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26、素顔
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ハインツは相変わらずイレーネの羞恥心を煽り、自尊心を傷つけるためにいろいろ言わせようとしたが、それは行為以外でも見受けられるようになった。
「なぁ。なんか喋れよ」
月のものが始まって、しばらくはできないと伝えて追い返そうとしたが、ハインツは構わないと言っていつも通り部屋へ押しかけ、代わりに自分の性器を舐めてほしいなどというとんでもないことを要求してきた。
イレーネは最初意味がわからず困惑していたが、説明されると無理だと蒼白な顔で訴えた。そんなこと、今までディートハルトにもしたことがなかったからだ。だがそれは結局ハインツを喜ばせただけであり、イレーネはハインツの股の間に座らされ、戸惑い、泣きそうな顔で、彼のものを口で慰める羽目となった。
ハインツはとても興奮した様子で、一度では終わらせず、何度か続けてイレーネの口の中で射精して、イレーネに自分のものを触らせて扱いたりもさせた。
結局繋がりこそしなかったが、疲労は変わらず、むしろ慣れないことで精神的にいつもより疲れてしまい、イレーネはハインツに口の周りや手を拭かれている間、じっと黙り込んでいた。
出すものはもう出したのだろうから早く帰ってほしいと思ったが、彼はイレーネを抱きしめ、そのまま寝台にごろりと転がって、イレーネの髪に顔を埋めながら、何か話すよう催促したのだった。
「話すことなんて、ありません」
「怒ってるのか?」
「……怒っていません」
怒ってるだろ、とハインツは笑いを含ませてそう言った。イレーネはムッとして、黙った。
「ほら、やっぱり怒ってる」
「怒っていません。……疲れただけです」
彼は顔を上げ、向かい合うイレーネの目元をそっと撫でた。
「じゃあ、いつもみたいなやつがよかった?」
わからない。答えたくないとイレーネは黙って首を振った。そして逃げるように目を閉じた。
「なぁ、悪かったって。あいつもやっていないことを俺はやれるんだって思ったら、すげえ興奮したの。それにイレーネ、すげえエロかったし」
「そういうこと言うの、やめてください……!」
耐え切れず目を開けて反論すれば、ハインツはしてやったりというように笑ってみせた。イレーネはしまったと思うが、もう遅かった。
「そういうことって?」
「それは、だから……えろいとか、そういう言葉です……」
「なんで? いいじゃん。本当のことだし、俺にとって最上級の褒め言葉よ」
イレーネは奇怪な生物を見るような目でハインツを見た。
「なんだよその目は。はいはい、どうせ俺は頭悪いからね。宮廷に仕える騎士様たちのような、薄ら寒いお世辞は言えませんよーだ」
「頭の良し悪しは関係ありません。あなたの言葉は、常識の範疇を越えているんです」
「むずかしー……じゃあさ、なんて言えば嬉しい?」
(なんて言えばって……)
「教えろよ、イレーネ」
頬をくすぐりながら、ハインツはほんのりと垂れ目がちの目を細め、囁くように言った。
「……わかりません」
ハインツはじっと見つめ、やがて「はぁ……」と落胆したようにため息をついた。
「なんだよ、それ。つまんね」
そう呟いた彼は抱きしめるのをやめて仰向けになった。何だかとても悪い気がしたが、よく考えればなんで自分が申し訳なさを感じなければならないのだと思い直した。
「どうせわたしはつまらない人間です」
お、というようにハインツがこちらを見た。肘をついて、またイレーネ方へ身体を向けたので、彼女は警戒も露わに彼を見た。
「そんな拗ねんなよ」
「拗ねていません」
「拗ねてるだろ」
ハインツはしつこい。イレーネは黙って否定した。
「だってさー、絶対何かあるだろ。恋人に言ってほしいこと」
彼のことを恋人だなんて思えなかった。婚約者であることすら、まだ受けとめきれていないというのに……。
(それに……)
「言葉よりも、行動で示してほしいです……」
小さな声で漏らしたイレーネの本音に、ハインツは目を丸くする。
「それってもっと睦み合いたいってこと?」
「違います!」
なぜすぐそっちの方向に結びつけるのだ。
「そうじゃなくて……薄っぺらい愛の言葉を数え切れないほど囁かれるより、誠実な振る舞いをしてくれた方がいいってことです」
「誠実な振る舞いって、具体的にどういうことよ」
「相手の気持ちを考えて、嫌なことや傷つけることはしない。そういう、当たり前のことです」
「じゃあ婚約者がいるくせに他の女を見境なく抱いたり、愛を囁くのもしちゃいけねえってことだな?」
まるで誰かを彷彿とさせるようにハインツは言った。イレーネはそうですと目を伏せながら答えた。
「でもさ、そういうの難しいよー」
「……せめて見えないところで、やってほしいんです」
それが難しいのかもしれないけれど……。
「ふーん……じゃあさ、俺にもそうしてほしい?」
婚約者であるならば当然そうであるべきなのに、ハインツはわざわざ確認してくる。
「……他の女性とやる時には、きちんと避妊してください」
ハインツは自分を種馬だと自称しておきながらも、他の女の所へも通っているようだった。イレーネは別にそれ自体については何も思わなかった。もともと自分もすでにディートハルトに抱かれていて清い身ではなかった。それにハインツの性格からしても、イレーネに義理立てするとは思えず、女遊びをしていてもさほど驚きはなかった。
「避妊ねぇ……いちおう外にはだしてるし、大丈夫だろ」
「薬とか、飲ませていらっしゃるんですか?」
「薬?」
避妊薬とか、とイレーネが言えばハインツは面食らった顔をした。イレーネがそんなことを知っていることに――そんな薬があると知っていることに驚いているようだった。
「おまえ、そういうのどこで知ったの?」
イレーネは知らなかったが、普通避妊薬を使うのは娼婦など、性を職業とした女性に限られた。本来イレーネのような、裕福な良家の娘は子を産むことを前提に結婚するので、避妊などとは無縁である。むしろ子を産まず、ただ快楽に耽るためだけの行為など、悪に等しかった。
そもそも避妊薬自体、高価な薬で入手するのが難しい代物だったのだ。
しかしイレーネは、ディートハルトからあっさりと避妊薬を渡され、行為の度に飲まされ続けてきた。だからそれが本来ならあり得ないということも、今目の前のハインツほどの衝撃はなかったし、あったとしてもいつしか薄れてしまっていた。彼女自身が、ディートハルトの子を孕みたくなかったというのもある。
「なぁ、どこで知ったんだ?」
「どこって……」
どうしてかハインツは起き上がって、いつになく真面目な、それでいてどこか不安を滲ませた目でイレーネに問いかけてくる。彼女は起き上がり、「どこだっていいでしょう」と背を向けて答えた。
(聞かなくても、わかるでしょう……)
そういうことをしてきた相手は、一人しかいなかったのだから。察しの悪いハインツにイレーネは苛立った。
「とにかく、薬はきちんと飲ませているんですか」
「とにかく、って……あー……たぶん、飲んでいる」
何とも頼りない返事だった。イレーネはため息をつくと、寝台のすぐそばの引き出しを開けて、小さな瓶を取り出してハインツに渡した。受け取った彼は「なに、これ」と聞いてくる。
「避妊薬です」
「いや、そうじゃなくて。なんでアンタがこんなの持ってるの」
けっこうな値段で、手に入るのも苦労したでしょ、と言われる。彼の言う通りだが、イレーネには可能だった。
「なに、まさかディートハルトに渡されたの?」
「いいえ……彼は父にばれないよう、その場でわたしに飲ませていましたから」
痕跡は残らないよう努めていた。
「それもどうなんだよ……じゃあ、これは?」
「わたしが、とある方に頼んで用意してもらったんです」
出征の前夜、ディートハルトはイレーネを何度も抱いた。その次の日に彼は何も飲ませず、出立した。困った末、イレーネはグリゼルダを頼ったのだった。彼女は余計なことは詮索せず、素直にイレーネの望みのものを用意してくれた。ハインツに渡したのは、その時の残りだ。
「父やメイドに見つかってしまうと、きっといろいろ面倒なことになってしまうと思うので、あなたが持っていてくれると助かります」
「いや、俺が持っていても……」
ハインツ様、とイレーネは初めて婚約者の名前をきちんと呼んだ気がする。彼もまた、驚いたように目を瞬いた。
「わたしの父や、あなたのご両親は、たぶんあなたが余所で子どもを作ることを快く思わないでしょう。将来余計な火種にならないよう、手を打つと思います」
子どもだけではなく、母親を切り捨てることも、彼らはきっと躊躇わない。そういうところは、ディートハルトと同じなのだ。
「だから相手の女性のことを思うなら、きちんと避妊してほしいんです」
お願いします、とイレーネが頼めば、ハインツはしばし薄く口を開いて呆気にとられた様子でイレーネを見ていたが、やがてゆっくりと握らされた瓶に目を落とし、ぽつりと言った。
「あいつも、そういう考えでおまえに薬を飲ませていたわけ?」
「……わたしも、飲むべきだと思ったんです」
のろのろと顔を上げたハインツに、イレーネは寂しげに微笑んだ。実際そうして正解だったでしょう? というように。
ハインツはもう一度薬に目をやって、あとはもう何も言わなかった。
「なぁ。なんか喋れよ」
月のものが始まって、しばらくはできないと伝えて追い返そうとしたが、ハインツは構わないと言っていつも通り部屋へ押しかけ、代わりに自分の性器を舐めてほしいなどというとんでもないことを要求してきた。
イレーネは最初意味がわからず困惑していたが、説明されると無理だと蒼白な顔で訴えた。そんなこと、今までディートハルトにもしたことがなかったからだ。だがそれは結局ハインツを喜ばせただけであり、イレーネはハインツの股の間に座らされ、戸惑い、泣きそうな顔で、彼のものを口で慰める羽目となった。
ハインツはとても興奮した様子で、一度では終わらせず、何度か続けてイレーネの口の中で射精して、イレーネに自分のものを触らせて扱いたりもさせた。
結局繋がりこそしなかったが、疲労は変わらず、むしろ慣れないことで精神的にいつもより疲れてしまい、イレーネはハインツに口の周りや手を拭かれている間、じっと黙り込んでいた。
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「話すことなんて、ありません」
「怒ってるのか?」
「……怒っていません」
怒ってるだろ、とハインツは笑いを含ませてそう言った。イレーネはムッとして、黙った。
「ほら、やっぱり怒ってる」
「怒っていません。……疲れただけです」
彼は顔を上げ、向かい合うイレーネの目元をそっと撫でた。
「じゃあ、いつもみたいなやつがよかった?」
わからない。答えたくないとイレーネは黙って首を振った。そして逃げるように目を閉じた。
「なぁ、悪かったって。あいつもやっていないことを俺はやれるんだって思ったら、すげえ興奮したの。それにイレーネ、すげえエロかったし」
「そういうこと言うの、やめてください……!」
耐え切れず目を開けて反論すれば、ハインツはしてやったりというように笑ってみせた。イレーネはしまったと思うが、もう遅かった。
「そういうことって?」
「それは、だから……えろいとか、そういう言葉です……」
「なんで? いいじゃん。本当のことだし、俺にとって最上級の褒め言葉よ」
イレーネは奇怪な生物を見るような目でハインツを見た。
「なんだよその目は。はいはい、どうせ俺は頭悪いからね。宮廷に仕える騎士様たちのような、薄ら寒いお世辞は言えませんよーだ」
「頭の良し悪しは関係ありません。あなたの言葉は、常識の範疇を越えているんです」
「むずかしー……じゃあさ、なんて言えば嬉しい?」
(なんて言えばって……)
「教えろよ、イレーネ」
頬をくすぐりながら、ハインツはほんのりと垂れ目がちの目を細め、囁くように言った。
「……わかりません」
ハインツはじっと見つめ、やがて「はぁ……」と落胆したようにため息をついた。
「なんだよ、それ。つまんね」
そう呟いた彼は抱きしめるのをやめて仰向けになった。何だかとても悪い気がしたが、よく考えればなんで自分が申し訳なさを感じなければならないのだと思い直した。
「どうせわたしはつまらない人間です」
お、というようにハインツがこちらを見た。肘をついて、またイレーネ方へ身体を向けたので、彼女は警戒も露わに彼を見た。
「そんな拗ねんなよ」
「拗ねていません」
「拗ねてるだろ」
ハインツはしつこい。イレーネは黙って否定した。
「だってさー、絶対何かあるだろ。恋人に言ってほしいこと」
彼のことを恋人だなんて思えなかった。婚約者であることすら、まだ受けとめきれていないというのに……。
(それに……)
「言葉よりも、行動で示してほしいです……」
小さな声で漏らしたイレーネの本音に、ハインツは目を丸くする。
「それってもっと睦み合いたいってこと?」
「違います!」
なぜすぐそっちの方向に結びつけるのだ。
「そうじゃなくて……薄っぺらい愛の言葉を数え切れないほど囁かれるより、誠実な振る舞いをしてくれた方がいいってことです」
「誠実な振る舞いって、具体的にどういうことよ」
「相手の気持ちを考えて、嫌なことや傷つけることはしない。そういう、当たり前のことです」
「じゃあ婚約者がいるくせに他の女を見境なく抱いたり、愛を囁くのもしちゃいけねえってことだな?」
まるで誰かを彷彿とさせるようにハインツは言った。イレーネはそうですと目を伏せながら答えた。
「でもさ、そういうの難しいよー」
「……せめて見えないところで、やってほしいんです」
それが難しいのかもしれないけれど……。
「ふーん……じゃあさ、俺にもそうしてほしい?」
婚約者であるならば当然そうであるべきなのに、ハインツはわざわざ確認してくる。
「……他の女性とやる時には、きちんと避妊してください」
ハインツは自分を種馬だと自称しておきながらも、他の女の所へも通っているようだった。イレーネは別にそれ自体については何も思わなかった。もともと自分もすでにディートハルトに抱かれていて清い身ではなかった。それにハインツの性格からしても、イレーネに義理立てするとは思えず、女遊びをしていてもさほど驚きはなかった。
「避妊ねぇ……いちおう外にはだしてるし、大丈夫だろ」
「薬とか、飲ませていらっしゃるんですか?」
「薬?」
避妊薬とか、とイレーネが言えばハインツは面食らった顔をした。イレーネがそんなことを知っていることに――そんな薬があると知っていることに驚いているようだった。
「おまえ、そういうのどこで知ったの?」
イレーネは知らなかったが、普通避妊薬を使うのは娼婦など、性を職業とした女性に限られた。本来イレーネのような、裕福な良家の娘は子を産むことを前提に結婚するので、避妊などとは無縁である。むしろ子を産まず、ただ快楽に耽るためだけの行為など、悪に等しかった。
そもそも避妊薬自体、高価な薬で入手するのが難しい代物だったのだ。
しかしイレーネは、ディートハルトからあっさりと避妊薬を渡され、行為の度に飲まされ続けてきた。だからそれが本来ならあり得ないということも、今目の前のハインツほどの衝撃はなかったし、あったとしてもいつしか薄れてしまっていた。彼女自身が、ディートハルトの子を孕みたくなかったというのもある。
「なぁ、どこで知ったんだ?」
「どこって……」
どうしてかハインツは起き上がって、いつになく真面目な、それでいてどこか不安を滲ませた目でイレーネに問いかけてくる。彼女は起き上がり、「どこだっていいでしょう」と背を向けて答えた。
(聞かなくても、わかるでしょう……)
そういうことをしてきた相手は、一人しかいなかったのだから。察しの悪いハインツにイレーネは苛立った。
「とにかく、薬はきちんと飲ませているんですか」
「とにかく、って……あー……たぶん、飲んでいる」
何とも頼りない返事だった。イレーネはため息をつくと、寝台のすぐそばの引き出しを開けて、小さな瓶を取り出してハインツに渡した。受け取った彼は「なに、これ」と聞いてくる。
「避妊薬です」
「いや、そうじゃなくて。なんでアンタがこんなの持ってるの」
けっこうな値段で、手に入るのも苦労したでしょ、と言われる。彼の言う通りだが、イレーネには可能だった。
「なに、まさかディートハルトに渡されたの?」
「いいえ……彼は父にばれないよう、その場でわたしに飲ませていましたから」
痕跡は残らないよう努めていた。
「それもどうなんだよ……じゃあ、これは?」
「わたしが、とある方に頼んで用意してもらったんです」
出征の前夜、ディートハルトはイレーネを何度も抱いた。その次の日に彼は何も飲ませず、出立した。困った末、イレーネはグリゼルダを頼ったのだった。彼女は余計なことは詮索せず、素直にイレーネの望みのものを用意してくれた。ハインツに渡したのは、その時の残りだ。
「父やメイドに見つかってしまうと、きっといろいろ面倒なことになってしまうと思うので、あなたが持っていてくれると助かります」
「いや、俺が持っていても……」
ハインツ様、とイレーネは初めて婚約者の名前をきちんと呼んだ気がする。彼もまた、驚いたように目を瞬いた。
「わたしの父や、あなたのご両親は、たぶんあなたが余所で子どもを作ることを快く思わないでしょう。将来余計な火種にならないよう、手を打つと思います」
子どもだけではなく、母親を切り捨てることも、彼らはきっと躊躇わない。そういうところは、ディートハルトと同じなのだ。
「だから相手の女性のことを思うなら、きちんと避妊してほしいんです」
お願いします、とイレーネが頼めば、ハインツはしばし薄く口を開いて呆気にとられた様子でイレーネを見ていたが、やがてゆっくりと握らされた瓶に目を落とし、ぽつりと言った。
「あいつも、そういう考えでおまえに薬を飲ませていたわけ?」
「……わたしも、飲むべきだと思ったんです」
のろのろと顔を上げたハインツに、イレーネは寂しげに微笑んだ。実際そうして正解だったでしょう? というように。
ハインツはもう一度薬に目をやって、あとはもう何も言わなかった。
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