの行方を必死で探し始めた」
「……結局、父は母のためにわたしを探しているのですね」
「男爵も、きみが見つかればいいと思っているはずだ。なにせ最愛の妻を失えば、自分は独りになる。血の繋がった血縁者はきみしかいない。泣いて喜ぶはずだ」
そうだろうか。イレーネには上手く想像できなかった。むしろ今までよくも儂を裏切ったなと頬を叩かれそうだ。
「とにかく、夫人は一目娘に会いたいと願っている。死ぬ間際の願いだ。どうする」
「……」
イレーネも一児の母親になった。大切な人をそばで看取った経験もある。家族も、貴族という身分も捨てた身で今さら戻る資格があるのかと思う一方で――だからこそ、両親の最後の願いを拒めば、一生後悔する気がした。
(どうすればいいの……)
「戻るならば、俺がきみを連れて帰ろう」
イレーネには故郷へ戻るまでの旅費は当然なかった。ディートハルトを頼るしかない。彼の申し出を受けるしかない。
(でも――)
「エミールにも、将来の選択肢が増えるだろう」
迷うイレーネに、ディートハルトは切り札を出した。
「このまま、この田舎であの子を育てても、将来なれる職業は限られている。父親がいなければ、勉強だっていつまで続けられるかわからない」
『お母さん。司教様がね、ぼくは頭がいいから、もっと大きな学校で勉強すればもっと賢くなれるって言ったの』
優しいあの子は、母親が困窮していると知れば、勉学より、その日稼ぐことを選ぶようになるだろう。
「仮にきみが誰かと再婚しても、その男の稼ぎがエミールのために使われるとは限らない。亡くなった男の子どもを愛するのは難しい。生まれた自分の子どもの方が可愛いと思うのが普通の反応だ」
「……あなたは、違うの?」
「きみとエミールが望むなら、それ相応の教育を与えることができる」
ディートハルトは表情を変えずに答えた。
「俺でなくとも、男爵ならば血の繋がった自分の孫をより可愛がるだろう。ああ、ハインツの両親も同じかもしれない。彼の弟夫妻には、まだ子どもがいないそうだから、後継者にさせてくれる可能性もある」
少なくともここにいるよりは――エミールの存在を必要としてくれる環境へ行った方が、あの子のためにもなるとディートハルトは言っている。
『お母さん。ぼく、お母さんのためにいっぱい勉強する。そうしたら、お父さんもきっと喜ぶと思うんだ』
(エミール……)
『イレーネ。エミールのこと、たのむよ……』
(ハインツ様……)
「イレーネ」
いつしかすぐそばに、ディートハルトがいた。自分を見下ろしている。もう、彼を拒めなかった。逃げることはできない。許されない。
「きみと、もう一度やり直したい」
男の声に、誠実さは微塵も感じられなかった。だからこそ怖くて、けれど顔を上げて、震える声でイレーネは伝えた。
「あの子には、まだ再婚することは伝えないでください……」
逃げ出したいと叫びながらも自分を真っ直ぐと見つめる瞳に、ディートハルトが手を伸ばす。
頬に触れた指先が、まるで涙を拭うように目元から口の端へと下りていく。イレーネ、と彼が呟くように名前を呼んだ。
「きみの望み通りにしよう」
「どうしてそんなふうに決めつけるのですか」
「どうして? 事実だからだ。現にきみはつい先ほど、男に迫られていた。そして一人で撃退できず、俺が仲裁に入らなければ無理矢理手籠めにされていた……か、あるいは周囲に誤解を与えるかたちできみを手に入れようとしただろう」
きみは抵抗できていたか?
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「もう、やめてください……」
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「これは避けられない未来だ。きみが対処しなければならない問題だ」
「わたしは……再婚など、したくありません。一人で、立派にあの子を育ててみせます」
そう約束したのだ。ハインツと。だから……
「どうやって稼いでいくつもりだ」
「……宿の食堂で、働いているんです。内職もしています」
「それで食べていけるのか」
切り詰めて何とかやっていけているのが実状だ。危うい時もある。でもイレーネは正直に告げるのが嫌で、できますと断言した。
だがディートハルトはそうしたイレーネの強がりもとっくに見抜いているように目を細めた。
「そうか。だがあの店は酔っ払いや乱暴な男も出入りしている店だろう? そういうところは、夜は酒を出して、そのまま客の相手もさせる店に変わるんじゃないか」
「それは……」
ディートハルトの言う通りだった。夜は居酒屋として、昼間よりもずっと男性客が多くなり、接客する女性も華やかに着飾って、酒の相手をする。二階には個室も用意されている。成人した男女が二人きりですることは、決まっていた。
「でも昼間は健全な食堂です。わたしはその人たちとは違います」
一緒にしないでほしい、とイレーネは自然と彼女たちの職業を蔑むような口調で言ってしまったことに気づき、眉根を寄せた。彼女たちとて、様々な事情があって働いているというのに……。
「そういうのは、まず昼に健全な仕事をさせて、自然と夜の仕事もやらせるようになっていくんだ。きみだって、いつかは誘われるんじゃないか」
『あんたはまだ若いんだから、一人の人ときちんと再婚して、養ってもらいな。……そうしないと、いろんな男を相手にして稼ぐしかなくなるよ』
あれも嫌、これも嫌、ではいつか行き詰まる。イレーネも本当は薄々わかり始めていた。現実はそんなに甘くない。ハインツだけを想って生き続けることは、できないのだ。
(でも……)
「あなたと再婚する道を選ぶくらいなら……他の方を選びます」
彼と一緒になるくらいならば、一夜だけの知らない相手と寝た方がましに思えた。
「本気か」
「……ええ、本気です」
とにかくディートハルトだけは嫌だった。だめだと思った。
「きみの父親が、きみに会いたがっている」
イレーネの頑なな態度にどう思ったのか、ディートハルトはそう口にした。しかし彼女は逆に冷めた心地になった。
「父がわたしに会いたがっているなんて、嘘ですわ」
会いに行ったとしても、怒鳴られて、今度こそ一生部屋に閉じ込められるだけだ。勝手に駆け落ちしたことも、絶対に許していない。
会いたいなんて、信じられなかった。
「――正確に述べるならば、きみの母親が、会いたいと願っているそうだ」
しかし今度はイレーネも、知らぬ振りをできなかった。
「お母様が……?」
「そうだ。もうだいぶ前から病気を患っていて、来年まで生きるのは難しいだろうと医者からも告げられている」
「そんな……」
夫を病で喪ったイレーネは、母も同じ状況に置かれていることになぜか運命の奇妙さと残酷さを感じた。
「きみの父親はなんとか妻を助けたいとあちこちから名医と呼ばれる医者を呼んで診せさせていたそうだが、打つ手がないそうで、ひどく憔悴している。……ずいぶんと、変わられたよ」
(お父様が……)
父はいつも傲慢で、自信に満ち溢れていた。決して他人を心配することなどなかった。――母以外。父にとって、母は自分のものであり、死んでしまえばまるで半身を失った苦しみに苛まれるほどの存在となっていた。
「夫人はきみに会いたいと零したそうだ。治す方法もない男爵は、せめて妻の最期の願いだけは叶えてやりたいときみの行方を必死で探し始めた」
「……結局、父は母のためにわたしを探しているのですね」
「男爵も、きみが見つかればいいと思っているはずだ。なにせ最愛の妻を失えば、自分は独りになる。血の繋がった血縁者はきみしかいない。泣いて喜ぶはずだ」
そうだろうか。イレーネには上手く想像できなかった。むしろ今までよくも儂を裏切ったなと頬を叩かれそうだ。
「とにかく、夫人は一目娘に会いたいと願っている。死ぬ間際の願いだ。どうする」
「……」
イレーネも一児の母親になった。大切な人をそばで看取った経験もある。家族も、貴族という身分も捨てた身で今さら戻る資格があるのかと思う一方で――だからこそ、両親の最後の願いを拒めば、一生後悔する気がした。
(どうすればいいの……)
「戻るならば、俺がきみを連れて帰ろう」
イレーネには故郷へ戻るまでの旅費は当然なかった。ディートハルトを頼るしかない。彼の申し出を受けるしかない。
(でも――)
「エミールにも、将来の選択肢が増えるだろう」
迷うイレーネに、ディートハルトは切り札を出した。
「このまま、この田舎であの子を育てても、将来なれる職業は限られている。父親がいなければ、勉強だっていつまで続けられるかわからない」
『お母さん。司教様がね、ぼくは頭がいいから、もっと大きな学校で勉強すればもっと賢くなれるって言ったの』
優しいあの子は、母親が困窮していると知れば、勉学より、その日稼ぐことを選ぶようになるだろう。
「仮にきみが誰かと再婚しても、その男の稼ぎがエミールのために使われるとは限らない。亡くなった男の子どもを愛するのは難しい。生まれた自分の子どもの方が可愛いと思うのが普通の反応だ」
「……あなたは、違うの?」
「きみとエミールが望むなら、それ相応の教育を与えることができる」
ディートハルトは表情を変えずに答えた。
「俺でなくとも、男爵ならば血の繋がった自分の孫をより可愛がるだろう。ああ、ハインツの両親も同じかもしれない。彼の弟夫妻には、まだ子どもがいないそうだから、後継者にさせてくれる可能性もある」
少なくともここにいるよりは――エミールの存在を必要としてくれる環境へ行った方が、あの子のためにもなるとディートハルトは言っている。
『お母さん。ぼく、お母さんのためにいっぱい勉強する。そうしたら、お父さんもきっと喜ぶと思うんだ』
(エミール……)
『イレーネ。エミールのこと、たのむよ……』
(ハインツ様……)
「イレーネ」
いつしかすぐそばに、ディートハルトがいた。自分を見下ろしている。もう、彼を拒めなかった。逃げることはできない。許されない。
「きみと、もう一度やり直したい」
男の声に、誠実さは微塵も感じられなかった。だからこそ怖くて、けれど顔を上げて、震える声でイレーネは伝えた。
「あの子には、まだ再婚することは伝えないでください……」
逃げ出したいと叫びながらも自分を真っ直ぐと見つめる瞳に、ディートハルトが手を伸ばす。
頬に触れた指先が、まるで涙を拭うように目元から口の端へと下りていく。イレーネ、と彼が呟くように名前を呼んだ。
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