わたしを捨てたはずの婚約者様からは逃げられない。

りつ

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15、分け合う熱*

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「人肌で温めるといいと聞いたことがある」

 押し倒され、覆い被さられる。
 端正な顔がすぐ目の前にあって、その瞳の奥に浮かんだ色に、イレーネはどうして、と思った。

「ディートハルトさま……」

 痛む喉からは掠れた声しか出ない。ディートハルトはイレーネのブルネットの髪を撫で、耳の輪郭をなぞり、目元や頬など、意味もなく触ってきた。彼女は震えて、ただされるがままだ。

 乳房の大きさを実感するように掴まれ、やわやわと揉まれる。今日初めて見たというように視線を注がれ、寒さのせいですでに勃っていた尖りをさらに硬くしようと指のはらでくにくにと弄られる。そして吸い寄せられるように顔を寄せて、口に咥え、舌先で嬲り始めた。

「ん……」

 イレーネの漏らした吐息に、ディートハルトが視線だけ向けてくる。それはまるで今自分がしている行為を見せつけるようにも見え、イレーネは目を逸らした。

 彼は赤ん坊が吸い上げるように丹念に舐めしゃぶると、もう片方の蕾も同じようにいじめ抜いた。イレーネは悪寒と快感がないまぜになった感覚に襲われ、たった胸だけの愛撫で呼吸がひどく乱れ、頭がぼうっとしてしまう。

 ディートハルトの気がようやく済んで起き上がった時、彼女は気怠い表情で彼を見上げた。それはとろんとした目つきで、何度も気をやった後の様子を思わせた。

「真っ赤だな……」

 ディートハルトの指摘した通り、イレーネの白い肌は、首筋のあたりが赤くなっていた。上気した頬は、やはり行為後を思わせ、ディートハルトはじっと見下ろしながら、下へと手を伸ばした。

 だが蜜口に触れる前に、ぱしっとイレーネに手を掴まれて阻まれてしまう。彼女は弱々しく首を振って、やめてと懇願した。この体調であの快感は欲しくなかった。むしろ恐ろしかった。

 イレーネの願いを聞き入れてくれたのか、ディートハルトは手を引っ込めた。ほっとしたのも束の間、彼はなぜか服を脱ぎ始める。鍛えた裸身――しかし傷痕も残る素肌を晒され、イレーネは頭の中が混乱する。彼は下まで脱ぐと、イレーネの腕を引っ張り上げ、胡坐をかいてその上に向き合う形で抱きしめた。

「ディートハルトさま……」

 不安で揺れるイレーネの瞳をじっと見つめたかと思うと、肌をさらに密着させて抱きしめてくる。寒くて震えていた身体が、ディートハルトの熱い肌に触れて、温もりを感じる。

 しかしイレーネは彼の考えがさっぱりわからず、触れ合っている胸板を押し戻そうとした。

「ディートハルトさま。移して、しまいますから」
「移せばいい」

 ぎゅっと再度抱き寄せられる。今までこんなふうに素肌で抱き合ったことはなかった。――初めて抱かれた時でさえ、彼は服を着たままだった。

(やだ……)

 こんなのまるで愛し合っている行為だった。イレーネは身を捩って逃げようとした。でも風邪で気怠い身体は言うことを聞いてくれず、体格も力も何もかも違うディートハルトには意味のないことだった。

「イレーネ……」

 名前を呼ばないで。髪の毛を撫でないで。背中に触れないで。抱きしめないで。熱くさせないで。

 いつしか屹立がイレーネの腹に当たっていた。イレーネの柔らかな下生えをくすぐってくる。先ほど散々嬲られた蕾が胸板で押しつぶされて、擦れて、彼女が身を引こうとしても、ますますディートハルトはぐっと抱擁を強める。耳元に感じる掠れた吐息に頭の中がおかしくされる。触れて抱きしめているだけなのにイレーネの呼吸は徐々に乱されていく。

「ぁ……」

 くちゅりと蜜口に亀頭が当たった。ディートハルトの口が薄く開いて、は、は、と短く息を吐きながら目は物言いたげにイレーネを見つめている。まるでイレーネの許可を待っているような、飼い犬が主人を見るような目に見えた。

 でもすぐにそんなはずないと打ち消す。だってイレーネの方が従う立場だ。もしディートハルトが犬だとしても、狡猾で獰猛な、主人に従う振りをしただけの――

「んっ――」

 ぬぷりと先だけ入れられて、息を呑んだ。苦しい。そう思って眉根を寄せたイレーネの顔を見てか、ディートハルトはまた引き抜いていく。イレーネの膝を立たせ、尻を支えて、かさの部分だけひっかけるようにして、浅い箇所をちゅぱちゅぱと突いていくる。

「ぁっ……はぁ、んっ……」

 圧迫感はない。いつもは目も眩むほどの快感を容赦なく与えられて翻弄されてしまうが、今日はまだ理性を保てる。――そう、思っていた。

「ふ、ぅ……あっ……」

 奥へ届く前に尻を持ち上げられ、するりと引き抜かれていく。イレーネの口から物欲しげな声が漏れた。我慢できると思っていた熱が少しずつ溜まっていき、もどかしくてたまらない焦れったさを覚え始める。

(ちがう……ほしく、ない……)

 だがイレーネはいつしかディートハルトの首に手を回し、風邪できつい身体に力を入れて、ディートハルトの男根が中へ来ることを望んでいた。深くまで咥えるために腰を下ろそうとして、支えている彼の掌に尻を押しつけている自分がいた。

 彼女の変化に気づいたディートハルトは、彼女にばれないように密かに微笑む。髪を撫でながらそっと後頭部を引き寄せ、耳元で囁く。

「欲しい?」

 声はいつになく優しく、甘かった。

 最初イレーネは僅かに残った理性で否定した。だがディートハルトが変わらぬ動きを続け、首筋に顔を埋めて肌を吸ったりすると、いよいよ根を上げた。ぎゅっと自ら彼の身体にしがみつき、くぐもった声を上げながら肉杭を奥へと誘った。

「ぁ、う……はぁ、んっ、ん~~……」

 隘路がこじ開けられていく感覚。媚肉が肉棒にまとわりつき、溢れた蜜が粘ついた音を立てる。蜜壺いっぱいに感じる彼の存在。目に涙が滲み、イレーネは掠れた甘い声で啼いた。すぐに疲れても、駄々をこねるように不器用に身体を揺らし続けた。恥骨を彼の下生えに擦りつけ、その快感に酔いしれた。

 それでもまだ、何かが足りない。

「もう終わりでいいのか?」

 また耳元で聞かれた。だが今度は拒絶できなかった。もっと欲しいという意味で首を横に振った。

 ようやく主の了解を得られたディートハルトはイレーネの中を激しく突き始める。愛液で柔らかくなった中を滑り、まだ彼を受け入れることを拒んでいる箇所を執拗にほぐそうとする。

「うぅ、あっ、だめっ、」

 イレーネは身を仰け反らせ、頭を振った。肩にかかっていた髪がさらさらと零れ落ちていき、胸を張るように押し出された乳房がふるふると揺れる。ディートハルトが顔を寄せて赤い実に吸いつけば、さらに声を上げてよがった。

「あぁっ、あっ……いやっ、もう、んっ……いくっ、いっちゃう」

 ぎゅっと抱きしめられ、いいぞと言われた。弱い部分を何度も攻められ、悲鳴のような声を上げてイレーネは限界を迎えた。頭の中が真っ白になり、身体を大きく震わせる。だが絶頂の余韻に浸る暇なくディートハルトに押し倒され、のしかかれた状態のまま激しく腰を動かされ、白濁を出された。

 イレーネはディートハルトの腕の中でぐったりとしたまま、気を失った。

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